出発前に…。
「パパー!おきてー!」
桃花の可愛らしい声で目が覚めた。
「んぁ?どした?まだ6時「遊園地行くの!」
そう、忘れかけてたが今日は桃花の
遊園地デビューの日。
「…そっか」
「そーだよ!」
満面の笑みを浮かべる桃花に心が和らぐ。
上半身を起こし、けのびをした。
「さてと…、桃花飯食うぞ」
「遊園地はー?」
「遊園地はご飯食べて、仕度したらな。」
そんなこんなで桃花を朝食へと誘った。
俺も俺で桃花と出掛けられるのが嬉しくて
少し浮かれてた。
何故なら桃花はここに来てから
公園だの散歩だのデパートだの行った事がない。
せいぜい俺が運転する車でドライブして
どこも寄らずに帰ってくるか
コンビニくらいしか…
それでも「出掛けるぞ」と言えば
喜んで付いてくる。
そんな桃花が初めて言った「遊園地行きたい」
という言葉を見逃さなくて良かった。
…何て少し自己満足の浸る。
「…ん?」
そういえば、と桃花の後ろ姿を見て思った。
(もう“遊園地”なんて言葉が解るように
なってたんだな…)
遅すぎる発見に俺は感動した。
(あんなに、ちっさかったのにな…)
少し胸がキュッ、となった。
(その内もっとでかくなってくんだろうな…。
その時、ここの事をどう思うんかな。)
考えれば桃花を引き取る前にした世亜との約束は
『幼稚園や学校には行かせず、
優秀な家庭教師を付けてそれなりの常識を教える』
そんな事が、本当に可能なのか…
桃花は友達一人出来ずにこの敷地内で
生きていくのか…?
少し、後悔をしたが今日は楽しい日だと
自分に言い聞かせて気持ちを持ち直した。