真実
「さっき言った通り、
俺は唐御の父親。
まぁ、あんなガキなんて女と一緒に
捨ててさっさっと逃げたんだけどな。」
男はクックッと笑いながら
話を続けた。
「で、俺はその後
世でいうヤクザってのになった訳。
女も自分のガキも忘れて
その組のトップに立った翌年…
部下がやられたんだ。
“組長!
中坊にやられました!”
もちろんその部下は
俺の手でやってやったよ。
その中坊の名前聞いて
ビビったよ。
そのガキの名前は、小林唐御。」
「!?」
「なんつーの?
血ってやつか?
唐御は見事に俺の血を継いでくれたって訳だ。
その後、
俺はその街で一番力を持ったグループと
唐御を接触させて唐御を見張ってた。
あ、勘違いすんなよ?
親心でも何でもねぇ、
ただ、あいつが生きにくい世界を
作るのが目的だった。
それからの唐御の不良としての
成長は申し分なかった。
恐喝、スリ、レイプ、暴力...
だんだん、あいつの生きにくい世界が
出来上がっていった。」
ひとつ、またひとつと唐御の過去が
優華へ伝わっていった。
優華は、もう身動きが取れなかった。
「なのに、俺の作り上げていったものを
壊す奴が出てきた。」
男はすたすたと桃花に近づき、
そして、桃花の手首を引っ張った。
「それが、こいつ。」
「このガキが唐御の家に来たのも
調査済み。
何度も引き離そうとしたものの、
離れるどころかくっつくばかり。」
「…」
優華は、ただ黙って聞くことしか出来なかった。
その時、男は呟いた。
「…まぁ、ちょっとやりすぎたかな。
恵を車で轢いたのは悪かったかな」
優華は、男が言った事が一瞬理解出来なかった。
(?何を言ってるの?この人。
恵って、唐御君のお母さんと同じ…
……!?)
優華は解った。
解ってしまった…。
この男が、唐御を不幸に追いやった
本人だという事を…
優華は、今までの人生に感じた事のない
怒りを覚えた。
叫びたかった。
目の前にいる男に殴りかかりたかった。
でも、優華は力の差が解っていただけに
何も出来なかった。
唇を震わせて、耐える事しか出来なかった。
その事に気づいた男は、ニヤニヤしながら言った。
「そーんな怖い目で見るなって。
分かる分かる、俺が憎いんだろ?
まぁまぁ、落ち着けって。
話はまだ続いてんだって。
でもまぁ、お怒りのようだから
率直に済ませるわ。
さっき言った唐御の住みにくい環境を作るって話、
なんでかって、俺の住む世界に入れやすくする為。
うちの、組って世襲とかゆー
古いしきたりがあるって訳。
かと言って…
女はもう懲りたからな。
俺の血を継いだ息子は唐御一人…
その為に…
このガキは邪魔すぎる」
男は桃花の方をチラッと見た。
「今さら…
唐御にいい奴になられても困るんでね。」
そう言って男はポケットからナイフを出して
桃花の首に当てた。