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魔法の紙。


しばらく勇とかなんとかって奴の

後ろを歩いて行くと世亜の部屋には

勝らないものの大きな扉があった。



(…でか)


どうやらここが俺の部屋らしい。


勇とやらがポケットから

鍵を取り出して扉の鍵穴に

鍵を入れて回した。


ガチャン


と、音を立てて扉が開いた。


そこにはゴージャスな部屋が…。


「あんさ~」


俺は目の前の男に話し掛けた。


「なんでこんな作りな訳?」


「…まぁ、世亜様の趣味ですね」


男は冷静に答えた。


(少しは笑えよ…


愛嬌ねーの)



そこで俺はある記憶と現在の事で

違う事があるのに気付いた。


(そーいえば…

アメリカで奴に会った時、


母さん、裕太とかって…)


「なあ」


「何でしょう?」


「あいつの名前って、裕太じゃねぇの?」


「…」


俺が問い掛けると執事野郎は少し驚いた様な顔をして


「何故その名前を?」


と、逆に質問をした。


こいつも人間味あんじゃん(失礼)。


「いや…


昔アメリカで…」


それだけ答えると執事野郎は、

なるほどといったような顔になり


「世亜様は確かに昔、裕太様と呼ばれていました。


しかし、組を継いだ時に改名したのです。」


「ふ~ん、心機一転みたいな?」


俺がそう言うと、執事野郎(これからそう呼ぼう)は

少し哀しい眼になった。


「? どした?」


「いえ…、何でも。


それより、唐御様。


私は今後の貴方様の右腕に

世亜様に指名されましたので、


御用があれば、すぐ私をお呼びください」


「お…おう」


様付けで呼ばれ、少し戸惑う俺。


「それから…


唐御様の妹様の事ですが…」


「桃花の事か?


なぁ、ひとつ頼みがあんだけど」


「はい、何でしょうか?」


「桃花は、優華に面倒見てもらい「それは出来ません。」


言葉を遮られ、意見を否定され俺は怒り気味に


「あん?」


と、言った。


すると執事野郎はまたもや冷静に言った。


「桃花様の件については

水価様の元へと返す事になっております。」



…え?


ちょっと待て。


頭が、一時停止した。


「ちょ、ちょっと待て。」


「はい、」


「おかしいだろ、それ」


「何がでしょうか」


「何がってお前…


俺が今まで…


いや、おかしいだろ?」


駄目だ、頭が動かない。


「…。


桃花様を赤の他人に任せるつもりですか?」


「ちが…


優華は他人じゃ「事実上は他人です」


「桃花様も、本当の母親の元で

育つ方が幸せだということで

唐御様が契約書にサインをすれば

すぐにでも迎えが行くでしょう。」



…桃花の、幸せ…?


「…ざけんな、冗談も大概にしろ。」


やっと頭が動き始めた。


「冗談ではありません。


水価様の方にももう連絡がいっています。」


「そんな事になるなら…


契約書にサインなんかする訳ねーだろ?」


「・・・


3人揃って殺されますよ?」


「!!!」


俺は、執事野郎から目が離せなくなった。


ヤクザの目、だった。


冷血で、何人も人を殺めたような

恐ろしい眼だった…。


「・・・。」


俺が黙っていると、奴は目を変えた。

さっきまでの冷静な目だ。


「唐御様、あなたの気持ちも解りますが

これが桃花様の幸せなのです」


「幸せ…?」


「はい、何卒ご理解を。」


しあわせ…


桃花のしあわせ…



俺はぐっと拳を握って


「解った…」


そう言った…


「ありがとうございます



では…




契約書に、サインをお願い致します」



そう言って奴は、部屋の中央にあった

テーブルに紙とペンを置き、

俺が座るように椅子を引いた。


俺は、その椅子にストンと座り

ペンを持った。



(…このサインで、


優華も桃花も幸せになれるんだ…。


これは、魔法の紙だ…)


そして俺は…



ペンを紙に泳がせて



「小林 唐御」



と、書いた。



これで・・・

よかったんだよな。



執事野郎は書いた事を確認すると

紙とペンを取り上げた。


そして、


「何か御用がありましたら

これでお知らせください。」


と、言って携帯電話を置いて行った。



俺の部屋の扉が閉まった。





これで…



よかったんだ…。




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