純粋な程、恐くなる。
あれから1ヶ月が経った。
組の奴らも桃花に慣れて
桃花も環境に慣れてきた…
…つーか、俺には悩みがある。
それは…
部下A「桃花ちゃん、お菓子食べる?」
桃花「うん!」
部下B「桃花ちゃん、遊ぼうか!」
桃花「あそぶー!」
部下C「高いたかーい」
桃花「きゃはは!」
・・・上の会話を聞けば
少しは感じると思う…
組の奴らは桃花にメロメロだ…。
こうなると少しジェラシーを感じる俺。
持ち前の可愛い顔と声、
性格は純粋そのもの。
可愛い、と思わない奴がどこにいるだろう…
そして、1番桃花を気に入ってしまったのは…
「よっ、桃花。元気か?」
「あっ!世亜様!元気だよー!」
「そーかそーか、可愛いなぁ、桃花は」
そう、俺らの絶対的リーダー、…世亜だ。
桃花の可愛さはヤクザの親分までも
とりこにしてしまったらしい。
恐るべし、桃花…。
でも…見てて面白くない。
桃花を他の人にも愛されて欲しいけど
桃花が愛するのは俺一人でいい…
そんな事を思いながら桃花を見つめた。
すると世亜と喋っていた桃花が俺に気付き
走ってきた。
「パパー!」
世亜が「ちっ」と舌を鳴らす音が聞こえた。
俺は気付かない振りをして
しゃがみ込み桃花をギュッと抱きしめた。
「パパ、あのねー高い高いしてもらったのー」
笑顔でそう言った桃花を抱っこしながら
「知ってる、見てた」
と、言うと桃花は
「でもやっぱりパパの高い高いの方がいい」
きゃははと笑いながら俺の首元に腕を回した。
(可愛すぎるだろ、これ…)
すると、ポケットのケータイがブルブルと震えた。
どうやら勇かららしい。
片腕で桃花を抱っこしながら
電話に出た。
「どした?」
『こちら勇です。
今日は例の事を片付けるので夕方4時に
お迎えにあがります。』
「あぁ、分かった」
電話を切ると桃花はきょとんとした顔で
「勇兄ちゃん?」
と、尋ねてきた。
「あぁ。
桃花、パパ夕方からお仕事だから
ご飯は世亜様達と食べてな?」
「えー、パパ昨日も夜ごはん一緒じゃなかったよー」
不満そうな顔で桃花がぷくーっと
頬を膨らませた。
「しょーがないだろ、お仕事なんだから」
「はーい…」
渋々と返事をした桃花の頭を撫でてやった。
「桃花はいい子だなー」
そんな事を言いながら俺はこの人を殺した汚れた手で
綺麗な桃花の頭を撫でた。
桃花は何も知らない。
何も知ってはいけない。
ただ、この組の奴らはみんな思ってる。
『俺は、汚い』と…。
桃花に出会わなければそんな事
感じる事もなかった。
この子は嫌になる程純粋だ…
それが、たまに、怖くなる…。