表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
ゼブレスト編
17/697

親友を得たようです

 さて、やって来ましたゼブレスト!

『王が自ら出向き迎えた側室』となっているのでアホ貴族どもに顔はバレてません。

 何かした時点で「イルフェナの後見を受けた姫に対して云々」と言い掛かりをつけて処罰する気満々ですね!

 微妙に腹黒いよ、ルドルフ。

 とりあえず、さっさと後宮の一室に陣取って協力者達の顔合わせです。

 王宮?

 貴族が御挨拶がてら偵察に来るから無理!

 後宮は一部を除き女しか入れないのです、そっちの方がまだ安全でしょ?




※※※※※※



「すまんな、もうすぐ来るから」

「いえいえ、足止めしてるから当然でしょ」

「理解があって何よりだ。ああ、それから俺の側近連中は宰相以外は基本的に接触しないから」

「イルフェナの後見を受けた姫と側近全員が仲良しってのもマズイものね」

「疑われる要素は無い方がいい。俺達は仲良く見えた方がいいだろうがな」


 あれから色々と話し合い、今ではタメ口で話すくらいに仲良しです。

 珍しかろうと手料理を振舞ったのも良かったのかも。

 ……料理如きと侮ってはいけませんよ、お嬢さん方。

 ルドルフは王族、警戒心なく食べるというのは相手への信頼の表れなのです。

 今回の事が片付いたら普通に遊びに行く約束もしてますよ。

 そんなわけで準備段階から二人揃って殺る気満々です。

 敗北? 失敗? 何それ、美味しい?

 最後に嘲笑うのは私達ですが何か?


 日当たりの良い一室には私とルドルフ、それと一緒に来た護衛の騎士数名。

 宰相を始めとする他の協力者達は貴族どもの相手をしてから来るそうだ。

 大変ですなー、気の毒に。

 さて、今のうちにルドルフに渡しておかなきゃならんものがある。

 私は荷物を探ると二つの品をテーブルの上に置いた。


「何だ、それ?」


 ルドルフだけじゃなく護衛の騎士達も興味深そうに覗き込む。


「こっちの小さい方が通信用。この腕輪は私から友人へのプレゼント」

「通信用?」


 ルドルフは手にとって微かに目を見開いた。

 対して騎士達は首を傾げている。……そうか、イルフェナより魔道具は普及してないのか。


「魔石に組み込んだ方陣を介して声を届けるんだってさ。念話が可能って言ってた」

「へぇ……こんなに小さくできるのか」

「改良しまくったんだって。身に着けるだけで対応する相手に声を届けてくれるらしいよ」


 見た目的にはシンプルなペンダントだ。

 だがそれには黒騎士達の執念というか職人魂が込められている。

 声を出さずに念話――テレパシーですね――で意思疎通できる優れもの。

 ルドルフの反応から察するに本来はもっと大きいものらしい。

 もしくは声を届けるだけなのだろう。


「これで俺達の通話が可能ってことか」

「そう。基本的に離れてるから話を合わせたり協力する時用だね」

「わかった、奴等の目に付かないようにしよう。で、そっちは?」


 ルドルフが指差す先には銀の腕輪が輝いている。

 ふ……よくぞ聞いてくれました!


「ヴァルハラの腕輪。私が作った非常識の片鱗」

「は?」

「異世界の魔導師製作の高性能魔道具です!」


 にやり、と満足げに笑う。

 ルドルフの方がヤバそうなんでもう一個作ったんだよねー、これ。

 あ、勿論魔王様の許可はとりました。

 ルドルフには墓の中まで持っていってもらいますよ。伝説のアイテムになりかねないし。


「魔石に血を一滴垂らして健康な状態を覚えさせておくと薬物が体内に入り次第分解される」

「解毒ってことか?」

「他には物理・魔術両方に対する結界、治癒魔法も……」

「あ? ちょっと待て、それおかしいだろ!? 何で複数の効果があるんだ?」


 ああ、やっぱりこの反応か。

 うーん……本当にゲームの世界って想像上だからこそ何でもありだったのね。


「私が作ったから」

「だから何で」

「『そういうもの』として組み上げたから! この世界に残せないから墓の中まで持っていって」

「まさか……禁呪」

「違う! あんた、私を一体どういう目で見て……。異世界の知識と私の努力の結晶なの!」


 これは認識の違いだから説明できないんだよね。

『そういうもの』として受け入れてもらうしかない。

 ルドルフ、今だけは素直な子になっておくれ。

 お姉ちゃんは君が心配なだけなんだよー。


「結界はともかく治癒や解毒は体力を消耗するから気をつけて。あと、解毒は暫く時間がかかるからね」

「……? 何だか普通の魔法とは違うな?」

「私が使えないからね。自分なりに組み立てた魔術しか組み込めないんだ」

「あ〜……世界間での認識のズレってやつか」

「うん。あ、それ媚薬にも効果ありだから」

「高性能なのはわかるが、あまり高くても払えないぞ?」

「え、タダでいいよ? プレゼントって言ったじゃん、私が心配してるだけなんだし」


 がしっ! とルドルフは満面の笑みを浮かべて私の手を握り締める。


「親友と呼ばせてくれ! お前、凄い良い奴だな!」

「……あんたがどんな生活送ってきたか偲ばれるわね」

「心の友よ!」


 どこぞの殺人的な歌を歌うガキ大将か、お前は。

 いや、大喜びしてくれるのは嬉しいけどさ?


 実のところ、これは『本来なら存在しない物』なので値段はつけられない。

 これを参考に複数の魔術付加技術が解明されることもないので技術料も発生せず。

 しかも所有者にしか効果のない、一発芸に近いシロモノなのだ。


「そっか、お前技術者でもあったんだな。感謝する!」


 いそいそと認証させて身に着けるルドルフを騎士達は暖かく見守っている。

 おーい、騎士。君達は護衛。

 そんなに簡単に信じちゃっていいのかーい? 騙す気もないけどさ。

 そんな呆れが伝わったのか一人の騎士が疲れた笑みを浮かべながら話し掛けてくる。


「感謝します、魔導師殿。本当に、本っ当に陛下はお気の毒でしたから」

「皆さんも妙に疲れてますね。……普通ではない方面で」


 うんうん、と騎士達は頷き合う。

 拳に力が入っているのは気の所為じゃあるまい。


「我等とて語り尽くせぬ苦労をしてまいりました。今回の事は本当に嬉しいのですよ」

「ああ、後宮破壊ですね」

「さくっとなどとは申しません。じわじわ血祭りに上げてやってくださいませ!」

「我等も全力でお手伝いいたします!」

「あのクズどもに報復を!」

「おう、是非ともやってくれ!」


 ……。

 ……どうしよう。

 騎士達、目がマジである。

 しかも『是非とも地獄を見せてやってください』と隠そうともせず言い切ってますよ。

 王への忠誠心だけじゃないよね!?

 明らかに個人的な恨み辛みが混じってるよね!?

 え、彼等にも活躍の場を用意した方がいい? 皆でやる?

 って言うか、連帯感が半端ねぇな! そんなに嫌いか。

 精神的にギリギリだったんかい……まあ、そうじゃなきゃこんな計画思いつかんわな。


「自分の為にも頑張ります」

「「期待しております!」」


 ふ……安心するがいい、皆の衆。私は魔王様の手先として役割はきっちり果たす!

 だってさ……忘れてるみたいだけど。


 任務完了するまで私も帰れないんですよー!? 泣き寝入りEDは無し!


 命の危機より生かさず殺さずの魔王様の方が恐ろしいです。

 うう、攻撃担当といえど民間人です、少しは労わっておくれ?

 仮にも乙女……


「あのエルシュオン殿下が絶賛してらしたとか」

「賞金首どもが本気で怯えて泣き出すほどの鬼畜さだとお聞きしました!」

「ミヅキ、鬼畜は誉め言葉だからな?」


 ……。

 あいつか。

 奴が原因か、鬼畜魔導師とでも伝えたんかい、あの魔王様はぁぁーっ!!

 心当たりがありまくるだけに否定できんし!

 ルドルフもよくわからないフォローするんじゃないっ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ