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悪夢は現実になる[前半・勇編]。


夢を、見た。


美代が死ぬ夢だ。

水価組のボスに怒鳴られたところから夢は始まる。

その後、泣いている美代に奴は銃弾を打ち込んだ。


そして、美代は夢の中の私に静かに口を開けてこう言った。


(全部、あなたのせいよ…)


その後に、もう一言何か言ったのだろう。

唇が動いているのが分かった。


それでも、音はそこで途切れていて

言葉が聞き取れなかった。



「…嫌な、夢だ」


夢なんか見たのは何年ぶりだろう。

悪夢のせいか、うなされたらしい。

少し汗をかいていた。


少し落ち着いたあと、部屋の中にある

シャワールームでさっぱりし、服を背広に着替えた。


また、いつもの日常が始まる。


悪夢のせいで食欲がない。

今日はコーヒーだけでいいか…


そんな事を思いながらコーヒーを求めて

喫茶室に入った。


ガシャン!!


ガラスの割れる音が聞こえた。


「? 入ります」


不思議に思いながら奥へ進んでいくと

世亜様と唐御様が青い顔をしていた。


「世亜様、唐御様、いかがなさいましたか?」


私の声が聞こえると二人はバッと私を見て


「何でもねぇよ、うっかり手を滑らしただけだ」


と、唐御様が私から目を背けた。

どうやら唐御様がコーヒーカップを割ったらしい…


「じゃな、また後でな」


そう言って世亜様は喫茶室から出ていった。

置いて行かれたコーヒーカップの中身は

まだたっぷりと残っていた…


謎だらけな朝だ…


唐御様に話しの内容でも聞きたいが

やめておこう。


面倒事は正直ごめんだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



~勇が起きる前~



コンコン



ドアを叩く音に俺は寝ぼけながら鍵を開けた。


「へ~い、誰だっつーの、こんな朝っぱ…世亜…さま?」


扉を開けるとそこには世亜が立っていた。

世亜は少しムッとした顔で口を開いた。


「悪かったな、朝っぱらからで。

何爆睡してんだよ。」


謝罪の言葉の後に皮肉を言われたので

俺もまたムッとした顔をした。


「あーあー、今日は別に文句言いに来たんじゃねーんだよ。


こっちに来い、重大な話がある。」


(…重大?)


不思議に思いながら俺は世亜の後ろを付いて行った。


すると世亜の足がピタっと止まった。

その足の先には喫茶室があった。


「…ここでいいか。


唐御、入れ。静かにな?」


世亜はそう言うとらしくなく

喫茶室の扉を静かに開けた。


「?」


いつもと違う世亜に少し只ならぬ空気を感じて

言葉に従う。



俺は静かに扉を閉めた。




「で、何なんすか?


重大な話って?」


「静かにしろって言ったろ。


…まぁ、いーや。


率直に言う…。





水価美代が殺された。」



(水価美代…?


あぁ…、桃花の産み親………え?)


「…え?


殺されたって…誰に?」


「…あ~、言いづれぇんだよな~。



…水価組のボスだよ。


水価美代は自分の父親に射殺された。」



「殺されたって…何で?」


俺は驚きながら、理由を聞いた。


「…いいか、この話は今後お前以外の奴に話すつもりはねぇ。


もちろん、勇にもな。


いや、むしろ勇にだけは話すことが許されない話だ。


静かに聞け、」


(勇にだけは…って。


あんなに信頼してる勇にだけは?)


不思議に思いながら、


「はい」


と返事をした。



「勇と水価美代の間に出来たのが桃花だって事は知ってるな?


だが、勇の必死の手回しのお陰で敵同士の子供だって事は

今までバレなかった。


勇は今も必死に隠し続けてる。


そんなことが5年もよく続いたもんだと俺は思ってる。

必ずいつかはバレると思ってたからな。


だがな、とうとうバレたんだ。


水価組のあの馬鹿ボスは、何よりも“裏切り”を許さない。

例えそれが、自分の娘だとしても…


それが今回の話の経緯だ。



そこでな、お前に頼みたいことがある。


条件付きでな。」


「…頼みたいこと?」



世亜は少しコーヒーを飲むと、再び口を開いた。


「その事を水価に伝えたのはこの組の何処かにいる。


1、そいつを見つけて殺る事。


それと…勇は必ずこの事に気付くはずだ。


俺だって一晩よく考えたんだ。

でも、これしか手段はない。


あいつは自分の恋人が殺されたなんて知ったら

水価を壊しに行く。

跡形もなく、誰一人残さず。


それがあいつ一人で出来るなら

俺はこんな事頼まない。


だが恐らくそれは小林組と水価組の全面戦争…

つまり殺し合いになることは確かだ。


たくさん、死ぬだろう。」


「…」


俺は、その奥にある意味を理解出来なかった。


「本当に、本当に言い辛い事だ。


…2、勇を殺る事、だ…」


ガシャン!!!!



俺は思わず手に持っていた

コーヒーカップを手から離した。


(勇を、殺す…?)


「この事はあまりにも酷な事は

十分理解してる。


それでも、これしか手段が…」



世亜が言葉を続けようとすると


「世亜様、唐御様、いかがなさいましたか?」


聞き覚えのある声に俺と世亜は

バッと後ろを向いた。


「何でもねぇよ、うっかり手を滑らしただけだ」


と俺が急いで言葉を出した後に


「じゃな、また後でな」


世亜がいつもの顔に戻って喫茶室から出ていった…。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




もしも願いが叶うのならば、


俺は何を願うんだろう?



世界平和なんてそんな偽善者ぶった事は

死んでも祈らない。


桃花の幸せを絶対に願う。


けど、さっきの話で俺は知ってしまった。



桃花のもう一人の父親も、


俺の無くしたくない人間になっていた事を…


そして、桃花が幸せになる為には、

俺と桃花がいるだけじゃダメな事も…







なぁ、俺は願いが叶うと言われたら


何を祈ればいいってんだ…?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







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