年末年始 IN ゼブレスト 其の五
――ゼブレスト・夜会会場にて
思惑通り、私達は周囲の視線を集めていた。と言うか、私がいつもの服装をしている上に、タマちゃんと主様を連れているため、『魔導師として、この場に居る』ということが判っているのだろう。
ええ、ええ、判りますとも。立派に警戒対象なのですね?
魔導師としてはろくなことをしていない――結果はともかく、その過程や敵になった奴の扱いが酷い――ため、いくら魔導師の恩恵を受けまくっているゼブレストだろうとも、警戒しないはずがない。
そもそも、私は極一部の人としか接触していないので、その反応が当然。
一応、イルフェナ所属となっているので、ルドルフ達によって制限を設けられているのだ。だから、ルドルフと敵対していない人達のことも紹介されない限り、全然知らない。
逆に言えば、特定の人達としか仲良くないので、『ルドルフと宰相様、後は守護役とお世話になった数名しか知らん』という言い分が通ってしまう。
調べられても事実だしね。『魔導師がゼブレストの情報をイルフェナにばらし云々』といった感じにスパイ疑惑をかけられたところで、『情報源、どこよ?』となる。
そこでルドルフや宰相様に疑いの目を向けるのは勝手だが、二人を疑う以上、明確な証拠が必要になるだろう。そもそも、二人ともそういったことには厳しいので、実のところ、私はゼブレストのことを殆ど知らない状態だったり。
一番詳しいのはカエルのことです。次にセイルとかエリザ。
どう頑張っても有益な情報に成りえない、この残念さ。
魔王様には報告という形で話してあるけど、『はいはい、お友達が出来たんだね』程度の認識さ。……確かに、カエルのことについて熱く語られても困るわな。
そんなわけで。
今宵の夜会ではルドルフと一緒に居ることもあって、注目の的ですよ! 獲物様、いざカモン!
「……。ミヅキ、楽しみなのは判るが、お前が上機嫌だと誰も寄って来ないぞ?」
「何でよ? これを機に魔導師と知り合おうとか、何らかの情報を得ようとする野心家の一人や二人はいるでしょ?」
「野心家はいるだろう。……だが、お前が相手だと警戒心の方が勝る」
生温かい目で見ながら忠告してくるルドルフにそう返せば、速攻で否定された。そのまま、『仕方ない奴だな』とばかりに、そっと肩に片手を置かれる。
「いいか、お前のこれまでの所業を思い浮かべてみろ」
「……」
「思い浮かべたな? お前はこの国で何をやった? 一番初めに暴れた場所だぞ? 何人の貴族達の心を折った? いや、まともに追い落とすならまだしも、お前は悉く弄んだじゃないか……誰だって、恥をかきたくないんだ。人間、死ぬにしてもその方法と最期は選びたい」
「……」
「黙るな。目を逸らすな。自覚があるのに、明後日の方を見て誤魔化すんじゃない」
「結果は出したじゃん。私は超できる子だ!」
「うん、それは認める。確かに、凄い。だけど、性格は最悪・自己中・外道と評判だってことも思い出せ。お前の『悪戯』で、これまで何人の貴族達が泣いたと思っているんだ……彼らもいい年をした男性貴族なんだぞ? 滅多なことでは泣かない」
「男の子でしょ! 簡単に泣くんじゃない! 不満があるなら、報復せんかい」
「そこを更に遣り返す気だな?」
「勿論。……痛っ!?」
素直に頷くと、温〜い笑みを浮かべたまま、ルドルフが一撃を見舞う。何だよー、売られた喧嘩は買うのが礼儀なんだぞー。
「そういうことは陰でこそっとやれ。バレたら、俺やエルシュオンに苦情が来るだろうが」
「止めないのかよ!」
今度は私がルドルフに突っ込む。対して、ルドルフはそっぽを向いてスルーした。
随分と、ルドルフも楽しい性格になったようです。初めて会った時は疲れ果てていたのに、随分と逞しくなったものである。
宰相様が『ミヅキの悪影響云々』と言いつつも、ルドルフと私の付き合いを諫めないのは、こういった変化を歓迎しているせいもあるのだろう。
というか、ルドルフ曰く『お前に慣れていたら、大抵のことには動じなくなるし、後ろ向きにもならないよな』とのことなので、以前の『大真面目に悩んでばかりなルドルフよりはマシ』くらいの認識なのかもしれない。
いーじゃん、いーじゃん、人生には遊び心が必要だぞ?
何事も前向きに取り組み、結果を出しつつ遊ぼうぜー?
『本当に仲が宜しいのですねぇ』
くーぇっ!
『ふふ、お前もそう思いますか』
主様とタマちゃんは私達の遣り取りを眺めながら、ほのぼのと会話している。……いや、君達も十分微笑ましいぞ。見た目はカエルと蛇だけど。
――そんな私達へと歩み寄ってきたのは、一人の男性貴族だった。
「楽しそうですな、お二方。相変わらず、仲が宜しいようで何よりです」
これでゼブレストも安泰ですな――と続け、男性は楽しげに笑った。
見たところ、四十代くらいだろうか。朗らかな態度で話しかけてきた割に、その言葉には棘が隠されている。
ルドルフもそれを判っているだろうに、あえて流す選択をしたようだ。若干、私を庇うような立ち位置に移動しながらも、穏やかな笑みで対応をしていた。
「友と語り合えるのが嬉しくてな。久方ぶりゆえ、ついはしゃいでしまった」
「我が国にとっては、魔導師殿との繋がりは喜ばしきこと。結構ではないですか」
「……俺は魔導師ではなく、友と語り合えることが嬉しいんだがな」
イラッときたのか、地味にルドルフが訂正を入れる。……だが、敵はそんなルドルフの言葉を聞き流すと、どこか馬鹿にしたような目を向けて来た。
「それもまた、陛下の価値ではございませんか。隠さずとも、我らも心得ておりますぞ」
(意訳)
『凄いのは魔導師で、お前じゃないの。魔導師に利用価値があるから、お前に従っているんだと気付け、若造』
……多分、これで合っている。表情はともかく、目は明らかにルドルフを馬鹿にしているもの。
私に対してそれがないのは、単純に敵認定されたくないからだろう。各地で恐怖伝説を築きまくっている上、ゼブレストでもやらかした前科がある以上、私は『触るな、危険』という認識なのだ。関わらなければ被害はない、という感じ。
それはともかく、ルドルフへの態度には呆れてしまう。
いやいや、すっげぇ判りやすいですね……!
それでも不敬罪にならないのは、建前だけはしっかりしているからだ。限りなく悪意に満ちていようとも、決定打がないグレー判定なので、注意しても謝罪だけで終わってしまうに違いない。
ルドルフが地味に精神的なダメージを受けていた原因が判った気がした。そっかー、こんな遣り取りが頻繁に行なわれたわけですね?
それにキレかけた宰相様が今回、GOサインを出してしまった……とかじゃなかろうか。セイルやエリザに任せると、身元不明の死体になるか、行方不明という未来が待ってそうだもの。
そうは言っても、折角、作ってもらったこの機会。さあさあ、私も参戦しましょうかね♪
「あら、随分と理解力がないのですね? それとも……政の重要性を理解していらっしゃらないのかしら?」
「何ですと?」
にこやかに貶める言葉を吐くと、男性貴族は速攻で不快そうに顔を歪め、こちらへと意識を向けて来た。
「そうでなければ『魔導師との繋がりこそ、王の価値』なんて言いませんもん。私はね、この国の内情どころか、本来は求められることも判らないはずなんですよ……『部外者』ですもの」
とても判りやすく言ってあげたのに、男性貴族は訝しげにするばかり。ちらりと視線をルドルフに向ければ、『やれ』とアイコンタクトが。はいはい、了解です!
「『当たり前のことですが』、私はこの国の政に関わることができません。手土産として情報をもたらすことはありますが、あくまでもそれは『伝えておいた方がいい』と私自身が判断したもの。対して、ルドルフが私に何らかの働きを求めた場合は、『ルドルフ自身が私に詳細を漏らさないようにしつつ、望まれた結果に誘導しなければならない』のですよ」
部外者に対し、全ての情報を伝えることなんてできやしない。ならば、『何らかの形で、望むことを提示する必要がある』。
私も自分である程度は考えるけど、その答えに到達できるだけのヒントは必要だ。私に仕事を依頼する場合、これができないと非常に困る。
……だって、馬鹿正直に話したら『魔導師に弱みを握られること』とほぼイコールですがな。やらんぞ、普通。
「はっきり言って、馬鹿にはできませんよ。そもそも、私は馬鹿が嫌いと公言していますから、こんなことさえ気付かない貴方も嫌い」
「な!?」
「部外者である私の前で自国の王を貶めるとか、頭が沸いてるとしか思えませんよ。それとも、『自分はこの国の王に対して反意あり!』という、自己主張のつもりですか?」
軽く首を傾げて問い掛けると、屈辱ゆえか、男性貴族の顔色が赤くなる。はは、煽ったことは事実だが、私は間違ったことは言っていないじゃないか。
私自身がやらかしたことならば『自分の経験』なので、『お願い、他所で話さないで! 国にとっての恥だから! 誤魔化せなくなっちゃうの!』という相手側の事情から、沈黙を望まれる。
……が、望んだとおりになるかは私次第。ぶっちゃけると、該当国に対するカードとして私が使えるってこと。
ガニアの一件ではこれらを取り引き材料にして、各国の協力を取り付けた。誰だって、自国の恥など晒したくはないのだ……多少の協力で私の口を噤ませることができるなら、安いものさ。
「この国が良い方向に向かったならば、それはルドルフを始めとする『この国に属する者達』の功績なのですよ。私の働きとて、『魔導師を利用、もしくは動かすことができた』ということなのですから。そうでなければ、ルドルフは各国の王達に対等だと認められはしない。……ああ、そっかぁ!」
わざとらしく手を打ち、この日一番の笑顔を男性貴族へと向け。
「そういった場に呼ばれることがないから、貴方は知らないんですね!」
人々が聞き耳を立てる中、超楽しげに貶めてみた。ふふ、『仕方ない奴だ』といった感じの笑みを浮かべるルドルフとて、今回は私の共犯さ。
「『自分ができない』から、『それを成し得ているルドルフの才覚も理解できない』んですよね。情報もなしに、求められている役割りが見えるはずはないじゃないですか。お馬鹿さんねっ☆ そんな人だから……」
そこで一度言葉を切り、蔑みの目を向ける。
「『ルドルフを親友と公言している魔導師の前で、馬鹿にすることができる』のでしょう?」
「そ……そんなつもりは」
「煩い。私がそう感じたなら、それが事実。証拠が欲しいなら、魔道具に記録されている映像でも見せましょうか? 言いがかりだと言うなら、きっちり否定できる理由を述べてくれるのでしょう?」
「……そうだな、俺も聞きたいな」
「そう思うわよねぇ?」
顔を寄せてクスクスと笑い合い、答えを問う視線を向ける私とルドルフ。じゃれているような私達の姿に、男性貴族は漸く、ルドルフの恐ろしさを垣間見たらしく、言葉が続かない。
「やぁねぇ、本当に今更気づいたの。ルドルフは『一度も』私を……各地に恐怖をばら撒く魔導師を恐れたことがないのに」
「実際、怖くないからな。呆れはするが、恐れたことはない」
「怒らせても、私の報復を防げる自信があるって?」
「お前の思考はほぼ読める。ある程度なら、防ぐことも可能だと言い切れるぞ」
じゃれ合うように言葉を重ね合い、二人揃って男性貴族へと改めて問い掛けを。
「で、謝罪は?」
「言い訳でもいいぞ?」
「……っ、……も……申し訳ありませんでした……!」
顔面蒼白で謝罪を述べる男性貴族の姿に、私達は視線を交し合って笑みを浮かべる。まずは一手。言うまでもなく、この謝罪は先ほどのルドルフへの侮辱に対してのものなので、私の用は済んでいない。
さあ、今度は私の目的に付き合ってもらいましょうか。
「ところでね? 私がこの夜会に参加しているのは、私のカエルを虐めた奴がいるって聞いたからなの」
「……っ」
「あの子達には『ルドルフを守って』とお願いしていたから、攻撃した相手は『敵認定を受けるだけの要素があった』ってこと。あの子達は人間のルールではなく、弱肉強食の自然界のルールに従っているだけ。この意味、判る?」
タマちゃん達からの聞き取り調査により、この男性貴族を含む数名がカエル達の攻撃を受けた理由はすでに判明している。
勿論、別室へとドナドナするのは当然だけど、一人くらいは見せしめにすべきだという意見が、私とルドルフの間で出たのだ。
そんな状況での立候補……もとい、喧嘩を吹っ掛けて来たお馬鹿一名。生贄にしてもいいよね?
「おかしいよなぁ……俺はきちんと『あれは魔導師のカエル達だ』と伝えたはずなのに」
「聞いてなかったんじゃないの? もしくは……『カエル達に知られたこと』が判らなければ、誤魔化せると思ったとか? 事実、『カエル達が人を襲う』ってことだけを強調され、悪者にされているじゃない」
「『普通のカエルならば』、それで誤魔化せただろうよ。だが、『魔導師のカエル』だぞ? 個人を特定して襲う時点で、知能は通常のカエルよりも高いだろうよ。人の言葉が話せないだけだな」
ルドルフが『カエル達は人の言葉が話せない』と言った途端、男性貴族の目が輝いた。
「ならば! カエル達が何を思ってあのような行動に出たかなど、誰にも判らないではありませんか! くだらない言い掛かりは止めていただきたい!」
先ほどまでの状況から一転、強気でこちらを追及してくる男性貴族。
……が。
その言葉を言って来る時こそ、私達は待っていた!
『それでは私が通訳いたしましょう』
「へ? 今の声はどこから……」
『目の前におりますよ』
「ひ……っ、へ、蛇が喋った!?」
するり、と私の腕から男性の方へと動く主様。男性貴族は一瞬戸惑い……自分の方へと向かってきた主様の姿を見て、硬直する。
主様、ずっと私の腕に絡まっていたんだけど、置物の如く身動きしなかったのよね。それがいきなり動くわ、喋るわ、自分の方に向かって来るわで、男性貴族は軽いパニックを起こした模様。
しかし、可愛い子供達(=カエル達)を悪者にされた主様が男性貴族を気遣うことはない。……保護者様はお怒りのようです。普段優しい人ほど、怒らせると怖いよね。
くぇ、くーぇっ! くぇっ!
『ほう、そのようなことを……』
「主様、タマちゃんは何て言ってるの?」
『この方、ルドルフ様をたいそう見下していたらしく、ご機嫌取りをする裏で【力に縋るしかない若造】呼ばわりをしていたそうです。ご機嫌取りをして依存させ、いずれは娘を売り込む予定だったそうですよ』
「なぁっ!? 何故、それをっ」
男性貴族は驚きの声を上げるが、その言葉こそ、それが事実であるという自白だ。タマちゃんと主様の言葉は本当に、男性貴族の言葉そのままだったのだろう。
くーぇ、くぇっ!
『その言葉を聞いたのは十日ほど前、場所は』
「も、もういい! それ以上、言うな!」
『……』
喚いて言葉を遮る男に対し、主様は不快そうに目を眇めると、暫し沈黙し。
「ぐ……」
無言のまま男性貴族の体に纏わり付くと、ギリギリと絞め始めた。
主様は温厚な性格だし、『恵みの蛇』なんて渾名が付くように食料扱い……じゃなかった、『毒もなく、危険視されない魔物』と言われるような種だ。
警戒される要素がほぼないので、蛇が苦手でもない限り、恐れられることはない。恐れられることはないけれど、報復できないわけでもない。
毒がなくとも、絞めることは可能です。だって、蛇だもの。
無言の抗議どころか、実力行使してますがな。
勿論、力加減はしているだろうけど、被害を受けている男共々、周囲はその光景に恐れ慄いている。タマちゃん達が情報収集していたことに対する驚きも相まって、吃驚な光景なのだろう。
……そうは言っても、主様が凶悪な魔物扱いされることはいただけない。
「主様、主様、ちょっと待って」
『はい? どうしました?』
「今回は私の報復が許された場なの。タマちゃん達の飼い主としての見せ場を奪わないで?」
お願い! と手を合わせて頼むと、主様はタマちゃんへと視線を向け。
『そういうことならば、仕方ありませんね。判りました。今回はお譲りしましょう』
拘束を解くなり、するすると私の方へ戻って来た。その途端、解放された男性貴族がその場にへたり込む。
私はちらりと男性貴族に視線を向けると、徐に周囲へと声をかける。
「聞きました? 今回、私がこの場に居るのは『私のカエル達』を虐めやがった奴らに対する抗議をするためです。……ああ、すでにあの子達が攻撃するに至った理由は、主様の協力により、セイルリート将軍達が確認済みです」
「勿論です。何の理由もなく攻撃したならば、こちらがカエル達の飼い主である貴女に抗議していますよ」
護衛として、ルドルフの傍に控えていたセイルが大きく頷き、私の言葉を肯定する。その途端、何人かの顔色が悪くなった。
「……で。その結果、私の抗議が認められたってわけですよ。この意味、判りますよね……?」
「勿論、判っているだろうさ。だからこそ、俺はお前を呼んだんだ。……ああ、未遂である以上、処罰はしないぞ? 俺とて、そこまで心は狭くないからな。ただ……ミヅキは心が狭い上に、自己中だ。俺はこの国を守る者として、該当者達への抗議を許した。無関係な者には何もしないそうだ」
笑顔のまま凄む私に、今回の舞台裏(建前)をばらすルドルフ。そして、益々顔色を悪くしていく該当者達。
……が、無関係な人々にとっては、ルドルフの言葉は救い以外の何物でもなく。
無 関 係 な 人 々 は 挙 っ て 、 ル ド ル フ を 称 え 始 め た 。
大変、素直な人々です。自分が関わるなら抗い、誤魔化し、批難するけれど、関係ないなら、無責任に煽る。
人の不幸は蜜の味。貴族階級なんざ元々、他人の蹴落とし上等なのだ……仲間意識のない一部の『お馬鹿』を生贄にして不幸を免れるならば、平気な顔して売り飛ばす。
「賛同、ありがとー! じゃあ、予定通り、私はセイル達と別室で『お話し』させてもらうわ。……タマちゃん、ルドルフをお願いね」
「ああ、判った。セイルの部下が責任をもって、連行してくれるそうだ。この会場に来た時から、拘束対象として監視しているはずだぞ」
くーぇっ!
明るく手を振り感謝を示すと、ルドルフに今度の予定を告げる。ついでにタマちゃんへと言葉をかけると、『任せろ!』とばかりに良いお返事をしてくれるタマちゃん。二人とも、ノリノリです。楽しそうで何よりだ。
なお、その別室にはすでに、エリザとエリックさんがスタンバイしていたりする。
有能な武闘派侍女にとって、カエル達は頼りになる可愛い子。
エリックさんはルーシーを溺愛するお父さん。
私を含めたカエル達の保護者一同、拳を固めてお待ちしております。ちょっと感情が高ぶって怪我をさせても、責任をもって治癒しますとも。
守護役として私の監視を担うセイルは黙秘する気満々なので、『怪我をしました』なんて報告はされないだろう。これはルドルフと宰相様も黙認しているので、『証拠など、どこを探しても存在しない』のだよ。
『私も魔導師様と一緒に行っても宜しいでしょうか?』
「勿論!」
主様もやる気のようだ。優しさに溢れていた宝石みたいな目が、今は怪しく輝いている。
「じゃあ、後でね」
「おう、頑張れ」
軽く手を振って、その場を後にする。ルドルフの傍にはいつの間にかユージンが控え、力強く頷き返してくれた。宰相様の姿も見えるので、後は任せてしまっても大丈夫だろう。
そして私は、騎士達に引き摺られながら連行される男性貴族――腰が抜けたらしい――へと、笑顔を向けた。
「逃がしゃしねぇぞ、覚悟しとけ?」
……その後はしっかりと『お話し』させてもらいました。
彼らは今度こそ、タマちゃん達の役割り、その立場を理解できたと思う。……恐怖の記憶と共に。
黒い子猫&茶色い子犬『キャッキャ♪』
毒がないなら、締め上げます。だって、蛇だもの。
……そんなことになっているとは知らない親猫、哀れなり。
※『魔導師番外編置き場』ができております。IFなどは今後、こちら。
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