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魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
魔導師の受難編
128/696

魔導師に御願い?

民間レベルの情報しか知らなければ主人公は御伽噺の善人的ポジション。

 それは実に唐突な話だった。


「……招待状?」

「そう、君宛のね。送り主はフェリクス殿下だ」


 魔王様の執務室に呼び出され、何事かと思えば渡された一通の封筒。

 視線で開けるよう促され、開いたそれは夜会への招待状だった。


 しかも場所はバラクシン。


 アリサからは何も聞いてない。


 ついでに言うなら差出人の『フェリクス殿下』って誰?


「……送り間違い?」


 思わず訝しげに招待状を眺めるのも仕方ないだろう。

 知らんぞ、こんな人。しかも王族じゃん。

 まあ、お忍びで何処かで知り合っていた……という可能性も無くはない。セシル達との逃亡旅行で酒場や宿には立ち寄っているのだ、そこで知り合っていた可能性もある。

 ライズさん(笑)という人も居るしな!


「いや、それ間違いなく君宛てなんだよね」


 そう言って魔王様は溜息を吐く。


「君を表に出すと絶対にこういう輩が出るとは思ったけど」

「……つまり『利用しようとする人』ですか」

「うん。少なくとも非常に幸せな思考回路をしているんだろう」


 バラクシンでの私の評判は災厄に近い。アリサやライナス殿下の事も含めて簡単に利用できるとは思わないだろう。

 ただし、これは上層部の人間に限るのだ。

 魔王様の『幸せな思考回路』発言からフェリクス殿下は『王族だけど重要な立場からは程遠い存在』なのだと推測。

 上層部と呼べるほど政に関わっているならば正しい情報を得ているだろうが、それ以外では私の情報はあまり出回っていないのだから。

 これには『国が異世界人の扱いを理解していなかった』という事と『異世界人相手に本気でビビっている』という二点が挙げられる。

 国の恥に直結するので外部にそのまま伝わるとちょっと拙いのだ。特に教会と権力を二分する国だからこそ、こういった問題は他国の介入を許す切っ掛けになってしまう。

 教会にも教会派の貴族連中経由で伝わっているのだろうが、彼等とて国の価値が下がる状況は好ましくは無いだろう。利害関係の一致で敢えて触れない話題の筈だ。


 つまり『異世界人の魔導師と何か揉めたらしい』程度が定説。

 魔導師は一般的に災厄扱いなので怯えていても無理は無い、と。 


 今回のキヴェラの騒動でも真実を知っているならイルフェナに仕掛けて来なかっただろう。知らなかった連中が騒いだ結果なのだとバラクシン王からの謝罪の手紙に書いてあった。

 何故か感謝の言葉もあったのが謎だ。『お兄ちゃん』呼びは王にとっても恥辱プレイではなかったのだろうか?


 で。


 そんな事情もあり、真っ当な上層部の皆さんは私と積極的に関わろうとは思わないのが現状なのだ。

 なにせ王太子をボコる姿を目撃している上、一応キヴェラに勝利している。そんな奴を怒らせた自覚があるなら、機嫌を損ねるような真似はすまい。関わらないという一択だ。

 

 これが普通の発想。

 一般的な思考。


 この状況であからさまに利用しようとする奴だからこそ、魔王様は『非常に幸せな思考回路をしている』と言ったのだ。

 『殿下』とつくからには他国の王族、『お馬鹿さんが居る』とは言ってはいけない。言葉って大事。


「明らかに裏がありますよね」

「そうだろうね」


 二人して暫し無言。視線はお互いの顔に固定し、招待状は視界から外す。


「……体調を崩す予定なので欠席で」

「『予定』ってなんだい、『予定』って」

「いいじゃないですか! アル達に比べれば軟弱ですよ!」

「う……それはそうだろうけどね……」


 嘘ではない。便利さに慣れた異世界人など、この世界の人に比べたら虚弱……は言い過ぎだが身体能力や体力面で劣る。

 それにナイフすらまともに投げられないか弱い乙女ですよ、私は。大人しいとは言わないけどな。

 魔王様も『体力面で劣る』ということは知っているので反論は無い。


「『体調を崩す予定』と言っても数日前から徹夜でもすれば事実にできると思います。ほら、完璧! 私は寝込んでイルフェナは事実を伝えるだけでいい!」

「それは意図的に体調を崩すって言うんだよ、ミヅキ……」


 やや呆れ顔の魔王様。いいじゃないですか、重要なのは結果なんですから。


「……お前、本当にそういうことはよく思いつくな」


 珍しくクラウスが口を挟む。


「何よ、今更でしょ。それとも大人しくしろと?」

「いいや? 俺は言葉が得意ではないから頼もしく思っているぞ」


 そう言って僅かに微笑む。……褒め言葉だったようです。

 微妙な表情の魔王様はともかく、アルもいつもと変わらぬ笑みを浮かべたまま。彼等の立場からすれば即座にこういった対応を思いつくことは良い事なのだろう。

 魔王様の教育はとっても順調、日々翼の名を持つ騎士に馴染んでゆく。


「いやいや、それ私の所為なのかな!?」

「口に出てましたか。四割ほどは確実に魔王様の教育の成果ですって」

「……残りは?」

「元からの性格と環境と守護役連中」

「……。微妙に納得できる答えをありがとう」


 親猫としては文句を言えない答えだったらしい。さり気無く逸らされた視線にささやかな罪悪感が漂っている気がする。


「とりあえず事情説明をしては如何です? ミヅキというよりエルの事情なのではないですか?」


 アルがやや苦笑しながら魔王様に説明を促す。それを見て魔王様は溜息を一つ吐くと執務机の上に手を組んだ。


「今回の事は私関連で依頼が来た。君は私の駒の一つとして参加してもらいたい」

「へぇ? 魔王様の依頼主ってことはこのフェリクス殿下とやら以上でしょうね」

「どうしてそう思う?」

「この殿下が依頼主なら最初から突っ撥ねてるでしょう?」


 国が関わるならば魔王様とて動くだろう。

 蔑ろに出来ない国と人物ならば同じく動く。

 だが、この人物に関しては魔王様は『お馬鹿(意訳)』と言っているのだ、絶対にその二つに当て嵌まるまい。

 可能性として最も高いのはバラクシン王からの依頼という場合。これならば魔王様とて知らん振りはできない。


「そのとおり。国には……と言うより私には王から依頼が来た。だけど君にフェリクス殿下から招待状が届いたのも事実だ。だから私は君を駒に選ぶ」


 僅かに片眉を上げて魔王様を見る。王が関わっているならば魔王様に付随する形で私が出て来る可能性も察しているだろう。

 ……恐らくは『勝手に』息子が招待状を出した事も知っているに違いない。

 それに対し魔王様を頼るあたりは評価できるな、バラクシン王。私に謝罪の手紙を寄越した事といい、今回の事といい誠実さを見せている。

 苦言を呈した魔王様に『王が頭を下げ頼んだ』のだ、『国の恥ともいえる出来事』に。相手の能力を認めた上で信頼していなければ絶対にやらん。

 『貴方への評価も信頼も変わっていません。今後も仲良くしてください』的なアピールも兼ねていると見た。受けるあたり魔王様としても繋がりを作っておきたいのだろう……貸しとも言うかもしれないが。


「君の民間の評価ってね、善意の魔導師なんだよ。御伽噺に出てくる主人公達を助ける存在みたいに思われてるんだ」


 それはセシルを助けた事に起因しているのだろう。『祖国の為に健気に耐えていた姫を救い出し、キヴェラを黙らせた断罪の魔導師』とか言われていた気がする。

 大まかに結果だけ見れば間違ってはいないのだが、実際は私の個人的な思惑と利害関係、復讐者達の存在と非常に自分勝手な理由満載だ。

 ただ、これらを暴露してしまうと私達を支持した国の上層部にも批難が向くので感動的な話に仕立て上げられて民間に流された。

 歴史は権力者の都合の良いように作られるものなのだ。私にとっても化物扱いされるよりはマシということからノーコメントなのだけど。


「だからフェリクス殿下は君ならば味方してくれると思ったんだろうけど」

「それ、無茶苦茶矛盾してません? 『善意に縋る』と言いながらも結局は『立場に付随する権力を行使して私を都合の良いように使う』ってことですよね? 私が自分から動く気は無いんだし」

「そういうこと。それ以前に見ず知らずの他人を巻き込んだりしないよ」


 呆れの中に侮蔑を滲ませて魔王様が視線を招待状に向ける。保護者な親猫様から見てもフェリクス殿下の勝手な言い分はムカつくのだろう。

 『何故うちの子がお前の為に動かなければならんのだ』と。

 ……私としてはその怒りがちょっぴり嬉しい。魔王様は良い保護者。

 アルとクラウスも同じ事を考えているのか、何処となく微笑ましげに魔王様を眺めている。


「……状況を説明してください。魔王様の意向にならば従いますよ?」


 顔を覗き込むようにして問えば魔王様は無言で私の頭を撫でた。

 気分は親猫に頭を舐められる子猫。日頃から毛皮に包んで守ってくれる親猫様の為ならば望まれた働きをしますとも。


「フェリクス殿下は側室腹でね、最近婚約者が出来たんだ。ただ、彼女の身分は子爵令嬢」


 告げられた内容に訝しげな顔になる。

 王族の妃って最低ラインが伯爵家じゃなかったっけ? 例外はあるだろうが、家同士の婚約はある程度釣り合う家柄でなければならない。

 王家の場合は身分というよりも生活環境や今後を考えた意味でのことだ。それくらいでなければ王族としての在り方に馴染めないし、人脈も有力な貴族とは繋がっていない場合が多い。

 『妃としてやっていくだけの資質があるか』ということなのである。

 只の貴族令嬢とはわけが違う。味方になってくれるような存在も後ろ盾も無く、しかも身分至上主義な人々からは生まれを馬鹿にされるのだから。

 はっきり言って子爵程度では今後どころか本人の妃としての自覚も怪しい。立場を理解して血の滲むような努力をし、周囲の悪感情に耐えて結果を出せる人ならばいいのかもしれないが。

 政略結婚にすら疑問を抱かないのが普通の令嬢、そんな『できた人』がそうそう居るとは思えん。妃って妻である以上に『夫に仕えるのが当然』だからね、殿下が頼りないなら才女のサポートが必要だろうよ。


「婚約は認められたんですか?」

「うん、揉めたけど一応は。彼は側室腹の第四王子だしね」


 要は期待されてないってことですな。こんな事をするあたり状況把握もできないほど『お子様』か無能ってことだろう。私の情報を正しく入手できていないしね。


「当然といえば当然なんだけど、婚約者殿に対する風当たりがきついらしいんだよ。それもあって君に後ろ盾になって欲しいんじゃないかな」

「馬鹿ですか、何それ」

「私もそう思う」


 つまり。

 『バラクシンが恐れる実力を持つ魔導師が自分達を祝福してくれれば誰も文句を言えない』と思っているということなのだろう。

 彼等的には『物語に登場する悲劇の恋人達(笑)に味方する善人の魔法使い』扱い。アリサの事も含めて『弱い者の味方』的ポジションだと思われてるということですかい。

 ……。


 誰の事ですか、それ? 


 もしや自分達を御伽噺の世界に重ねてでもいるんだろうか? 現実的に考えて御伽噺的展開って無いからね? 

 何そのおめでたい発想。どうして私がそんな御花畑的思考に賛同すると思うのか。

 ぶっちゃけて言えば婚約が成立した以上は『もう勝手にしろ』ということなのだと思う。その対策が今回の事だろうか?

 側室腹だろうとも優秀ならば国に組み込む事を考えたり、要注意人物としてマークしている筈だ。その場合は勿論、王の信頼を受けた相応しい婚約者が王家によって選ばれているだろう。


 言い方は悪いが王族としては出来損ない。

 厄介だと思われているのは王家の血という事のみ。


 婚約者の子爵令嬢に対し風当たりがきついのも本人が立場を理解していないからだと思われる。自分で覚悟して婚約したんじゃないのか、子爵令嬢よ。


「王子の妃になる以上は当然、婚約者になれる立場にいた御令嬢方からの恨みを買いますよね?」

「うん。相応しい人物ならともかく、個人の感情だけで選ばれるとね」


 ほほう、つまりは王子の個人的感情で妃を選んだと。おい、恐らくいたであろう婚約者とは話をつけたんだろうな? 黙ってやらかしたら双方の家の面子を潰すことになるぞ?


「その子爵令嬢は国が誇る才女だったり、他国の王家と深い繋がりがあるなんてことは……」

「ないね。良く言えば素朴で朗らかな、民間人寄りの御嬢様らしいよ? 悪く言えば上に立つ者の在り方や現実を理解せず、偽善と薄っぺらな博愛主義を最良と思っている娘かな」

「それって個人としての施しと国としての政策を混同してるってことですか」

「そうらしい。子爵令嬢が個人の資産でやるには構わないんだろうけどねぇ……」


 良く言えば民を労わる優しい子。悪く言えば個人的な正義に国を巻き込む偽善者。

 国の上層部に一人居ると混乱を招く嬉しくない存在だ。そういう人に限って自分の正しさを疑わないのだから手に負えない。

 餓えた人にパンを与える『個人的な施し』と国が行なう『長期に渡って現状を改善する政策』の差が判らないのだ。国の政策には税金が使われる事も理解せず、一時の感謝に自分の正しさを確信する。

 魔王様に依頼が来たってことは間違いなくこのタイプと見た。

 だが、疑問も残る。


「側室……殿下の母親はどう思ってるんですか? その実家とか。貴族の勢力的な意味で側室にされたなら実家が黙っていない気がしますけど」


 それくらいの家なら私の情報も持っている気がする。

 これは魔王様達も感じた疑問らしく、呆れを含んだ眼差しで手元にあった紙を見つめた。


「母親は王に恋愛感情を抱いていなかったらしくてね、息子が好きな人と結ばれるのは良い事だと思っているらしい。まあ、恋物語に憧れる典型的な令嬢なんだろう」

「側室だから本当の妃としての役割も理解していないと」

「そういうことだろうね。息子の恋人が可愛いならば普通は祝福よりも不安が大きいだろう」


 側室も妻の一人だが妃との差は段違い。キヴェラだって仲良さげなのに側室の二人は王妃に『仕える』という姿勢を崩さなかった。そこには友情だけではなく敬意も含まれていた気がする。


「その実家は教会派の伯爵家らしくてね、君を直接知らない事に加えてかなり嘗めているんだろう。アリサという異世界人を知るからこそ、上手く誘導すれば君を味方に引き入れられると」


 これには私だけではなくアル達も呆れたような表情になった。複数の異世界人を知るからこそ、伯爵の愚かさに哀れみすら混じっている。


「確かに異世界人は常識すら知りませんけどね……アリサは教育を怠った国にも責任がありますし、私とは全然性格違うじゃないですか」


 確かにアリサならば二人に同情しそうだとは思う。しかし、彼女とて成長するのだ。

 今現在は異世界人という同じ立場の私が相談役のような状態だし、判らなければエドワードさん含め周囲の人達に聞くだろう。その周囲の人々が異世界人への接し方を理解し、アリサの味方になっている以上は『何故ダメなのか』という背景事情も含めて説明し諌める。

 アリサとて過去の自分を反省する日々なのだ、説明されれば理解する。過去の彼女と今の彼女はイコールでは無い、同情はしても二人の味方をすることはしないだろう。


「伯爵は異世界人を利用しようという考えなんだろうね。この世界の知識が無いなら操れると思うような人みたいだし、今回の事も黒幕は伯爵じゃないかな」

「私は未だ無知なままだと思われてますかね?」

「それがキヴェラの騒動に繋がったと考える人も居るんだよ。状況を理解していないから個人の感情で姫を助けた……ってね。君が裏方に回ったこともあって、多くの国が動いた事とキヴェラの内部が脆かった事があの結果に繋がったと思われてもいるんだ」

「ああ……確かに裏方でしたね。盛大に破壊活動したわけじゃないから魔導師といっても災厄扱いはされませんし」


 他国からはキヴェラが魔導師の被害ゼロに見えるのだ。魔導師=災厄=滅亡するほどに圧倒的な強さを誇り国を蹂躙する、という認識が一般的だから。頭脳労働とは思われていないのだ。

 キヴェラの上層部も私の姿や言動が魔導師のイメージと被らなかったからこそ、最初はあの態度だったじゃないか。


「というわけでね。君が特に何かをするわけではないけど、今回は一緒に行ってもらうよ」

「向こうが何もしなければ普通の夜会ですね。何か話があるから呼ばれたというアピールに男装で行きたいのですが」

「そうだね、軽い話し合いの場として利用する事もあるから問題無いだろう。ドレスを着ていなければ周囲にも君が好んで夜会に来たわけじゃないことが判るだろうし」


 無言の『呼び付けられました! 上流階級に混じることなど狙ってません!』的アピールです。魔導師だろうと民間人、普通はこんな場に来る筈無いだろ!?

 下手をすれば『思い上がっている』という評価さえされかねないのだ、個人的に親しくするのとは訳が違う。何か言われたらフェリクス殿下の所為と暴露――王族からのお誘いは普通断れない――した挙句、『エルシュオン殿下の護衛を兼ねているのでこの服装です』とでも言って誤魔化そう。

 つーか、それくらい察しろ。この時点で自己中なフェリクス殿下とやらへの評価は大きくマイナス。


「イルフェナでさえ用が無ければ参加しないのにね、君は」

「隔離状態を何だと思ってるんでしょうね?」 


 王族にしては情報に疎過ぎるという会話に、魔王様は僅かに首を傾げ思案顔になる。


「伯爵経由での情報ならば都合の悪い事は伏せられている可能性はあるね。こんな事でも無ければ、伯爵は君と接触することさえできないから」

「私が殿下の味方になれば必然的に助力を願うことになりますもんね」


 そう言うと魔王様は笑みを深める。バラクシン王が警戒したのはこれなのだろう。私は他国の者なのだ、彼等の味方になった場合に頼るのは二人の最大の味方である母親や祖父。

 伯爵が教会派である以上は下手をすれば王家と教会の力関係が動く事態だ。魔導師の名はそれくらいの価値がある。


「俺に言わせれば伯爵こそ情報不足なのだと思うがな。ミヅキは己が立場を理解しない権力者につくほど甘くはないぞ?」

「それ以前にそんな安っぽい恋物語に憧れてくれるなら、我々は一体何だというのでしょうね?」


 アル達、苦笑しつつも声に何だか怒りが篭っているような? ……ああ、遠回しに守護役連中が馬鹿にされたともとれるのか。一応、婚姻希望ってことになってるから。『憧れ? 何それ、美味しい?』って状態だもんね、私。


 え、もしや素敵な騎士様としての自覚やプライドがあったのか!?


 それはいくら何でも手遅れだろう、私に対しては。普段と違ったら体調不良か記憶喪失、騙されているという状況を疑うもの。

 クラウスの場合は自分より上位の術者への見下しが許し難いって感じなんだろうな。情報収集という仕事面からしても馬鹿にされたくあるまい。

 魔王様的には頼もしい配下でも、内面含めての男としての評価は『それってどうよ?』的なものだと思います。主に恋心を抱かない女性視点では。

 少なくともエリザやエレーナの評価は違う。ヤバイ連中という一択だ。

 素敵な騎士様に憧れるお嬢様達を平然と利用できる生き物だもんな、守護役連中。私も人の事は言えないが。


「今回はアルとクラウスを連れて行くから、当日はどちらかが君の護衛につくと思ってね」

「了解しました」


 未だ見ぬフェリクス殿下よ、ロマンスは自分の国だけで盛り上がってはくれまいか? 

 美形な守護役を互いに有効な駒――勿論、信頼関係にあるからこそ――と考え、後宮では罠と策略に熱意を燃やし――生まれるのは恋愛感情でも忠誠心でもなく戦場の絆だ――側室どもを一掃した私にとって君達の恋物語は何の価値もない。

 それに。

 利用しようとするなら反撃される可能性もあるって理解できてるかなー?  


中途半端に主人公の情報を持っていると勘違いする人も居たり。

勿論、そんな善人は存在せず。

相手視点は次話にて。

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