思わぬ拾い物 其の四
魔王様の話を要約すると。
『諸事情から君の守護役になりたいと言ってる人物が居るんだ。私としてはカルロッサが君の問題行動の隠蔽協力者になるのは喜ばしいが、相手の狙いが判らない』
……。
外交方面……だろうなぁ、これは。
私を主軸に考えるなら歓迎、ただし下手をすると『魔導師の行動を知ってますよ』的な脅迫という可能性もある。
実際、キヴェラ関連の事はどう取り繕うとも私は犯罪者。正義という便利な言葉で誤魔化されてはいるが、ぶっちゃけ野放し・無罪放免はありえない。
・後宮への侵入(場所柄、普通に拙い)
・王太子妃の拉致(命の危機だったので辛うじてセーフ)
・王都の混乱・民の誘導(大問題!)
・神殿への侵入及び窃盗(犯罪。アウト)
・砦陥落(指名手配クラスの犯罪)
・追っ手達への仕打ち(キヴェラが罪人と公表したのでセーフ)
・コルベラでの王太子撃破(=内容的には公の場で犯罪の自白)
・キヴェラでの決着(災厄認定)
こんな感じ。単に相手にとっても追及されると拙いから『見なかったことにしようね!』で済まされているに過ぎない。
こう言っては何だが、『世間に公表できない犯罪オンパレード!』な状況から都合の良い物だけを民間に流したので『魔導師善人説』ができあがった。
……事実を知る奴が突っ込みたくてもできないの、バレると拙いことになるから。
そもそも私の犯罪の協力者となっているのは其々の国の上層部。全てを追求すると、それはもうカオスな状態になるので沈黙しているだけだ。
キヴェラでさえ『他国の王族を駒扱いした』という事実がバレると拙いので沈黙することを選んでいる。
ま、元凶だしね。しかも私の犯罪を全部暴露されると弱者の烙印を押されかねないので、糾弾できんのだ。
魔王様の心配はこれなのだろう。
カルロッサは唯一、私の犯罪に関わらなかった国なのだから。
上層部には接触していない――宰相補佐様はあの追っ手達の対策要員だったので私の犯罪とは無関係だ――し、何より私達がコルベラに着くまで王太子妃一行だとは知らなかった。
そんな国が魔導師との繋がりを求めてくるなど怖過ぎる。どう考えても『ネタは挙がってるんだ、大人しくこちらの要求を飲め』としか思えない。
「この際、脅迫してきたら私が暴れりゃいいんじゃないですかね?」
さくっと殺っちゃいましょうよ、な提案を一番簡単な方法として私が提案すれば。
「俺達が何か情報を掴んで来るか? 触れられたくない傷の一つや二つはあると思うが」
クラウスが表情を変えずにさらっと言った。そうかい、これが翼の名を持つ騎士の恐ろしさか。
その際『お礼に魔道具の開発に付き合う』とか言っておけば、仕立て上げてでも情報を持って来るだろう。
「家の権力という手もありますね。口の軽い令嬢に何か喋らせてもいいかもしれません」
素敵な騎士様である筈のアルジェントは、カルロッサの令嬢達を手玉にとって『弱みを掴んでみましょうか』な方向だ。
……こいつが『理想の騎士』とか嘘だろう、一歩間違えば自分の容姿を使って女を弄ぶ最低野郎だ。
「君達ね、少しは平和的解決をしようとは思わないのかな? ……我が国の評価が落ちるだろう!」
「「「……」」」
人道的理由からじゃねーのかよ、魔王様。貴方も立派に同類だと思うがね。
それでも誰も――騎士寮で話し合い。周囲には白黒騎士達とレックバリ侯爵がいる――待ったをかけないのは全員が誰かに賛同しているからだ。
だって、どうせなら確実な手を選びたいじゃん!?
もれなく全員が外道と言われようとも、優先順位がはっきりしているのだ。ちょっとくらい力技の報復となったところで咎められはしないだろう。
しかも仕掛けてきたのは向こうです。万全の体制で臨みたいと思って何が悪い!
「ミヅキ、確認するけど君に心当たりはないんだね?」
「ありません!」
魔王様が首を傾げながら問うてくるのに即答する。
カルロッサでの行動は報告書に書かれたとおり。ビルさんやアルフさん達は兄的感情で問題児を案じているかもしれないが、それを外交に使うことはしないだろう。
彼らの報告書には私の情報が記載されているだろうが、それはイルフェナ産の魔術師となっているはずだ。どちらかと言えばイルフェナに借りを作る内容なので役には立たない。
キースさんは……可能性としては一番高いような気もするが、本人が魔法をつかえない事もあり私が魔導師とは気付いていなかった。
と、なると残るは脳筋美形だが……私達は名乗り合ってすらいない。協力者という認識はしているかもしれないが、魔導師だと認識されているかといえば否だ。
だって何も聞かれなかったからね、私。
普通ならば目が覚めた段階で何らかの情報を得ようとする。そういう立場だ、騎士ならば。
それがなく、自己紹介さえすっ飛ばして問題無しならば……本当に脳筋なのだろう。キースさんの達観振りからそれが正しいような気もするし。
疲れがとれて正気に返ったとしても、今度は私の行動の不自然さから警戒心を抱く。間違っても『一目惚れです』な展開は来ない。そういう雰囲気でもなかった。
「突付かれたら困ることといえば無詠唱での魔法と術の複数行使ですが……脳筋なのでそれの異様さを理解しているか」
「脳筋?」
「幼馴染曰くですが、事実だと思います。『何故都合よく魔術師が居るのか』っていう疑問以前に、名乗り合うことすらしませんでしたから。それで何も問題無かったですからね〜」
報告書の内容を思い出したのか微妙な表情になる魔王様。
そうですねー、私もそんなに都合よく事が運ぶとは思ってませんでしたから。
「ああ、うん……確かにあの報告書を読む限り気付いてなさそうだったよね」
「彼が目覚めた時は私達はもう去った後でしたから、確認ができなかったんです」
目が覚めて改めて事情聴取……ということになっていたら、キースさんあたりが気付いたかもしれない。それが実現していない上に私の背後には魔王様。突付こうとは思うまい。
素晴らしいじゃないか、脳筋美形! なんて私に都合の良い存在か!
「では、儂も同席することにしようかの。ここまで相手の意向が読めぬ以上は少しでも対抗手段が多い方がよかろう」
「あれ、何か弱みでも握ってるんですか?」
参戦表明のレックバリ侯爵に尋ねると、狸様はそれは人の良い笑みを浮かべ――
「儂が何年この国の中枢に居たと思うかね?」
意味深な事を言った。そうかそうか、外交カードは常に複数所持しているのですね? それが嗜みなのですか、この国は。
貴方も実力者の国の代表格ってこと綺麗さっぱり! 忘れてました。
「……。お前さん、思っていることが普段はすぐに顔に出るの」
「口にしないだけまだマシかと」
呆れた狸の視線も何のその。とりあえずこちらの行動は相手の出方次第、ということだろう。
さて、カルロッサからの来客よ。覚悟するがいい!
※※※※※※※※※
「……なんて思っていたこともありましたねっ! 魔王様、現在のお気持ちをどうぞ!」
「……。君、本当に規格外なんだね……っ!」
額に手を当てて頭痛を耐えるような表情の魔王様。
周囲の人々も生温かい視線を私達の前に座る人――何故か騎士寮での話し合いとなった――に向けていた。
そこにはカルロッサからの使者が頭をテーブルに着けんばかりの勢いで下げながら懇願中。
「どうか……どうか私の愚息を貴女の守護役の末席に加えてやってはくれないだろうか!」
その隣には宰相補佐様。同じく頭を下げているがその表情も声音も諦めが漂っていた。
「できればお願いしたいけど……拒否したい気持ちも十分過ぎるほど判っているわ」
「お前、最初から諦めてどうする!」
「私が彼女の立場なら絶対に拒否するからですわ、小父様」
勢いよく体を起こして宰相補佐様の言葉に突っ込むも、宰相補佐様はさらっと流す。
おいおい、拒否される物件なのかよ『あれ』は。
視線を向けた先では脳筋美形ことジークフリートさんがキースさんに羽交い絞めにされている。開口一番、『俺の背中を守ってくれ!』と私に言ったからだ。意味が判らん。
ジークさんはどうやら本当に、本っ当に! 残念な人であるらしかった。あの時は体力が落ちており、しかも戦闘モードだったので割とまともに見えただけらしい。
その一幕でカルロッサに対する疑惑は綺麗に消えた。
誰もが思ったのだ……『扱いに困ったんだな』と。
ここは騎士寮、無駄に美形で対人スキルの無い奴がどれほど扱いに困るかを理解している。彼らだって対人関係に皹入れまくる可能性のある奴は隔離するだろう。
つまり『周囲を納得させられる婚約者』と『いざという時の隔離場所』が欲しかった、と。
(物凄く範囲を広げて)一目惚れ説が正解とは!
……ただし、『一目惚れ』は普通の意味ではない。大蜘蛛を倒した時のサポートと状況判断力、そして自分に欠けたものを補える存在という理由だそうな。
そう考えるとジークさんのあの台詞は直球とはいえ、正しい。戦況が苦しい最中の戦場で言えば素敵な絆が目覚めると思います。
『人生共に歩いてくれ』な意味も兼ねてるらしいが、それは単に私の性別が女だからである。私が普通にイルフェナの魔術師で男ならカルロッサへと親善大使か何かの名目で派遣され、友人付き合いが始まったのではなかろうか。
いやいや……すっげぇ真面目に考えてましたね、私達。
蓋を開けてみれば大変馬鹿らしくも切実な事情だったわけで。
誰もそっちの理由なんざ考えてませんでしたよ、大穴でしたね『一目惚れ』!
……賭けの商品だった『飲み会のつまみリクエスト権』は流れたな。騎士s、あからさまに残念そうな顔しない!
「いやはや、随分と勝手な言い分ですなぁ」
狸様の声に宰相補佐様達二人は揃ってそちらへと顔を向ける。
「これでミヅキが異世界人でなければ無理矢理寄越せと言われたのでしょうなぁ……『英雄』を手放せぬならば飼い殺す、無理ならば自由を与える。そのどちらもできぬとは随分と無能ですな」
「……」
「しかもその役を全く関係の無い娘に押し付けるとは。英雄の血とは……何をしても許されるとでも思っておられますかな?」
フェアクロフ伯爵も宰相補佐様も答えない。……答えられない。
レックバリ侯爵が言っていることは事実だからだ。この状況は単に私が異世界人だからこその幸運である。
「殿下がこの子を可愛がっているということは御存知でしょう。親猫の腹の下から子猫を無理矢理攫うような真似は感心しませんぞ?」
「は? 子猫……?」
意味が判らず怪訝そうな表情になるフェアクロフ伯爵に、レックバリ侯爵は微笑みかけた。ただし、目は全く笑ってはいない。
「我らもなぁ……長らく見守ってきた孤独な猫が親猫となり、子猫を通じて他者と関わるようになったことを喜んでおりまして。それを壊すならば容赦はしませんぞ?」
穏やかそうに見える老人の静かな言葉。けれどそれは二人を硬直させるのに十分な威力を持っていたようだった。
ふとキースさん達に視線を向けると二人も顔を強張らせて固まっている。意味が判らずともヤバイ雰囲気を察したらしい。
そして魔王様は……若干顔を背けていた。どうせなら御揃いの髪型にしとけば良かったですね、親猫様。一発で親猫と子猫が誰なのか理解できたでしょうに。
私は一つ溜息を吐く。このままでは平行線だろう。つーか、そろそろ私はお仕事――料理人達のお手伝いが仕事です――の時間です。
よし、さっさと終わらせよう。
「情に訴えるから話が進まないんですよ。要は契約という形にすればいいんですから」
そう告げると皆の視線が集中する。
「まずカルロッサ側の要望は『ジークさんが私の守護役になること』。これですよね?」
「あ、ああ、そうだが」
フェアクロフ伯爵が慌てて頷く。それを確認し、私は話を進める。
「次にイルフェナ……というより私が得る利点。私が行動を起こす時に協力すること。これはカルロッサという国単位です、伯爵家程度では意味がありませんから」
「そうね、その条件になるわ。異世界人の魔導師は名が知られ過ぎているもの、隠蔽工作なんかは国単位で行なわなければイルフェナの望む形にはならないわ。王の協力が必要ね」
これに答えたのは宰相補佐様。頷いているということは王も承知しているのだろう。
それを踏まえて一度魔王様に視線を向け、軽く頷いたのを確認し口を開く。
「では簡単ですね。私は守護役を受け入れる、そちらは今の提案を飲む。これは契約になりますからイルフェナとカルロッサ両国の王達で契約書を作ってもらうことになると思います」
「そうだね、これは外交問題の一つなのだから父上も文句は言わないだろう」
そういって話を持ちかけたのは君達だったものね――と二人に美しくも恐ろしい微笑を向けた。
当然二人は何も言えず。これは事実なのだから反論などするはずもない。
「それから私のカルロッサに対する認識ですが。私はほぼカルロッサに行くことはありません。フェアクロフ伯爵家及びカルロッサ王家との付き合いも無しです」
「それは……こちらは君に家族として接したいのだが」
「要りません。何故、好かれると思うんです?」
「……っ!?」
困惑するように告げられた伯爵の言葉を拒絶すると、何故か驚いたような顔をされた。
あれ? これは当たり前だと思うけど。
「レックバリ侯爵が今言ったじゃないですか。私が異世界人ではなくイルフェナの魔術師でしかなかったら、どうなっていたか。一方的に自分の人生を歪める輩に好意など持ちませんし、家族としての付き合いなんて貴方達が罪悪感を軽くしたいゆえの言い訳でしょう?」
家族として――なんて言っているが、それがありがたいと感じるのは普通の政略結婚の場合だ。
私がイルフェナの魔術師だった場合にカルロッサへ赴くのは命令だから。お仕事ですよ、お仕事!
名目上『嫁ぐ』にはなるかもしれないが、実際はイルフェナの魔術師をカルロッサへ派遣するだけである。イルフェナの魔術師であることにブレはない。
「私は言いましたよね? 『エルシュオン殿下の配下』だと。イルフェナにおいてそう名乗った者が、生活の場を移したくらいで主を変えるなどありえません」
「家族として接するなんて、本人が望まぬ限り迷惑なだけだ。拒絶すれば悪者に仕立て上げられるのはこの子だというのにね……『英雄の家に迎え入れられておきながら皆様の優しさを拒絶するとは何て傲慢な』と」
「それ、は……」
その可能性は考えていなかったのか、顔色を変えるフェアクロフ伯爵。だが、これは確実に起こる事だと思う。
世間的にはエリートで通っているジークさんに乞われて嫁ぐ、なんてことだけでも嫉妬の嵐は確定だ。命令でこの家に来たのだから『区別』は必須なのに、家族として扱われても困るし望まない。
でも事情を知らない周囲から見れば私の方が悪者なわけで。
「で、現実問題ですが。私はカルロッサにおいて何の功績もありません。ただでさえ得体の知れない存在が王族や英雄の一族と親しくしている、なんて周囲の反感を買うだけですよ。そもそも」
そこで一度言葉を切り、フェアクロフ伯爵と目を合わせる。
「今後一切、魔導師を利用しないと言い切れますか? 私はイルフェナにおいて依頼されても拒否権が与えられていますが、カルロッサは怪しいですよね。貴族達の総意と言われてしまえば無理にでも言う事を聞かせようとするのでは?」
基本的にカルロッサを信頼してないんですよね、私。
そう付け加えるとカルロッサ勢は揃って思案顔になる。ただ、魔王様は私がそう判断した理由に気がついたようだった。思い至らぬ彼らに冷めた視線を向ける。
「君達は家族と言いながらもジークフリート殿を英雄という『国の所有する物』として見ている。勿論、情はあるだろう。だが、血の繋がりがあり共に過ごしてきた年月のある彼でさえそう見ているなら、魔導師を利用しないはずは無い。私もミヅキと同じ判断をしたよ」
「じゃからミヅキは先ほど『契約』と言っておりましたでしょう? 契約ならばそれ以上を求められることは無い――求めるならば新たな交渉が必要ですからな」
彼らは貴族だからこそ家の駒となるのは当然なのだろう。だが、私は違う。
彼らは……カルロッサという国はそれを理解できているのだろうか。そもそも私はカルロッサに興味が無いので、没交渉になっても何の問題も無い。
「交渉の席には着こう。けれど、君達はもう一度きちんと事実を確認し合うべきじゃないかな。条件は出したのだから後はそちらの意見を突き詰める必要があるだろう」
今日は帰れと暗に言いながら魔王様は微笑む。騎士達はすでに見送るように動いていた。
「はあ……これが貴方の教育ですか。本当にやりにくいわ」
溜息を吐いて宰相補佐様が立ち上がる。その表情は呆れたような、けれどどこか安堵したような複雑そうなもの。
それに私はにこりと笑い返して頷く。
「一人でも生きていけるようにっていう教育には『簡単に利用されないように』って部分も含まれてますから」
「魔導師ならば、まして物事に選択権を与えているならば当然だろう? 私はこの子に後悔させる気はないからね」
無知であれば、容易く情に流されるならば……魔導師を利用しようとする者にとって十分付け入る隙になる。それを見越して施されているのが魔王様の教育。
それを聞いてフェアクロフ伯爵は溜息を吐くと、キースさん達を促して扉へと向かった。キースさん達、静かだと思ったらずっと考え中だった模様。思案顔のままジークさんは引き摺られていく。
「出直すわ、こちらも得た情報があるもの。……ああ、そうだ。小娘!」
「はい?」
帰りかけた宰相補佐様が振り返る。その表情は先ほど交渉をしていたものではない、自然なものだ。
「少しはジークに好意持ってくれてる?」
「裏表のない面からも信頼関係は築けそうですね。名前すら初めて知ったので判断基準はそれくらいですけど」
「ああ、そうじゃなくてね。顔よ、顔! 好みかって聞いてるの!」
鈍いわね、と不満げに言うけど……宰相補佐様も結構酷くないか? ジークさんのセールスポイントが顔しかないと思っているようだ。
顔ねぇ……じゃあ現実を教えてあげよう。
「まず保護者」
魔王様を指差す。
「守護役其の一」
次はアルを。
「守護役其の二」
最後にクラウスを。
「で、三人目の守護役はゼブレストのセイルリート将軍です。……今更、観賞用が必要だと思います?」
「知ってはいたけど、私達の足りなさぶりが良く判るわ……!」
悔しげにそう言って宰相補佐様は帰って行った。なんのこっちゃと首を傾げ、該当人物達を思い描く。
……あ。
「ミヅキ……お前さん、無自覚に『私は顔と頭と家柄が揃った男に囲まれてる』と言いおったな?」
「あ〜……保護者の方も該当しちゃいましたね」
レックバリ侯爵が生温かい視線と共に暴露する。やはりそう聞こえてしまったらしい。
宰相補佐様、私は顔の出来だけで言ったんです。悪気も裏の意味もありませんので、『カルロッサはアホ揃い』とは受け取らないでくださいね?
「いいんだよ、あれくらい言われても仕方ないことをしたんだから」
対して親猫様はムカついたのか微妙に優しさが無い。
……交渉、頑張れよ? カルロッサの皆様。
イルフェナはやはり強敵でした。




