表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/98

胸を張って言える事。

「・・・・」


勇はその紙に書かれた文字をひとつひとつ目で追った。



そして…

勇の目が変わった。


手紙をたたみながら世亜の部屋を後にした。

自分の部屋へ、足早に向かう。


バタン


部屋に入ると勇はいつものスーツに着替え始めた。

着替えが終わると先程の手紙を胸ポケットに大事そうにしまった。


それを終えると、地下から地上への階段を登り始める。

ゆっくり、ゆっくり…

その時勇が何を思ったのか…本人のみぞ知る。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「…パ~、パ~パ~…」


桃花の泣きそうな声に重い瞼をゆっくりと開けていく。


「ん…どした?」


目をぱちぱちしながら、壁に掛かっている時計を見た。


(午前3時半って…マジかよ)


「こわい夢見た~」


そう言って桃花は少し目に涙を溜めて、俺のパジャマを少し掴んだ。

それがどうしようもなく愛しく感じた俺は桃花を引き寄せて

ぎゅーっと抱き締めた。


「…へへへっ」


桃花が不意に笑った。


「ん?何?」


笑いの原因が分からず聞くと桃花は頭を俺の胸にくしゃくしゃっと

擦り付けてこう言った。


「なんでもなーい!パパが好きなだけー!」


それを聞いた途端原因なんてどうでも良くなった。

わしゃわしゃっと髪の毛を大雑把に撫でて、そのまま後頭部を俺の体に押し付けた。





決して、胸を張って


「桃花の父親です」


とは言えない俺だけど…


それでもこれだけは、この気持ちだけは、桃花への愛だけは


誰にも負けないと。


それだけは胸を張って言うよ。



例えば、人がお前らは親子でも何でもないと言って、

桃花が泣いたとしたら、今みたいに優しく抱き締めて言ってやるさ。



「桃花、愛してるよ」



それ以外に、言える言葉なんてないけど

それだけは確実に言えるから…




そんな事を考えてると、桃花は再び眠りの世界へ…


すやすやと寝息を立てて眠る桃花は俺の宝物。


世界で一番大切な、大切な宝物…。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ