雨の日。
手が震えた
自分を責めた
後悔を感じた
何で…
何で俺は…
俺は,後悔しながら桃花を見つめた。
すると
桃花の綺麗な瞳が見えた。
あぁ,綺麗だな…って…
「パパ!?」
起きてんじゃん!!
「も・・・もも・・・」
予想外の事にオロオロする俺。
そんな俺に桃花はヒマワリの様な笑顔で
抱きついてきた。
「パパ〜」
自然と腕が動いた。
桃花を抱き締めようと俺は腕を・・・
「・・・!!」
・・・記憶がフラッシュバックした。
3時間程前の出来事が俺の頭を駆け巡った。
「・・・パパ??」
背中に腕が来ない事に気付いた桃花が
心配そうに俺を見上げた。
「えっ?あ・・・」
俺は桃花の声で我に返った。
「・・・ごめん、桃花。
パパ、またお仕事行かなきゃ・・・」
嘘。
今日は早朝のバイトなんか入ってない。
桃花は「仕事」って言うと何でも我慢出来る子。
物分かりのいい子・・・
「・・・うん」
桃花は哀しい目で俺を見た後、
下を向いてそう言った。
・・・心が痛んだ。
俺は桃花からそっと離れた。
「じゃあ・・・
行って来るね」
桃花は何も言わず下を向いたまま
頷いただけだった。
俺はズキズキと痛む心の傷に堪えながら
部屋を出た。
バタン・・・
ドアが閉まった音がいつもより大きく聞こえた。
外はどんよりと曇っていて少し寒い風が吹いていた。
俺は行く宛も決まらないままフラフラと歩いた。
(もう・・・無理なんかな)
ただでさえ、白い目で見られる俺。
母親がいないから
不良だったから
高校生が子供を育ててるから
夜の仕事をしてるから..
もし・・・
もし俺が客と仕事以外の関係を持ったと
周りにばれたら・・・
考えたくもない
ふらふらふらふら..
ぽつ・・ぽつ・・・
・・・ザアアアアアア
雨が、降ってきた。
通り雨か?
俺はとりあえず雨宿りする場所を探した。
コンビニを見つけたものの
中には入りたくなかった。
今、多分すっげぇ情けねぇ顔してるから・・・
体の半分位しかない屋根の下にしゃがんだ。
何分経ったか・・・
俺の体は冷えきっていた。
・・・ふ、と雨の音が一瞬しなくなった。
「あの・・・
大丈夫ですか?」
・・・?
この声・・・
どこかで聞いた事がある?
俺は顔を上げて声の持ち主の顔を見た。
その瞬間、
俺も声の持ち主も目を疑った。
「・・・唐御君・・・!」
「優華・・・!?」
そこには、俺の初恋が傘を持って立っていた。
もう、2度と会えないだろうと思っていたのに・・・
「・・・こんな所でどうしたの?」
「何って・・・
見れば解るんじゃね?」
「・・・雨宿り?」
「ご名答」
「・・・風邪、ひくよ?」
「あぁ」
久しぶりに聞いた優華の声
・・・心地いい
「家まで送ろうか?」
優華は心配そうな顔で俺を見た。
あぁ、優華がいるんだ
ここにいるんだ
その事実が俺の心を温かくしてくれた。
「優華・・・」
俺は雨で濡れた服のまま
優華を抱きしめた。
会いたかった、
会いたかった、
会いたかった
「唐御君・・・」
優華もまた、俺を抱きしめてくれた。
俺は、はっと我に帰って優華から離れた。
優華はえっ?という顔をして
俺を見上げた。
そして、口を開いた。
「送るよ」
俺は軽く頷いた。
道の途中、何も言葉が出てこなかった。
話したい事はたくさん溜まってるのに・・・
何も話さないまま家に着いた。
「じゃぁ、私行くね」
その時、俺の手が勝手に優華の
華奢で白い腕を掴んでいた。
「・・・寄ってけよ」
「・・・うん・・・」
バタン・・・
玄関のドアが閉まった..。