過ぎ去ったもの。
男は、玄関で靴を脱ぐと
ドカドカと入ってきた。
そして、全ての部屋をぐるりと周り
最後にリビングに向かった。
そして、
リビングのソファに座り
テレビを見ていた桃花を見つけ
ニヤッと気味悪く笑った。
男は桃花に近づき桃花の肩を
叩こうとした・・・
「あのっ、
勝手に上がられちゃ困ります!」
その時、優華が玄関からリビングに向かい
少し大きな声で叫んだ。
くるりっと、振り返った男は満面の笑みで
「ねーちゃん、
俺、喉渇いてんだよね」
と、ドス黒いオーラを背負って言った。
優華は逆らえず急いでキッチンに走った。
それを確かめると男は桃花の横に
ドスッと腰を下ろした。
桃花は不思議そうな顔で男をジッと
見つめた。
男はそんな事気にしないでポケットから
タバコとライターを取り出し、火をつけた。
タバコの匂いが部屋に広がる。
「お・・・お茶をどうぞ。」
優華はテーブルの上にお茶を置いた。
しかし、男はお茶を飲む事なく
優華の手首をガシッと掴んだ。
「!!」
優華は一瞬動けなくなった。
「おじょーさん、
唐御の過去って知ってる?」
さっきとは、うってかわって
男はニコニコしていた。
優華はその笑みにゾッとした。
(なにこの人、恐い!
唐御君、助けて…)
それでも優華は、何か答えなければ
いけない雰囲気を察した。
「か…過去?」
優華がそう言うと男はニコニコした笑みを
ニヤッと変えて立ち上がった。
そして、ゆっくり部屋を歩きながら
喋りはじめた…。