皆のスター!?
「キャー――――何この子!カワいー―!!!」
保健室に来た女から女へと桃香の情報は伝わっていく・・・。
あ、また来た。
これで、38人目か・・・。
俺には目もくれず桃香に向かっていく女共。
(やっぱ、・・・可愛いよな。)
俺は改めて妹の可愛さを確認する。
「さぁさぁ、皆どいたどいた!桃香ちゃんはミルクの時間よ!」
・・・今の俺じゃねぇぞ?
由来だよ、水価由来。
あれから、口コミ流したのも由来。
オムツ代えてんのも由来。
桃香をあやしてんのも由来。
そして・・・
「いいなー、由来!私にもミルクあげさせてよー!」
これから、ミルクをあげんのも由来だ。
女の迫力に負けたわ、俺・・・、生まれて初めて・・・。
「駄目ですよー、先輩。私だってあげたいんですから!」
由来は頑固として首を縦に振らない。
・・・マジですげぇ迫力・・・。
逆らうの男の俺でも怖いし・・・JJ。
「さ〜ぁ、桃香ちゃん。ミルクですよ〜。」
「うー。」
桃香は早く頂戴と言わんばかりに手を伸ばす。
その人形のような仕草にみんなは声を揃えて
「かわいーーー!!!!」
と、叫んだ。
耳がキンキンいてぇよ、畜生。
桃香も叫び声には大分慣れたのか泣かなくなった。(桃香、そんな慣れ嬉しいか・・・?)
ごくごくっと喉を鳴らしてミルクを飲む桃香に皆は釘付けだ。
キーンカーンコーン
…あ,チャイムだ。
俺はその位のリアクションで済むが女子生徒達はそうはいかない。
「あっ,チャイムじゃん!?ヤバい!!私次の授業あの先生なのにぃ!!」
一人が戦線離脱したのを境に皆が保健室から出ていき自分の教室へと向かって行った。そして…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
保健室は俺と由来と先生だけになった。
「…あんた授業でないの?」
由来が俺に聞く。
「…お前こそ。」
俺も由来に聞く。
「出るわよ,…でもあと五分あるわよ。」
そう言って由来は桃香を名残惜しそうに見て,俺に渡した。
「じゃあね〜,桃香ちゃん。また来るからね〜。」
(…二度と来んな。)
「・・・あんた今心ん中で私の悪口言わなかった?」
「・・・・言ってねぇ。」
「あ、そ。じゃね。」
そう言うと由来は保健室を出て行った。
「小林君,授業は?」
先生が俺に問いかける。
「あ,ヤベ。俺,貧血起こったっぽいわ。じゃ,先生おやすみ〜。」
俺はそう言って桃香と一緒にカーテンの中へと消えた。