繋がるもの。
桃花は小食で、俺はいつも心配だ。
飯は10口食べない内に「もういい」と言って
俺が残りを全部食べる方式がいつの間にか出来あがっていた。
そんなんで…
桃花はなかなか身長が伸びないし体重も増えない。
いつまでも軽くて、小さくて赤ちゃんみてぇな桃花。
そんな可愛い桃花だが…
最近…認めたくはないが…
顔が、勇に似てきた…。
特に、目がそっくりになった。
瞳の色が勇と同じ茶色に近い黒…
口も似てる。
小さくて、可愛い口。
女の子は父親に似るっていうけど…
本当だったか…。
勇も、気付いてるのだろうか?
だんだん自分に似てくる娘に…
頼む、気付かないでくれ。
気付いたとしても言わないでくれ。
そんな事を思った。
…俺は、何をしているんだろう。
本当の父親でもないのに父親面してるだけ?
戸籍上では桃花は俺の娘だ。
しばらく考える事のなかった思いが俺を襲う。
一旦、考えるのを放棄して部下の運転する車に乗り込む。
そして仕事の始まり…。
今日の仕事は、いつまで経っても借金を返さない奴らの相手。
ドアを最初はコンコンと軽く叩く。
…返事なし。
まぁ、相手も分かってるからなぁ…。
部下が俺に不法に作った合い鍵を渡したので
それでガチャガチャと鍵穴を回した。
するとドアの向こうから相手の声が聞こえた。
「お、お願いします!来月まで待ってください!」
「そんなに待てるかよ。
いい加減に返せや、このグズ」
「お願いします!」
俺はその言葉を無視して鍵を開けて、
ボロいアパートにズカズカと部下と一緒に入った。
「あ~あ~、ホントにな~んもねぇな」
部下がそんな事を呟いた。
確かに辺りを見渡すと、テレビすらない。
必要最低限の家具があるだけで、借金の返済はどう考えても無理。
「てめぇ、金もないのに俺らから
借りるなんて…なめてんのか?」
俺が相手を睨みながら言うとそいつは土下座して
すみません、すみませんと、謝り続けた。
「あ~~~…
イライラする」
そう呟いて俺はそいつに暴力を振るう。
桃花や勇の事を考え続けてた俺は、ストレス発散の為に
殴って、蹴った。
しかし、思ったよりイライラが無くならず
俺は暴力を止めた。
「おい、帰るぞ」
そう言うと、部下達が「はいっ」と言って
俺にぞろぞろと続く。
車に乗り込もうとしたところで…
俺は、またあいつと出会ってしまった。
「唐御君…?」
「あ?」
ふいに名前を呼ばれ、俺は無くならないイライラを
抱えながら後ろを振り向いた。
そこに…
そこにいたのは・・・
「ゆ・・・うか?」
俺の、初恋だった。
ヤバい、ヤバいヤバいヤバい…
俺の背広にはさっきの血が少し袖元に付いていた。
でも、久しぶりに出会えた優華に喜びと驚きを隠せなかった。
部下が優華に話しかける。
「お嬢さ~ん、あんまり俺らのリーダーに
近寄らない方が「黙ってろ」
俺は部下を睨み口を閉じるように言った。
「お前らは車1台残して先に帰ってろ」
「…は、はい」
部下達が見えなくなったのを確認して
俺は優華を助手席に乗せてどこかで話をしようとしたが
「唐御君、私、このアパートに住んでるの。
良かったら部屋で話さない?」
その言葉に従うように俺は優華の部屋に入った。