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魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
サロヴァーラ編
195/696

事件解決?

 シャキン、シャキンと澄んだ音が青空に響く。太陽の光にキラリと光る刃がいい感じ。

 平和そうな町並みと周囲の明るさに反して、大変場違いなホラーな状況です。落ちればスプラッタが追加されるしな。

 そこに重なるのは野郎どもの泣きの入った懇願。


「ちょ、おまっ、冗談だろ? なあ、おいっ!」

「なんで、ずっと、上で、シャキシャキ音を聞かせてるんだよおぉぉぉっっ!」

「……」

「何か言ってくれ!」


 シャキン!


「それはもういいから! 返事は人の言葉で!」


 連中を窓から蹴落としてから、私の手にはずっと鋏が握られております。腹立ち紛れに音を響かせ、男達を泣かせていたり。


 だって、黒幕まで到達できないことが確定してるからね……!


 ここに頭脳労働の男か令嬢達の世話をしていた女がいるなら可能だったけど、どうもその気配がない。非常に残念なことに留守だったと思われる。

 居るなら様子を見に来るなりするだろう。この二人が騒いでいるのだ、外の騒ぎに気づけば家の中に居ても『何かがあった』と判る。

 逃げるとしても、顔を見られている令嬢達を放置というのは得策ではない。まあ、私も令嬢達の側を離れるわけにはいかないので想像の範疇でしかないが。

 男達を室内に拘束して二人が帰ってくるのを待つ、という手は令嬢達の安全が最優先である以上は使えないからね。安全第一というか、早めに騎士達が突撃してくれなきゃ危険です。

 ……例の二人か残りの犯人達が部屋に突入できない、もしくは私に勝てないと判断した場合、家に火を放つことも考えられるのだから。

 そうなると令嬢達が無事に逃げられるか怪しい。お貴族様なのだ。そもそも異世界なのだ。防災訓練などしているわけがない。

『家に人々の注目を集め、騎士を呼び込んでもらう』――これは令嬢達の救出を騎士の手柄とするだけではなく、人々の注目を集めそういった行動をとらせない意味もあった。

 証拠隠滅を願うのは誘拐犯達の他に、この家の持ち主である商人がいる。冗談抜きにそういった手を狙われてもおかしくはないのだ……『火事による全ての証拠の焼失』を。 

 それに彼女達の体調や精神的な問題もある。ひとまず黒幕への熱い想いは諦めよう。


 ただ、仕方がないと判っていても感情はどうにもならないものでして。


 無駄に宙吊りになった連中の頭上で鋏の音を響かせ苛めてみた。令嬢達の感じていた恐怖の一部でも体験するがいい。

 ……八つ当たりの嫌がらせ? 

 気のせいですよ、彼らには盛大に喚いてもらわなければならないのだから!



 約二名にとって恐怖の時間が過ぎること暫し――



「おいっ! ここを開けなさい! 一体、何をやってるんだ!」


 という男性の声が響き、クリスティーナが扉を開けるなり騎士達――それなりの数が周辺に居た模様――が部屋に飛び込んできた。

 通報によって命の危険があると判断し、速攻で突撃したらしい。そりゃ、宙吊りになってる二人を見た通行人達は焦るわな。

 しかも町を巡回していた騎士達には今回の誘拐のことが伝えられているので、犯罪に対する反応もいい。

 そんなぴりぴりとした空気の中、通行人の皆様はそれぞれ近くにいた騎士様に通報したわけですよ。


 つまり、通報・目撃者共に複数。

 こんな騒動は人の噂によってあっという間に広がるだろう。


 宙吊りにされていたのが男性ということもあり、何らかの事件に巻き込まれていると想定して騎士達は集団で強行突破したわけです。状況と人々の関心を見る限り、少しも不思議じゃありません。


『異変発生! 男性二人が宙吊りにされています!』

『複数犯の可能性あり! 応援求む!』


 こんな感じで建前にされたんだろうな。

 ええ、発想としては正しいというか一般的なものだと思います。男二人を吊るすなんて単独犯とは思うまい。

 男達に抵抗されることを考えると相手は複数犯、単独だった場合は相当の強さが予想されるもの。


 でも実際はほぼ単独。


 アイテムを駆使して窓からポイしたのは私です。


 その奇妙な状況があっさり受け入れられたのは、部屋に突撃かました騎士の何人かが騎士sの同期だったからである。

 差し入れという名の試作品を持って行った際に知り合っているので、彼らには私が『本当はどういった存在か』がバレているのだ。

 そこで空かさず「よく来てくださいました! 私はエルシュオン殿下の配下の〜」と説明を。

 誘拐事件のことは伝えられているのだ。囮作戦について詳しくは知らずとも、私が何をしていたかを薄っすら悟ったのだろう。彼らは顔を見合わせて頷き、私の話す設定に乗ってくれた。

 うむ、ありがとう! 今度の差し入れは奮発するね!


「それではクリスティーナ嬢のついでに攫われたと?」

「ええ。顔を見られているという意味でも拙かったのでしょうね。彼らは気づいていなかったようですが、私はエルシュオン殿下の配下ですから……こういった状況ならば皆様を守るよう動くのは当然です」


 尋ねてくる騎士にも『魔王殿下の配下にして騎士団長の養女セレネ』として状況を簡単に説明。

 私は魔導師じゃありませんよ、お嬢様方。そこはよく覚えておくように!


『クリスティーナのついでに攫われちゃった! 誘拐事件のことは聞いていたし、攫われた令嬢を発見! 魔王殿下の配下として動くのは当然です! でも逮捕する権限はないから、犯人を拘束して目印にしてみました』


 ……こんな感じ。

 一般の騎士達にどこまで今回の作戦が説明されているか判らないし、未だ令嬢達も近くに居るので妥当だろう。

 かなり都合よく暈した言い分だが、騎士sの同期達がこそこそと事情説明をしてくれた模様。

 驚愕の表情で私を見た後、『魔王殿下の配下』という名乗りから事情を察したらしい。とりあえずは令嬢達の保護に動いてくれるようだ。


「そういえば、彼女達から『世話をしている女性がいる』と聞きました。ここには居ませんでしたか?」


 無駄と思いつつも一応聞いてみる。声が一切聞こえてこないのだ、騎士の突撃に逃げたとかではないだろう。

 ――だが。

 騎士達は何故か顔を見合わせると……他の令嬢達に聞かせたくないのか、私の耳元で小さく呟いた。


「その女だと思われる人物はここに居た。……死んでたんだ」

「な!?」


 思わず小さく声を上げるも即座にそれ以上の言葉を飲み込み、視線で先を促す。


「俺達が来た時には一階にある食堂で倒れていた。あの状況は毒だろうな」

「……? 邪魔だったから効果を失わせるために魔石を砕いたけど、令嬢達は魔道具を持ってたわよ? 解毒なんて衰弱させるものより手に入りやすいでしょう?」


 思わず普段の口調になる私だが、情報をくれた騎士は逆に驚いた顔になる。


「本当か!?」

「うん、マジ。逃げ切れないと判断して毒を呷った、という可能性もあるけど……」


 自分で言っておいて何だが、それにしては少しおかしくね? 自分が捕まることで命じた奴に辿り着かせないように……という可能性もあるだろうが、ちょっと死ぬのが早過ぎないか?

『俺達が来た時には一階にある食堂で倒れていた』って言ってるからね、騎士達は。即効性の毒でも少しの間は苦しむだろうに、見つけた時には死んでいただと?


 まるで……騒動が起こる前から死んでいたみたいじゃないか。


 自分達の失敗を悟るなら騎士が乗り込んできた直後だろう。それ以前に気づいたならば、火でも放って逃げればいいだけだ。

 男二人を別々に拘束したからね、私達。異変を感じてもう一人がこの部屋にやって来たっぽかったし、それならば十分に行動を起こす余裕はあったはず。

 そもそも私は一度も彼女の姿を見てはいない。連れて来られた後も男達は見張りを兼ねて同じ三階に居たみたいだし、その女と仲間割れをした様子もなかった。

 訝しむも正解など判るはずもない。それは騎士達も同じだったらしく、軽く溜息を吐くと宥めるように私の肩を軽く叩いた。


「とにかく今は城に向かってくれ。団長達も動いていると連絡が入った」

「ああ、残った連中の捕獲に向かったのね」


 実際にはメイベル嬢の捕獲だろうが、どう伝えられているか判らないので無難な言い方を。

 だが、事態は私が知らない間に動いていたらしい。

 令嬢発見の報告を入れた時に伝えられたのか、この騎士は『捕獲対象が誰を指すのか』を知っているようだ。頷くと同時に視線で『黙ってろ』と告げてきた。

 ちらりと向けられた視線の先には令嬢達……そだね、誘拐の裏事情を知った令嬢達がショックを受けても困るか。

 今回と同じ状況ならば、彼女達は友人に裏切られたということになる。精神的に疲れている状況でそれに気づかせることもないよね。


「まあ、城に着くまでは『偶然巻き込まれたエルシュオン殿下の配下』でいてくれ」

「了解」


 誘拐された令嬢達の監禁場所さえ判れば、後は他の騎士達と私で十分対処できる。ディルクさん達はメイベル嬢が騒ぎに気づいて逃亡しないうちに捕まえに行ったんだろう。

 こちらも捕獲、といかないのが残念だ。黒幕と繋がりのあるらしい二人のうち、残る頭脳労働者も死んでいるか逃げるかしただろう。

 できれば生きていて欲しいが、どうも黒幕は徹底的に証拠を消したい人物のようだ。……望み薄かな、さすがに。


 そんなことを考えつつ、もやもやした気持ちと微妙な敗北感を胸に。

 私は令嬢達と共に部屋を後にした。

 ただ、最後に。


「あら、ごめんなさぁい?」

「「ヒッ!」」


 引き上げられた男達のすぐ側で鋏を取り落としたりはしたが。

 ドスッ! という音を立てて鋏は床に突き刺さった。よりいっそう恐怖に歪んだ男達の表情から私に対する認識が見て取れる。

 ……めでたく凶悪人物認定されたようだ。これなら脅しも効くだろう。


「素直に騎士様に保護された方がいいわよ? 個人的に報復されたくなければね」


 お前達が誘拐したのはそういう生き物だ。報復されたくなけりゃ、洗い浚い喋れよ?

 言葉にしなかった部分は正しく二人に伝わったのか、男達がぶんぶんと勢いよく首を縦に振る。


「こら、脅迫するんじゃない! ……殿下に言いつけるぞ」

「ごめんなさい、つい出来心で」


 顔を引き攣らせた騎士の一人がぽつりと呟き、私は即座に頭を下げた。保護者というか、親猫扱いは微妙に広がりを見せている模様です、魔王様。


※※※※※※※※※


――城の一室にて(ディルク視点)


「……突然お邪魔して申し訳ございません」


 そう言って頭を下げる女性にバレぬよう、ひっそり冷めた目で見つめた。

 彼女の言葉と表情は確かに謝罪をしているように見える。だが、その胸の内は真逆の感情が占めているに違いない。


 ……自分の思惑どおり、邪魔な存在を誘拐犯に差し出せたのだから。


「謝罪は結構。メイベル嬢、貴女は本日セレネ達を招いていたのでは?」


 訝しげに尋ねると、彼女は表情を『作って』顔を上げた。

 そう、彼女が本日の茶会を計画したはず。招く側なのだ、客を放って他の者を訪ねるなどありえない。

 そう指摘すれば、彼女は必死な様を盛大に演じつつ口を開いた。


「私はそのようなことはしていないのです! クリスティーナ様は回復されたばかりですもの、そんな状態でお招きするなどありえません」

「……へぇ?」


 言い分は正しい。というか、一般的な気遣いだろう。

 だが、彼女がクリスティーナ嬢からどのようにセレネに関する情報を聞き出したかを知っている身としては……呆れしか浮かばなかった。

 しかも彼女はその『一般的な気遣い』を自身の潔白に使おうとしているようだ。ついつい溜息を吐きたくなっても仕方のないことだろう。


「では、どういうことでしょう? 茶会への誘いは確かに貴女からだと聞いていますが」


 こちらが知る『事実』を提示すれば、メイベル嬢は表情を曇らせた。


「実は……使用人の中に不自然な行動を取る者が居たのです。その者が私の振りをして手紙の遣り取りをしたようですの。あの者ならば我が家の封筒を入手できますし、それに本日も『離れに客人が居るから近付かないように』と」

「屋敷に居ながら来客に気づかぬと?」

「我が家の離れは少々特殊な状況なのです。裏口から入れますし、ほぼ隔離されておりますので……なんでも数代前の当主が妾を囲うために作ったとか」

「……。なるほど、それならば顔を合わせないような状態にされているかもしれませんね」


 つまり。

 このお嬢様は『手紙の遣り取りをしたのは勝手に家の物を使った使用人』であり、『離れに誘い込んだのも、誘拐犯と通じていたのもその使用人だ』と言いたいのか。

 確かにミヅキの仮説において、馬車の襲撃に関しては使用人の協力が必要不可欠である。おそらくはそれも踏まえて罪を押し付けようとでもいうのだろう。

 いや、下手をすればすでに殺されているかもしれない。主人に悪事がバレて自害……なんて、ありきたりなシナリオで。

 俺がそう考えているとは思いもせず、メイベル嬢は信じてくれとばかりに必死に訴えている。


「私や我が家が疑われるのは承知しております! ですが、私とてイルフェナの貴族……ましてセレネ様やクリスティーナ様が危険に晒されているのです。黙っているわけには参りません」

「立派なことで」


 これまで殆ど相手にしてこなかったせいか、冷めた口調で告げても怪しまれないらしい。寧ろ褒められたとでも思ったのか、少々表情に喜びが滲み出ている。

 だが、俺は彼女に見えないようにしながらも拳を握り締めた。


 イルフェナの貴族? どの口でそんなことを言うのか。

 しかも今ここに来るということは、セレネとクリスティーナ嬢に『今後会うことはないと知っている』。


 彼女が誘拐に関与したことを二人は知っているのだ、殺害依頼でもしてあるのだろう。

 本来ならばそれが成し遂げられてから俺に情報を……ということだったろうが、それでは自分に疑いがかかってしまう。

 先手を打って潔白を証明しようとした、ということだろう。未だ有力な手掛りのない誘拐事件なのだ、彼女のもたらす情報にこちらは必ず食いつくと確信して。

 いくら使用人がやったと言っても、家が誘拐に拘わったことは事実なのだ。情報の見返りに恩情でも願おうと考えても不思議はない。



 ああ、本当に。

 どこまでも国を馬鹿にした、愚かな娘。



 予定ではミヅキが誘拐犯達のアジトへと辿り着いたことを確認次第、こちらも共犯者達の家へと騎士達が向かうことになっていた。

 こう言っては何だが、誘拐犯達を捕縛してからでは逃げられる可能性もあったのだ。故にそちらはミヅキと町を巡回している騎士達に任せ、俺達は共犯者達の捕縛を担当するつもりだった。

 ……ミヅキは『目立つ方法を取って騎士に突撃してもらいます!』と、それは楽しそうに言っていた。あの子が言うなら間違いなくそうなるのだろう。これまでの言動を見る限り、妙に確信がある。

 そんな時にメイベル嬢は俺を訪ねて来た。『伝えたいことがあるから』と。

 これに俺は内心ほくそえんだ。共犯者本人の自白が手に入るかもしれないのだ、絶好の機会である。

 よって俺は彼女の相手をし、他の者達は予定通り彼女の家へと向かっている。


 近衛をわざわざ向かわせるのは『逃げ場などない』と判らせるためだ。

 もしくは『陛下のご意志である』という証。


 もはや単なる誘拐事件ではないのだと判らせる意味でも有効なのだ。どうやら随分と事を軽く考えているようだし?

 ……ああ、父上も相当頭にきているようだった。先ほどの悲しみ――ミヅキに父と呼ばれなかったことだ――を憎しみに変えて、事件の解決に当たるだろう。

 さて、そろそろいいだろうか。


「自白をありがとう、メイベル嬢」

「え?」


 最初で最後だと思い、にこりと笑ってやる。意味が判らず首を傾げるメイベル嬢の言葉を待たず、俺は事実を口にした。


「セレネは通信の魔道具を身に着けていてね。君との遣り取りも俺達は全部聞いてたんだ」

「!?」


 唐突な暴露にメイベル嬢の目が大きく見開かれる。


「そうそう、もう一つ教えてあげるよ。セレネはエルシュオン殿下の配下でもあるんだ……あの子は殿下の配下である意味を理解している。『誘拐された令嬢を前に何もしないなんてことはありえない』んだよ」


 だって、殿下の配下を名乗る以上は無能であることなど許されないのだから。


 俺の言葉の意味をじわじわ理解したのか、メイベル嬢の顔から血の気が引いていく。

 だが、もう遅い。セレネに手を出した時点でエルシュオン殿下を拘わらせてしまったことに変わりはない。


「ああ、今更セレネ達に対する殺意を否定しても無駄だよ? 君は俺を訪ねて来た……二人に誘拐犯の共犯だと知られていながら。あの二人と二度と会うことはないと確信していなければ無理だよね?」

「わ……私、は……」


 あれほど動いた口を上手く動かせなくなるほどメイベル嬢は震えている。あの会話を聞かれていたならば逃げ道はないと理解はできているらしい。

 ならば最後に、最悪の言葉を告げてやろう。


「ちなみに君と入れ違いに近衛騎士が君の家に向かっているから。もしも使用人が死んでいたら、その殺害も当然処罰対象だ」

「そんなっ……わ、私は、誘拐なんて……」

「誘拐をしていなくとも共犯、しかもエルシュオン殿下の配下を攫っておいて? ああ、使用人の殺害も含まれるのかな? ……随分と俺達を嘗めた真似をしてくれるじゃないか」


 思わず感情が声に宿り、表面的に浮かべていた笑みが消える。そこに何の情もないことに気づき、メイベル嬢は益々体を震わせた。


「国を貶め、俺達を馬鹿にし、セレネ達を殺そうとした。……笑わせるな、俺はお前如きに靡くようなクズに成り下がる気はない」


 俺が尊敬するのは両親という以上に『国に仕える騎士』。主と敬う存在から絶大な信頼を向けてもらえる騎士に憧れ、俺は今の立場を目指した。

 そんな俺にとって、メイベル嬢がどう映るのか。


「お前如きがこの国の貴族を名乗るな」

「ディ……ディルク、様……っ」

「黙れ」


 何の感情もなくそれだけを告げ、それ以上の言い訳を拒絶する。興味があったのは事件に関する証言であって、それ以外に用はない。

 どれほど青ざめようとも泣こうとも……憎しみさえ湧かないほど『どうでもいい存在』なのだから。

これまでの自分が『その程度』だと思われていたように感じ、

微妙にお怒りだったディルクさん。

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