宝物の守り方。
「パーパ!パパァ!」
桃花の・・・声が聞こえた。
「ん・・・」
俺は重い瞼を開けて現実に帰る。
視界がはっきりしてきた。
桃花の顔が見えてくると,
俺の腹に痛みが襲ってきた。
「・・・っ」
俺はさっきまでの事を思い出していた。
「・・・・。」
眉間に皺を寄せて考えていると
桃花の顔が目に映った。
「桃花・・・」
名前を呼んで桃花の方を見ると
桃花は“やっと気付いてくれた”オーラを出して
俺に飛びついて来た;;。
「うおわっ!」
ドターン!!!
部屋の照明が揺れたのが見えた。
「・・・も〜も〜か〜・・・」
俺は少し怒りながら桃花の名前を
伸ばした。
だが,桃花はそんな事に動じない。
「あい!」
と,大きな声でしっかり返事をした。
「・・・。」
その言葉に俺は呆れたように溜息を吐いた。
「おいで,桃花」
そして、笑顔で再度名前を呼んだ。
桃花は,首を傾げた。
その仕草が可愛くて可愛くて
腕が自然と動いた。
気が付くと桃花は俺の腕の中にいた。
桃花は,口元を緩ませて俺の背中に
小さい腕を回した。
幸せ しあわせ シアワセ?
こんなに幸せは身近にあるものだったんだ。
桃花に出会うまではも幸せはもっと遠くにあって
それを自分で掴みに行くものだと思ってた。
でも今、幸せはここにある。
確かな幸せは俺の腕の中にある。
そこらへんを歩いている奴は
この幸せを知っているだろうか?
そこらを歩いている人の幸せは
結局“金”なんじゃないだろうか?
ん?
金・・・?
その瞬間俺の顔は青ざめた。
俺は,立ち上がり引き出しを開けた。
「・・・・ねぇし」
さっきの事が現実であることを思い知らされる。
そして
途方に暮れる。
(明日からどうしろってんだ・・・)
俺は深く溜息を吐いて後ろを振り返った。
俺の小さな宝物はキョトンとした顔で
俺を見上げていた。
この宝物を守れるのは俺だけ・・・
守るには金がいる
金を手に入れるには働かなきゃいけない
働くと桃花を構う時間が減る
でも、働くしかない
文句言ってる場合じゃない
(・・・バイト増やすしかないよな・・・)
それは、
予想もしなかった事態で
でも、
明らかな現実だった。