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魔導師は平凡を望む  作者: 広瀬煉
キヴェラ編
107/697

コルベラ到着

「アンタ達の目的は薬草の勉強なんでしょ? 色々と世話になったと聞いてるし、国境付近まで送ってあげるわ」

「へ?」

「こっちもイルフェナに借りを作りたくないのよ。受けて頂戴」


 ……といった親切+感謝+外交事情という言い分の下、私達は送ってもらえることになりました。馬車も上等な物でカルロッサの騎士達が護衛に付く、なんて特別扱いで。

 いや、現実問題としてキヴェラが逆恨みから仕掛けてくる可能性があるからなんだけどさ。結構大きい家が潰れた原因が今回の事件だから『カルロッサが大人しくしていれば!』と思う輩も居るのです。

 私達は当事者な上、一般の旅人では襲い放題なので『今回の御礼』という事にして私達を護衛する方向になったんだと。なのでシェラさんとも村でお別れです。一緒に居ると危ないしね。

 ちなみに村とか元追っ手連中はクラレンスさん達が睨みを効かせているらしい。向こうが状況を正しく見ているならば何も起こるまい。


 村を襲撃したら即座にイルフェナが報復措置をとるのですね、判ります。


 個人的にはそちらも大変面白そうなのだが、今回の目的はセシル達の逃亡。

 聞き分けの良い子になって馬車に揺られておりますとも。……後で魔王様にどうなったか聞こう。


「随分快適な旅ですわね」


 エマが窓の外に視線を向けながら穏やかに言う。外の景色を見ているのではない、周囲を窺っているのだ。

 護衛が居る利点としては守ってくれる人が居るということだろうが、逆に重要人物が乗っている目印になる場合もある。護衛が居るからと気を抜いてはいけない。


「……そう思うなら何故お前達は物騒な事をしてるんだ?」


 同乗していたキースさんがジト目で私とセシルを見る。


「え?」


 私はせっせとクズ魔石に爆発系魔法を組み込み――投げれば破裂する小規模なもので不意をつく程度。爆発と言っても理科の実験レベル――簡易爆弾紛いを量産し。

 セシルはひたすら剣の手入れをして襲撃に備えている。勿論、エマも投げナイフを標準装備。


 『いつでも来やがれ、襲撃上等!』


 誰を見てもそんな期待が透けて見える私達にキースさんは呆れている。いいじゃん、正義はこちらにあるんだぞ。


「え〜? だって、これは確実に来るでしょ」

「何故そう思う?」

「ん? カルロッサが警戒してるから、かな」


 にぃ、と口元を歪めて笑う。


「民間人相手にここまで護衛を付けるなんて御礼としてもありえないでしょ。何らかの情報を入手してると見るべきだと思うよ」


 キースさんは難しい顔をしたまま答えない。そして私は更に続ける。


「次。キースさんが私達に同行し馬車に同乗している。村において責任者代理みたいな立場の人がわざわざこっちに来る必要あるかな? 私は『何かあった場合、上層部が信頼する者に報告をさせる為』だと考えたのだけど」


 キースさんは村にそのまま残るか城へ報告に行くのが普通だろう。御見送りに知っている人を、なんて言っている状況じゃないのだから。

話し終えるとキースさんは『まいった!』と言うように顔を片手で覆い天井を仰いだ。


「御名答。俺達も早過ぎるとは思うが報復に動いたという情報が寄せられた。ちなみにイルフェナからな」

「ああ、キヴェラを警戒していたならばそれくらいは容易いでしょうね」


 黒騎士か未だキヴェラに潜入している諜報員だな、それは。

 尤も私に伝えられない所を見るとカルロッサに任せろということなのだろう。若しくは『自力で何とかしろ』という魔王様のお達しか。

 どちらにせよ関係者にはなるから何もしないという選択肢は無いのだけど。


「狙われるポイントは幾つか押さえてある。その中で最も危険なのが罪人の取り扱いが難しくなる国境付近だ」

「……襲撃を受けても隣国へ逃げられれば追い掛けられないから?」

「そうだ。入国する手順がある上に管轄が変わるからややこしい事になるな」


 ふうん、そういう手を使う連中ですか。本人達が来るわけないから、財力に物を言わせて暗殺者やならず者を雇ったのだろう。

 それ系の組織に依頼すれば各地に散らばっている手駒が動くので『距離的に襲撃は早過ぎる』なんて一般庶民基準の常識も通用しない。上からの命令さえ届けば良いのだから。


「俺達としてもある程度の報復は覚悟して……って、御嬢ちゃん!? 何やってんだ?」

「ん〜? 妙な気配がしたし、そろそろかなぁと……」


 どんな生物だろうとも魔力を持っているのだ、意識して探ろうと思えば僅かだが動きを察する事ができる。

 気配を読めない私の自衛手段ですよ。範囲が広かったりあまりにも長時間やると疲れるけどね。

 窓から顔を出しきょろきょろと周囲を見回していると視線を感じた。思わず口元に笑みが浮かぶ。

 ……うふふ、ゼブレストで生きるか死ぬかのデスマッチを経験してますからね! 素人の振りして誘き出すことで先手を狙わせ、逆にこちらが実質先手を取る手段を私は好むのだよ。 

 

 判り易く言うと『相手を煽って伸ばされた手を掴め、肉を切らせず骨を断て』。


 先に手出しをさせないと、魔導師ということもあって私が悪者にされかねんのだ。

 状況証拠は大事です。私は被害者、正当防衛なのだよ……!

 で、仕掛けてきた先方がどうなったかと言えば。


 べちっ! という音を立てて『見えない何か』にぶつかり、ずるずると下に滑り落ちた。

 まあ、物を投げるより馬車の上に乗って内部への侵入を試みた方が周囲の護衛と闘わずに済むものね。


 が。


 お馬鹿さんだなー、結界くらい張ってあるに決まってるじゃないか!

 轢かれるとグロいから道の脇に転がってろよ? そこまで面倒見れん。

 

「皆さーん、襲撃ですよー!」


 馬車が止まると同時に騎士達が剣を抜く。勿論、私達も飛び出している。


「ちょ、お前達待て!」

「祭りですよぉっ! 全員速やかに獲物を捕獲せよ!」

「獲物!? 獲物って言った!?」


 いかん、つい本音が。

 襲撃者もとい敵ですね、敵。……建前上は。


「私達もストレスが溜まっておりますの。よい運動ですわ」

「漸くミヅキに貰った武器を試せるな!」


 うろたえるキースさんを他所にイルフェナ三人娘は絶・好・調!

 特に今まで出番の無かったセシルとエマは大はしゃぎ! うんうん、ストレスを溜めるのは良くないよね。

 対して襲撃者達は嬉々として狩りに出た私達に戸惑っている。その姿は全身黒尽くめ。


 おお! 懐かしの黒尽くめ戦隊の御仲間じゃないか。昼間から怪しさ全開の黒尽くめなアホっぽい連中!

 しかもこいつ等は結構な犯罪組織らしく、捕獲すれば国からの御褒美は確実らしい。


 つまり賞金首。


 捕らえれば報奨金が出る『生きた宝箱』。


 現実において、ゲームのように倒せばお金が手に入る貴重な敵……!


「セシル! エマ! そいつら生きたまま捕まえよう! 賞金首だから換金できる!」

「何?」

「何ですって!?」


 二人の目の色が変わった。僅かに動揺する黒尽くめ達に、より一層の熱い視線を向けている。

 コルベラは小国である。しかも食料は他国から買い入れている状態であり財政は結構ギリギリだ。

 そんな貧しい小国にとって金は何かの時に役立つ超重要アイテム。とっても素敵な御土産です。



 この瞬間、私達の立場は逆転した。人は欲望に忠実なのだ。



 狩られる獲物は襲撃者達です。『誰にも渡さん!』という意気込みが二人から感じられ大変頼もしい。

 カルロッサの騎士達がドン引きしてるけど気にしない! 騎士様達がどれほど素敵だろうと目の前に御褒美を吊るされたセシル達は獲物しか見えてませんよ。

 人からの施しは屈辱でしかないだろうが自らの手で稼ぐ事には問題無し。狸様も『自活できる姫』って言ってたもんな〜、これはストレス解消と実益を兼ねた素敵なイベントなのですよ!


「貴様等……一体、何をっ!?」


 困惑を浮かべる黒尽くめ達を切りつけながらセシルは不敵に笑う。


「黙れ、金。私達の懐を潤す高額賞金首を逃すと思うか?」

「大人しく私達に捕まりなさい!」


 なお、鬼気迫る勢いの美女二人にカルロッサの騎士達は剣を抜いたまま困惑している。

 うん、その気持ちもわかるよ。誰だって護衛対象が襲撃者を襲うとは思わないよね。

 護衛が役目だろうが、その対象が嬉々として襲撃者達を狩り出しているのだ……下手な事はできないし邪魔をすれば怒鳴られる。

 騎士達は御仕事ができない状況になってますが、命令無視ではありません。だって連中は敵に非ず。


 あれは獲物です。私達が狩る側なんです、私達がやりたいんです……!


 襲撃犯としての扱いは我等が報奨金を貰った後にしてください。大丈夫、今回は捕らえる以上の事はしないから。

 勿論、私も参戦するけどな! 


「二人とも、退いて!」


 そう叫ぶなり数個魔石を投げる。魔法の気配を感じ取った黒尽くめ達が即座に対処すべく動くけど、破裂する魔石が攻撃の本命ではない。

 パチリ、と指を鳴らして空気圧縮による衝撃波を全方向から。破裂した魔石に魔法を警戒し、その場に留まって防御体勢をとった連中は予想外の衝撃波を食らい崩れ落ちる。

 結界を張った者もいたようだが、それが魔力結界ならば攻撃は素通りだ。私の攻撃は基本的に物理、魔法の気配をさせることで敵を誘導し物理攻撃を仕掛けるという非常に防ぎ難い手なのである。

 やだなー、魔石が攻撃の要なんて言ってないぞぅ。相手を警戒させるフェイクに決まっているじゃないか、威力は期待できないんだから。第一、そんなヤバイ物を馬車内で作るものか。

 これでも量産したのには理由があるのだ。使い道は大きく分けて二通り。


 其の一・本命の攻撃を当てる為のフェイク。

 其の二・相手の動きを妨害し攻撃できないようにする。


 実際の効果は軽い爆発なのだが、魔石に少量の小麦粉を転移で混ぜてあるのだ。よって発動と同時に物凄く軽い粉塵爆発紛いが起きる。

 勿論威力は殆ど無い。ただし受ける側からすると一瞬の炎と派手な音に一般的な爆裂系魔法を連想し動きが止まる。

 早い話が癇癪玉程度の扱いなのだが、狩りでは獲物を怯ませた隙に攻撃というのは有効な手段だったのだ。特に大型種相手では攻撃が止まるだけでも命の危機は回避される。


 なお、これは対人において意外と有力な物だったりする。発動してなきゃ『害にならない物が投げられた』という程度なので投げても物理攻撃と認識されないのだ。実際、小粒で軽い魔石が当たっても痛くは無い。

 発動して初めて結界が作用するのだが、そのときは既に結界内に入り込んでいるわけで。

 『投げたけど力が足りません』的状況を装い足元に滑り込ませ、相手が警戒を解いた後に発動……といった手も使える素敵アイテムです。殺傷能力よりも隙を作る事を重要視して製作した自慢の一品。


 今回はセシルとエマの見せ場ですからね。私はこれを投げて敵を怯ませるだけで後はサポートです!


 逃がさねぇぞ、黒尽くめ。五人で結構な額だったし、今回は倍以上の人数が居る。ついでに組織の情報を聞き出せればもっと上乗せされるかもしれない。嗚呼、期待に胸が膨らむ。

 私個人としても新作の実験ができて嬉しい限り。都合よく襲撃なんて何て気の利いた連中だ!

 転がった黒尽くめはカルロッサの騎士達が捕縛してくれている。役目が逆だとは言ってはいけない。

 これも重要な御仕事ですよ。見張りと捕獲は御願いね?


 ……そんな感じで襲撃者達は狩られていった。表現が何だかおかしい気がするが事実だ。

 場所も国境付近だったので少し歩けば国境、いよいよコルベラです。


「私達、暫くコルベラに滞在するから報奨金はコルベラ経由で宜しく!」

「……お前達、金に困ってでもいるのか?」

「備えあれば憂いなし。金は重要です」

「ああ、そう。逞しいことで」


 村での生活を知る私からすればその答えも嘘ではない。と言っても現在私は生活が保障されているし、寮の職員としての給料が出るので金には困らんのだが。

 私の興味が食に向いている上に貴族女性が金を掛けるという貴金属類には興味無し。

 しかも日々の努力は寮の食事事情に反映されるので、余程個人的なものでない限りは必要経費扱いされる事も多い。

 結果として私に金は不要なのだ。全額コルベラ行きです。癇癪玉の実用化実験させて貰ったから謝礼を払ってもいいくらいですよ、人体実験なんて簡単にできないし。


「じゃ、色々お世話になりました! またねー!」

「お、おい。国境まで送るぞ?」

「私達ならば大丈夫ですわ。御仕事をなさってくださいませ」

「いっそもう一戦あっても良いくらいだな。やはり体を動かすのは楽しい」

「そ……そうか? 気を付けてな」


 ぶんぶんと片手を振り笑顔で国境へ向かう私達に何処となく引き攣った顔のキースさんが挨拶してくれる。

 ……最後の『気を付けてな』という言葉が『やり過ぎないようにな』に聞こえたのは気の所為か。


 微妙な雰囲気のカルロッサ騎士の皆様に見送られ、私達は無事国境を越えるべく歩き出した。

 その後の襲撃は残念ながら無かった。ちっ!


※※※※※※※※※


 そんな騒動も経験しつつ国境を越え、現在コルベラです。と言っても国境を越えたばかりなので村や町は見えないし、ちょっと開けた山道だ。

 セシル曰く、医師などが修学の為に訪れる事も多いのでこの近辺で騒動を起こす国はあまり無いらしい。

 確かに何処の国を敵に回すか判らないもんな、カルロッサでの私達みたいな場合もあるのだし。

 だから襲撃があるなら国境を離れた後だと二人は言っている。

 国境の警備兵さん達はセシル達を見て目を潤ませていた。慕われている姫様なようです。

 旅券を見せて通る際、私に対して深々と礼をしてくれたので私の立場も理解したのだろう。安心しろ、君達の姫の敵は私が甚振り尽くしてやるからな。寧ろ私個人の目的だ。


「あ、そうだ。今のうちに言っておくんだけどさ、キヴェラはそろそろ内部が落ち着いてると思うよ」

「あら、あの追っ手達を向かわせたのにですか?」

「だからこそだよ。どう考えても処罰が重過ぎるし対応も早過ぎる。騒動を起こす事を待って準備されていたと思う」

「なるほど。つまり私の逃亡や復讐者による内部の混乱は抑えられたと」

「そう見た方がいい。多分、他国も付け入る隙を見出せない状態じゃないかな」


 私が引き起こした騒動は間違いなくキヴェラを揺らがせた。つまり他国にとってはチャンスだったわけですよ。

 実際、ゼブレストやイルフェナではキヴェラは全く動いていないと報告を受けている。

 私達がバラクシンに滞在していたあたりまでは内部の混乱から身動きが取れなかったのだろう。

 だが、アルベルダやカルロッサには追っ手が向かわされ対処も物凄く早い。間違いなく王太子妃の逃亡に便乗して邪魔な家の排除を狙ったと思われる。


「大国だけあって上層部は優秀なんだと思うよ? 自国にとって不利になるような出来事を逆に利用して望んだ結果を出してる」

「それは……そうだろうな」


 セシルも思う所があるのか私の意見に同意した。

 自分に不利な状況だろうと希望的観測に縋っちゃ駄目なのです、確実に結果を出せるよう厳しい目で冷静に見なければ。


「まあ、セシル……というかコルベラに関しては大丈夫だと思うよ? 証拠は十分だから心配しないで」

「しかし!」

「それに私にとってもキヴェラにとっても鍵は王太子。あいつ次第でどちらにも傾くから」


 実際、互いにとって最終兵器扱いだと思われる。いきなりまともになる筈はないから付け焼刃の王族的振る舞いを何処まで壊せるかという事に賭かっているだろう。

 煽られて迂闊な発言をしてくれれば私の勝利はほぼ確定。キヴェラとしても重要な場面なのでキツク言い含めてはあるだろうけど。


「あら……? あれは」


 エマが上げた声に会話を切り上げ前を見ると馬に乗った騎士達が駆けて来る。先頭の人を目にするなりセシルは嬉しそうな表情になった。


「兄上だ!」

「へ? お兄さん!? 何で此処に!?」


 やがて近づいて来た一団は馬を下りるなり私達を囲み、セシルは黒髪の男性に抱きついた。

 ああ、確かに似てる。王子様というより騎士といった感じの穏やかな雰囲気の人だな。


「セレス、心配したよ」

「申し訳ありません、国の事を思えば我慢すべきでしたが……」

「いや。元々反対していた我等を説得したお前が逃げ出すほどだ。相当な扱いだったのだろう」


 ……相当な扱いどころか間違いなく宣戦布告される状況でしたよ。

 思わずエマを見ると『判っていますわ。全て報告しましょうね』という風に頷いた。おお、殺る気だ。


「エメリナもご苦労だった。よくセレスを守ってくれた」

「勿体無い御言葉です」


 セシル兄の言葉にエマは跪いて頭を垂れる。この状況では臣下扱いだから当然か。普通の対応なのに後宮侍女と比べると物凄く優秀に見える不思議。

 そして彼等の視線は当然私にも注がれる。


「レックバリ侯爵とエルシュオン殿下から手紙を貰った。君の勇気に感謝しよう」

「御気になさらず。私個人の目的もありますので」

「それでも君は二人の命の恩人だ」


 悪質過ぎる悪戯の数々を報告しても同じ言葉は貰えるのだろうか? 滅茶苦茶個人的な感情に基づいた行動の最後はコルベラで王太子を〆る事なのだが。


「これは君宛の手紙だ。エルシュオン殿下から預かっている」


 そう言って懐から封筒を取り出す。受け取った封筒から手紙を取り出して中身に目を通し……口元に笑みが浮かぶ。

 そんな私の様子にセシルは首を傾げた。


「ミヅキ? どうしたんだ?」

「喜べ、二人とも。カルロッサがこちら側に付いた。バラクシンは一応中立だけど、もしもキヴェラの味方をしたら制裁を加えると脅迫済みだってさ」

「脅迫!?」

「何かやったみたい。どうせ今回の事に私が絡んでいると踏んで軽く探りを入れたんじゃないかな? 返り討ちにあったと思うけど」

「そうか、そういう可能性もあったのか」

「魔王様達は最初からそういった連中が出る事も想定内だったらしいし、問題ないよ」


 何をやっているんだ、ライズさん……負けるに決まっているだろう。国の命令だったかもしれないけどさ。

 私と接触した人物でエドワードさんと護衛のリカードさんは除外されるから、魔王様に接触したのは間違いなくあの人だ。

 きっちり泣かせておけば良かったのだろうか。それで使い物にならなくなっても困るので手加減したのだが。


「どういうことだい?」


 セシル兄が訝しげに問う。そっか、これまでを知らないから『こちら側に付く』って意味が通じないのか。

 とは言っても外でこれ以上の話をする気は無い。誰が聞いてるか判らないしね。


「詳しい話はこれまでの報告と共にさせていただきますよ。コルベラにとって有益な事だと断言いたしますね」

「兄上、ミヅキを信じてくれ。彼女はやると言ったら確実に結果を出す」

「私からも進言させていただきますわ。信頼できる友人です」


 二人の言葉にセシル兄はやや納得いかない顔をしつつも頷いてくれた。

 そうですねー、いきなり得体の知れない異世界人を信用しろなんて無理……


「私ばかりが仲間外れとは狡いよ、魔導師殿。楽しそうなのに」


 ……。

 もしや『面白そうな事なのに意味判らないなんて残念過ぎる! 狡い! 混ざりたい!』という意味でしたか。

 ああ、やっぱりセシル兄。妹さんと内面もよく似てらっしゃるようで。


「とりあえず城に向かおう。皆が今か今かと待っているよ」


 そんな言葉にそれ以上の会話を止め。私達は城へ向かったのだった。

 さて、旅はこれで終わり。後はお待ちかねの報復……いやいや、断罪タイムといきましょうか!

 楽しみにしてますよ? 王太子サマ?

賞金首に対し壮絶に間違った認識を持つ主人公。

コルベラ上層部はイルフェナから連絡を時々受けていたので大体の状況は知っています。

ただし、主人公の性格その他は知らされていないので評価は『姫の境遇に同情し手を貸してくれた優しく勇気ある異世界の魔導師』。


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