光と闇のやりとり。
久しぶりに見た夜空は、
星が綺麗だった…
そんな星を見上げている俺の横にいる
桃花も、綺麗だった…。
・・・・・
事は桃花の一言から始まった。
「パパ~、桃花お星様にお願いごとしたい!」
寝る前の絵本を読み終わると
桃花が例のキラキラした目で俺に言った。
「…あ~…、明日はパパいないから
明日の次の日ならいいぞ?」
明日は…仕事が入っていた。
キラキラした目に一瞬…、一瞬泣きたくなった。
「ホントー!!!
約束だよ~!」
「ん…、ほら指切り♪」
「は~い、ゆびきりげんま~ん…」
その内桃花は眠くなったのか
すやすやと眠りについた。
逆に俺はなんだか眠れなくて
酒でも飲ん眠気を誘おうと部屋に備え付けの
冷蔵庫からビールを1缶出してプシュッと開けた。
それからケータイのメールを見て
明日の仕事を確認した。
ビールを喉に入れながら、指を動かした。
…急に、急に死にたくなった…
俺は何をしている?
その問いで頭が、胸がいっぱいいっぱいになった。
ブシュ…!
俺は無意識の内にビールを持っていた手に力が入り
ビール缶が潰れた事に気づく。
手にダラダラとビールが垂れてきた。
(もう…
もう、人殺しなんてしたくない…!
桃花と一緒に普通の生活が出来れば
俺は何も要らない…要らないのに…)
それが…俺の心内だった…。
それでも避けられない現実を
俺は一生生き続けなければいけないのか…
(…疲れた)
俺は、少しずつ自分の精神が崩壊していくのに
気づかなかった。
・・・・・
「桃花ー?外行くぞ~?」
「は~い!!!」
夜9時、桃花が大きな声で返事をする。
地下から地上へと続く階段を桃花と一緒に
少しずつ登って行く。
地上へ出る扉を開けた。
組の周りはあまり目立たないように
電灯を設置していなかった。
それでも、油断は出来ない。
俺等は闇に紛れるが、敵もまた闇に隠れる事が出来る。
俺はポケットに入れた拳銃から手を離さない様に
しながら周りを警戒していた。
「パパ~、夜って真っ暗なんだね~」
…桃花は夜を識らなかった。
危ないから出さなかった。
…いや、もうひとつ。
『闇』を桃花に理解させたくなかったから…
俺等は、闇の中にいる。
桃花はその闇に光を差し込んでくれた。
そんな桃花に『闇』がどうゆうものなのか
感じさせたくなかった。
でも、桃花だっていずれ大人になるのだから…
いつまでも、あの地下に閉じ込め続ける事は
無理なのだから…
「パパ~!お星様綺麗だよ~!!」
「ん?あぁ…本当だ」
…本当に、本当に綺麗だった。
星も、桃花も…
俺にはもう手が届かない。
なぁ、桃花…?
☆☆☆
「桃花、何てお願いしたん?」
「ん~…えへへっ!」
「あ~、そう。桃花はパパに嘘つくんだ~」
そう言って俺は桃花より少し早く歩いた。
「あ~もうっ!パパはぁ!」
俺が振り向くと桃花は「耳貸して~?」
と言ったので、俺はしゃがんで耳を傾けた。
「パパのお嫁さんになりますっ!って言ったの~」
俺は我慢出来なくなって、桃花を抱き上げた。
「きゃっ!ビックリした~!」
「桃花~お願い事は、出来ますようにってお願いするんだぞ?
それは桃花がしたいことじゃん?」
「はっ!い、いいの!」
「はははは!」
俺は桃花を抱っこしながら笑った。
幸せだった。
いつまで続く?
闇と光のやりとり…
未来は誰にも解らない?