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魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
幕間

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250/705

IFな番外編 もしも、ミヅキとグレンが逆だったら

新年特別番外編です。

IFな話なので、軽く流してくださいね。

――アルベルダ・王城


 キヴェラより、戦を仕掛けられたアルベルダ。若き王ウィルフレッドとその側近達は悲壮な表情をして、話し合う――わけではなく。


「……またか」


 深々とウィルフレッドは溜息を吐く。彼の周囲に控える側近達もまた、呆れたような、頭痛を耐えるような表情だ。


「キヴェラ王にも困ったものだな。いくらミヅキがお気に入りだからといって、国境まで兵を率いるとは……」

「そうでもしなければ我々がミヅキを出さないと、理解しているのでしょう」


 揃って、再度溜息を吐く。この会話からも判るように、キヴェラは本気でアルベルダへと攻め入る気はないのである。

 事の起こりは、キヴェラ王がその好戦的な性格のまま、アルベルダへと侵攻しようとしたこと。当然、アルベルダも迎撃すべく、即座に騎士団を向かわせた。


 ……が。


 そこには騎士や兵士、魔術師といった、国が抱える戦力とは無関係な者が混じっていた。

 王であるウィルフレッドが自ら後見人を名乗る――王位に就く前、ウィルフレッドが拾ったからだ――、異世界人であるミヅキ。彼女がいたことが、そもそもの始まりであった。

 ミヅキは魔法のない世界から来たにも拘わらず、独自の方法で魔法を使えるようになっており……魔導師となっていた。『戦力になる』のだ。貴族達から請われれば、未だ完全に国を掌握していないウィルフレッドに庇いきることはできない。

 と言っても、ミヅキは最初から魔導師を目指したというわけではない。ミヅキが詠唱を正しく発音できないことから、仕方なく魔導師となったに過ぎないのだ。

 だが、魔導師は『世界の災厄』と言われる存在であり、この世界においては脅威という認識が普通。

 所謂『強さの代名詞』なのである。これに目を付けたのが、好戦的と言われるキヴェラ王だった。

 勿論、キヴェラ王とて、最初からこのような認識をしていたわけではない。そうなった最たる理由は、ミヅキ本人の性格にあった。


 無駄に頭が回り、嫌な方向に賢いと定評があり。


『障害は壊して進め、勝者が私というのは決定事項!』という言葉を、素で吐き。


 おまけに、貴族だろうと、罪人だろうと、辱めて楽しむ外道な発想!


 自分が楽しめるならば、命の遣り取りでさえ『心躍る遊び』と捉える、どうしようもない性格をしているのだ。ミヅキは清々しいまでに、自己中娘なのである。

 こんなぶっ飛んだ異世界人の後見など、王族として少々規格外のウィルフレッド以外には無理だろう。

 当初、周囲の人々はウィルフレッド王が後見人となることに、当然の如く反対した。それが当たり前なのだが、元々面倒見がよい性格のウィルフレッドはこれを拒否。

 

『愛玩動物に飽きた貴族じゃあるまいし、途中で放り出す真似はしない』


 こんな言葉と共に、側近達を黙らせたのである。異世界人とは異質な存在、その孤独を思いやったのかもしれない。

 だからと言って、そう簡単に許してしまえるはずもなく。

 周囲の人々はミヅキを脅威として警戒し、その度に脱力し。最終的には諦めると言う方向に落ち着いた。

 いくら教育しようとも、問題なのはミヅキの性格というか発想なのだ……それはこの世界の常識を知る度に、その悪質さを増すばかり。これでは改善されようがない。

 そういった意味での『諦め』なのだ。ミヅキがウィルフレッドに対し、(比較的)従順であったことも理由なのだが。

 何より、異世界人には守護役と言う名のお世話係がつく。ミヅキの場合は戦闘能力があるので、ウィルフレッドの側近の一人である騎士が、その筆頭である。


 周囲に哀れまれたのは、言うまでもない。

 名誉な立場? 一体何の冗談だ、あれは精神的苦痛を伴う『珍獣のお世話係』だろう?


 見た目が小娘であり、どうにも脅威に見えない分、性質が悪い。下手をすれば、厳しい小言を言う方が悪役に見えるという、この状況。

 そうは言っても、ミヅキを野放しにできないことも事実であるため、彼は悲壮な覚悟の下に、この役目を引き受けているのであった。

 なお、守護役は他国からも選ばれるはずなのだが……今現在、ミヅキには他国の守護役が存在しない。

 これは『異世界人を押さえ込める』という条件が厳し過ぎたためである。要は、ミヅキが規格外なほどに強くなってしまったことが原因だ。


 そんな中、好戦的な者が王位に就くキヴェラが、アルベルダへと侵攻して来た。


 ミヅキの唯一の守護役である騎士は己が責務のため、そちらへと赴いた。前述した貴族達の要請もあり――お世話係が不在になることも一因だ――、ミヅキは守護役に同行することに。

 だが、そこからが規格外魔導師の本領発揮だった。

 

『堂々と、魔法による人体実験ができるなんて!』


 という言葉と共に、キヴェラ軍を蹂躙しまくったのだ。躊躇いなんて、あるわけがない。


 戦における、死への恐怖? ……喜んでますが、あの娘。


 女性には酷な、血腥い場? ……確かに、死んだほうがマシな目に遭わせてますね!


 嬉々として敵をいたぶるミヅキの姿に、自軍・敵軍問わずにドン引き。『女性は守るべきもの』という常識的な考えに、誰もが疑問を持った瞬間だった。

 殺すことこそしていないが、ミヅキの『戦い方(意訳)』は非常に性質が悪く、女性にあるまじき発想のものばかりであったのだから。


 だが、何事にも例外は存在する。


 そんなミヅキに恐怖を覚えるのではなく、面白がった人物がいたのである。……キヴェラ王、その人が!

『あの好戦的な王が興味を持つのも、当然じゃないですか! ミヅキは魔法しか使えないのに、接近戦が可能なんですよ!?』とは、ミヅキVSキヴェラ王の一戦を目撃した者の言葉である。

 接近戦には向かないはずの魔術師が、何故か敵陣に突っ込んだ挙句に無詠唱で魔法を使う。

 これだけでも十分、目を引くだろうが……初参加の戦場において――誰も参戦しろとは言っていなかった。目を離した隙にやらかしただけだ――キヴェラ王と一騎打ち! しかも、怪我を負わせただけとはいえ、退けている。

 こんな逸材が、あのキヴェラ王に気に入られぬはずはない。以来、キヴェラ王は度々仕掛けてくるようになったのだ。


「そうは言っても、基本的にミヅキがキヴェラ王と一騎打ちしてるだけなんだよなぁ……」

「ミヅキは戦好きというわけではありませんからね」

「そう、戦好きではないんだ。……売られた喧嘩を買うだけでな」


 ウィルフレッドの言葉は事実である。キヴェラが大国だろうとも、そうそう戦を仕掛けられるはずはない。要は、ミヅキを誘き出すためのパフォーマンスなのである。

 また、ミヅキが割と義理堅い性格をしていたことが災いした。

 異世界人は本来、戦になど赴かないのが普通。ミヅキとて、毎回出向くわけではない。これをキヴェラ王は予想していたらしく、宣戦布告紛いにウィルフレッドやミヅキを侮辱するような言葉を吐くようになったのだ。


『魔導師、貴様の飼い主は随分と腑抜けだな? 己が国を守るための戦にさえ、姿を見せんか』

『まったく、どのような教育をしたのだろうなぁ……従順な飼い犬になったではないか、世界の災厄よ』


 この程度ならば、まだ良かった。だが、キヴェラ王は、ウィルフレッドやその側近達の逆鱗に触れることまで口にし始めたのだ。


『先代より奪った王座は、心地良いか? 身内の血を流してまで、手に入れたのだからな!』


 ――アルベルダの先代は愚王であった。その子供が王女であったために継承権はなかったが、ウィルフレッドは継承権が一位だったわけではない。

 一言で言うなら、『最も相応しい者だった』。それは誰もが認めるところであったし、王女も後押ししたほどだ。

 だが、愚王について甘い汁を吸っていた貴族達にとっては、『立派な王』など、厄介なもの以外の何物でもない。

 今でこそ、ある程度は落ち着いているが……ウィルフレッドのことを『簒奪者』呼ばわりする者もいたのだ。

 飄々とした性格のウィルフレッドではあるが、そのことに心を痛めなかったわけではない。それも事実なのだと、ウィルフレッド自身も思っていたのだから。


 ただ、ウィルフレッドに妹の如く可愛がられているミヅキが、キヴェラ王の暴言に怒らぬはずはなく。


 結果として、『あのクソ王を〆てきます!』という言葉と共に、呼び出しに応じるようになった。完全に乗せられた形なのだが、キヴェラ王本人が来るのは事実であるため、問題はないらしい。

 これに頭を抱えたのが、ウィルフレッド以下側近達。

 キヴェラ王の興味がミヅキに向いている以上は、アルベルダや周辺諸国が無事と言えるのだろう。だが、その、ミヅキの言動もか〜な〜り突き抜けており、問題ではあった。

『自分のことに対して、妹分が怒ってくれているのが嬉しい』というのも事実であるため、後見人、もとい保護者としては非常に複雑という点もある。しかも、複雑に思っているのはアルベルダ側だけではない。


「キヴェラの王太子から書状が来たんだけどな。一言で言うと『異世界人はちゃんと鎖に繋いでおけ!』だ。どうやら、先日のミヅキの奇襲のことを言っているらしい」

「ああ、被害が出るのがキヴェラだけですからね」

「『キヴェラ王』に対しての報復行為だからな。キヴェラは大迷惑だろ、完全に巻き添えだ」

「まあ、それは仕方がないと……」

「つい、俺も『そっちこそ、狂犬を何とかしろ!』って返したが」

「陛下ぁぁぁ!? 何しちゃってるんですかぁぁぁっっ!?」


 乾いた笑いを浮かべつつ、さらりと爆弾を投下するウィルフレッド。側近達は王の所業に慌てだすが、ウィルフレッドは全く慌てない。

 何せ、キヴェラで王の所業に最も青筋を立てているのは、キヴェラの王太子その人。別名、『キヴェラ最大の苦労人』。

 侵略によって大国になったとはいえ、ものには限度がある。まして、それが王の個人的な楽しみともなれば……キヴェラが受ける被害(=ミヅキの報復)も含め、父の所業に怒り心頭なのだろう。

 一般的な思考回路を持つからこそ、戦狂いの父王を本気で排除しようと画策し始めている節もあった。王族としての矜持、そして王として十分な才覚もある王子は、思い切りも早い。

 国を背負うならば、家族の情よりも国を選ぶ。……そんなものが残っているかは怪しいが。



 そして、両国の主要人物達が揃って頭を抱える中――本日も、元凶二人は盛大に罵り合っていたのだった。


※※※※※※※※※


 ――国境・戦場にて


 そこは戦場にしては、異様な場となっていた。キヴェラ軍を率いている王が護衛も付けずに先頭に立ち、対するアルベルダ軍は小柄な女性を対峙させているのだから。

 だが、これは『正しい配置』なのだ。そもそも、あの二人が戦うためだけの場なのだから。

 何を馬鹿なと思うのはもっともなのだが、保護されている国の危機でもない限り、興味のないものには無関心を貫くミヅキが出て来るはずもなく。

 よって、『侵攻という形は取るけど、お前らだけで勝手にやれ』という方針となったのだ。互いに無駄なことをしなくなっただけである。


「久方ぶりよなぁ、魔導師よ。ふふ、この一戦が楽しみで仕方なかったわ!」


 獰猛な笑みのまま、キヴェラ王は魔導師――ミヅキを見つめた。その目はどう見ても、獲物を見る者のそれである。

 だが、対するミヅキは不機嫌を隠そうともせず、鼻で笑って見せた。


「はっ! さっさとくたばりなさいよ、この老害が! だいたい、王がのこのこ出て来るんじゃないわよ、大人しく内政に精を出したらどう?」

「はっは! この血の滾りはそのようなことで収まらぬよ。そなたこそ、それでも世界の災厄たる魔導師か?」

「少しは、枯れろ! ……ああ、もう跡取りはいるから、その足の間に付いているものを切り落とせば、少しは大人しくなるのかしら? その後は従順になるよう、きっちり躾けてあげるわよ?」

「儂が小娘如きの手に負えるはずはなかろう? そなたこそ、己を知るがよい。ただでさえ、寸足らずではないか。多少なりと、魔導師たる威厳を醸し出してみよ……小動物が威嚇しているようにしか見えんぞ?」

「喧しいわ!」


 ……どっちもどっちである。いや、立場や性別というものを考えた場合、ミヅキの方が問題だろう。

 少なくとも、一国の王に対する言葉ではない。まあ、それを面白そうに流すキヴェラ王も大概だが。

 現に、その言葉の応酬を聞いていた両軍は誰もが顔を引き攣らせ、じりじりと後退している。そこに含まれる意味は明白だった……『あいつらと同類と思われたくない。俺、無関係!』だ。


 ――しかし、勇者は現れた。正しく言うなら、ミヅキの守護役(=お世話係)となっている騎士である。


「ミぃ〜ヅぅ〜キぃ〜! お前、一体、何言っちゃってるの!? 異世界人は民間人扱いって教えただろ!? 誰に対して、そんなことを言ってるんだ……いや、それ以前の問題だ。お前は仮にも女だろうが! 陛下の教育が疑われるだろうがよ!? 少しは自重しやがれ、この珍獣!」


 身も蓋もない言い方だが、彼は職務に忠実であった。ついでに言うなら、誰もが彼の言い分を『正しい! よく言ってくれた!』と思って聞いている。


 ただし、彼の言葉も微妙におかしい。


 問題児二人の会話に突撃しつつも、この言い分。彼は主への忠誠心から、このどうしようもない会話に割り込んだだけである。

 キヴェラ王に対する不敬を諌めつつも、その根底にあるのは『お前の保護者まで同類に見られるだろうが!?』という危機感である。彼も微妙に自己中だ。

 だが、その行ないだけでも十分、尊敬に値するだろう……他に誰もやらないのだから。

 そんな忠誠心溢れる騎士に対し、ミヅキが反省して見せるかと言えば――


「え、やだ。って言うか、邪魔だからどいてて! 巻き添え食っても、責任持てないし!」


 全く言うことを聞かなかった。しかも、邪魔者扱い。彼らの日頃が知れる。

 がっくりと膝を突き蹲る騎士に対し、自軍だけではなく、キヴェラ軍からも哀れみの視線が向けられた。


 その目は『あ〜、こいつがお守りなのね』と言っていた。心の底から、哀れんでいる。


 彼らとて、異世界人に対する扱いの基本的なことは知っている。その守護役が(建前とはいえ)婚約者ということも。

 守護役として、騎士として、そして男として。様々な意味で、騎士は哀れまれているのだった。とても優しい目をしながら声援を送る者がいることからも、その辛い立場が知れる。

 しかし、彼とてこのままでは終わらない。その生温かくも同情に満ちた視線を受けた騎士は、キッとばかりにキヴェラ軍を睨みつけ。


「貴様らも国を守る騎士だろう!? 王が無益な争いをしようとするならば、諌めるべきではないか!?」


 八つ当たり気味に怒鳴った。言い分としては間違っていないが、微妙に涙の滲んだ目で言われても反応に困るだろう。

 だが、その言葉に反応したのは、近衛らしきキヴェラの騎士達。


「貴様に何が判る! そちらとて、守護役ならば魔導師を押さえ込んで見せろ!」

「喧しいっ! それができるなら、苦労はせんわ! お前達ならばできるとでも言うのか!?」

「う……」


 怒鳴り返され、思わず黙り込むキヴェラの騎士達。視線を泳がせるのは、魔導師の制御をする自信がないからである。

 そもそも、彼らとて王を諌めぬわけではないのだ。だが、最高権力者に対し、強く何かを言えるはずもなく。


「俺達だって精一杯やっとるわ!」

「はは、どうだかな? 俺達の陛下はまともだ! 騎士である俺の話とて、聞いてくださるぞ! 羨ましかろう!」

「く……! 」


 大国キヴェラは、アルベルダよりも色々と厳しい。侵略によって国が大きくなったからこそ、内部を生粋のキヴェラ人で固める傾向が強い。

 そんな国である上、キヴェラの問題児は最高権力者たる『王』なのだ――


 近衛だろうとも、所詮は騎士。身分に負けた皆さんだった。

 いや、身分があったとしても、この王を諌めることなど無理だろう……叩き切られるのがオチだ。


 割と無関係な人々はそんな遣り取りを面白そうに眺めているが、本人達は大真面目である。

 この遣り取り、キヴェラ王とミヅキが争うようになってからほぼ毎回、繰り返されているのだ。互いに罵り合う……にしては、かなり情けない内容だが。


 優良物件と言われる男達が、揃って低レベルな口論。子供か、お前ら。


 実のところ、そういった姿を見せるのは悪いことばかりではない。異性に人気の同性が見せる、情けない姿……何と胸がすく出来事であろう! しかも、割とマジで気の毒だ。

 嫉妬よりも仲間意識の方が上回る場合があるという、一例だった。お陰で人間関係は良好。順調に、仲間意識が芽生えているようである。

 そんな周囲を綺麗に無視して、ミヅキとキヴェラ王は絶賛口喧嘩――と言うには、物騒な単語が含まれている――中なのだが。


「外野など気にする必要はなかろう。さて、始めるか」

「それだけは同感ね」


 ――周囲を無視し、本日も魔導師VS戦狂いの一戦が始まろうとしていた。


 勝者がどちらだったのかは、キヴェラ王の代替わりまでアルベルダが耐え切ったことからも判るだろう。キヴェラ王の興味が魔導師に移ったこともあり、ブリジアスといった小国も無事である。

 ただ、キヴェラとて滅んだわけではない。それどころか、次代のキヴェラ王は魔導師やアルベルダ王と、比較的友好的な関係を築いた。

 これは父王の遣り方にブチ切れた王太子が、魔導師やアルベルダ王と組んだためである。だが、彼らの関係は絶対の味方というわけではなく、互いの実力を認め合った好敵手のようなもの。

 特に二人の王は、それぞれが『諸事情による、先代の追い落とし(=先代が問題児)』を遣り遂げたせいか、互いに良き理解者である面もあったという。

 これは代替わりに魔導師が関わっていたという、共通点があることも大きいだろう。先代キヴェラ王を押さえ込む存在がなくば、キヴェラの代替わりはもう少し遅れていたに違いない。

 ただ……アルベルダは少々、特殊だ。魔導師がウィルフレッドに味方したため、代替わり『だけ』は即座に終了したのだから。

 何があったかは、誰も語らない時点で察していただきたい。原因は勿論、魔導師ミヅキである。黒猫は主の敵に牙を剥いた、それだけだ。


 別名、類友。二人の王は同じ苦労を分かち合った、苦労人同士である。

 苦労の大半が先代、たまに魔導師関連なのは言うまでもない。


 そうは言っても、ミヅキは二人にとって信頼できる存在であった。性格こそ問題だが、彼女は受けた依頼において、常に最良の結果を出すのだから。

 ミヅキにはこの世界の部外者であり、あらゆる柵が存在しない。異世界人であることさえ利用する彼女は、まさに『最強の駒』である。

 その立場を活かし、色々と『友人達』を助けることになるのだが……この時点では、ただの珍獣だった。保護者が度々、軌道修正を頑張ったのだろう。

 様々な思惑が絡み、魔導師ミヅキは『世界の災厄』と呼ばれる存在でありながら、救世主のような認識をされることとなる。ただ、現実を知る者達からは、馬鹿猫呼ばわりが常であった。

 ――他国に、二人の一戦に関するあれこれが伝わらないのは当然であろう。……誰だって、こんな馬鹿げた遣り取りなど残したくはないのだから。 

逆だった場合、キヴェラがポジション・ゼブレスト。

ただし、ルドルフのように『姉弟のように仲良し』ではなく、『好敵手』。

キヴェラも本編とは色々と変わってきます。

逆に、イルフェナやゼブレストには魔導師ということもあり、

警戒されるかもしれません。

※短編にイルフェナ騎士寮での年越しの一コマを描いた『親猫、小さな企みに嵌る』

が掲載されています。宜しければ、ご覧くださいね。

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― 新着の感想 ―
[一言] この場合、グレンは・・・・ あまり目立たなかったと推測。
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