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笑わない男。



愛と愛の先には何が待っているんだろう?




ある日、俺は桃花と一緒に廊下を歩いていた。

部屋に戻る途中だった。



ガチャ…自室のドアを開け

桃花と一緒に入った。


すると…


「あっ、唐御さぁん」


見覚えのある女がベッドに座っていた。


…最悪。


俺は桃花に


「ちょっと待ってろ」


と言ってドアの外側に残し

部屋に入りドアを閉めた。


「何か用か?

もう来んなって言ったろ?」


俺が睨みつけると女は


「あれだけやらせておいて

それはなくな~い?


それにあたしぃ、唐御さんにマジ惚れしてるんだよねぇ」


上目づかいで俺に好意を寄せてくるバカ女。


マジでうぜぇし…。


「へ~、でも俺もうお前に用ねぇし。

さっさと帰ってくんねぇ?」


大人な対応をする俺に

女はみっともなく縋り付く。


仕舞いにはボロボロと涙を流して

俺に抱きついてきた。


「唐御さん、お願い…

あたしの事捨てないでぇ…」


その後もしつこく俺から離れようとしない。


イラッと来た俺は

女を引っぺがして無理やりドアの外に出し

部下に追い出せ、と告げた。


最後まで女は俺の名前を呼んでたが

俺の心には何も響かなかった。



(あ~、だるかった…


さて、桃花は…ん?)


周りをキョロキョロするも

近くに桃花がいない事に気づく。


慌てて桃花を探しはじめた…が、

すぐに見つかった。


「高ーい!


勇兄!高ーい!」


勇が、桃花に肩車をしていた。

桃花をあやしてくれていたのだろうが

俺はちょっとジェラシーを感じた…。


「桃花!桃花!」


俺が呼ぶと桃花は笑顔で


「あっ!パパだぁ!

勇兄、あっち行って~」


と、勇に肩車をしてもらいながら

こっちに向かって来た。



(…やっべぇ、マジジェラシー感じる…)


桃花を肩車した勇が近付いてきた。

そして俺の前に到着し、降りる桃花。


遊んでくれてただけなのに

何故か俺は勇に苛立ちを隠せなかった。


「お前さぁ、勝手に桃花に触んなよ」


勇は不可解な顔をして問い掛けた。


「何故ですか?」


桃花もまたきょとんとした顔で俺の顔を見ていた。


「お前なんかに関わったら桃花に悪影響だっつーの。

いつもしかめっ面してるようなお人形サンの癖によ!」


俺は知らなかった。

知ろうともしなかった。


何故、勇がいつも無表情なのか。



その言葉に勇が少し眉を動かした。


「何だよ、文句でもあるってか?」


俺が嫌がらせのようにニヤニヤ笑っていると

ふい、と勇は後ろを向いた。


そして―…


「私が好きで無表情でいるとでもお思いですか?」


「え?」


小さい声で呟いた。


その時の勇の顔は、知らない。

ただ、肩が少し震えているのが解った。


「ゆ…」


声を掛けようとすると

勇はそのまま静かに去って行った。


何が起こったのかよく解らなかった。


(あいつが…無表情な理由…?)


そんな事を考えていると

終始見ていた桃花が口を開けた。


「パパー、勇兄ちゃんどうしたの?

泣いてたの?」


「そ、そんな訳ないだろ…」


そんなはずがない、そう信じた。


「さっ、早く部屋行くぞ」


そう言って桃花を部屋に押し込んだ。


それから桃花に昼寝をさせようと

ベッドに二人横たわった。

案外桃花はすぐ寝てくれた。


寝れなかったのは、俺。

さっきの事を考えると気になって仕方ない。


勇が笑ったり怒ったりしないのは

ヤクザだから感情を表に見せないとか

そういう理由だと思ったが…違うのか?


いてもたっても居られなくて

桃花をベッドに残してそっと部屋を出た。


そして勇を探した。

何が、あったのか気になって仕方なかった。


だが、この広い地下ではなかなか勇は見つからなかった。

ケータイに電話するも出やがらねぇ。


そこらへんの部下に聞いても

「知らない」と言うばかり。


勇の部屋にも行ったがいなかった。

外へ出たのかと思いきや車はある。


「くっそ、どこにいんだよ…」


きょろきょろしてると柱の陰で電話をしてる

世亜の姿を発見した。


あいつなら勇が笑わない理由を知っているかもしれない。


電話が終わったのを確認して世亜に近付き話しかけた。


「世亜様、ちょっと聞きたい事があるんすけど」


世亜は振り向き、こう言った。


「んだよ、勇の事なら話さねぇぞ」


ギクリとした俺を見ると世亜はニヤニヤしながら


「図星かよ、アホじゃね?」


と言った。


(こいつ…)


カチン、ときたものの逆らえる相手ではないので

俺はどうにか怒りを抑えた。


「そんなケチケチしないでくださいよ~

言ったって減るもんじゃなし…」


俺がそんな事を言っていると

世亜がひとつ溜め息をついて口を開いた。


「あいつはなぁ…


かな~り重いもん背負ってるぜ。

聞いたら後悔する程のな…」


「…後悔?」


「だから、聞かない方がいいぜ。

勇も思い出したくねぇだろうしな」


意味深いセリフを残して世亜は歩いて行った。


「…」


俺がポカーンとしていると

ケータイが鳴った。


勇からだった。


「もしもし、勇か?」


『はい、勇です。

唐御様、ちょっとした事件が起きましたので

至急駐車場までお越しこださい。』


「あ、あぁ、解った」


電話はいつも通りの勇だった。

冷静な声だった。


あいつに…何があったって言うんだ…?



そんな事を考えながら俺は駐車場へ向かった。




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