君が僕の妹になった日。
家に帰ると桃香の泣く声。
そして、それを宥める母さんの声。
「よ〜し、よ〜し、どうしたのかな〜。桃香ちゃんは〜?」
なだらかな口調で母さんは同じ言葉を繰り返していた。
「・・・・・・・・・・・。」
俺は、そうっと自分の部屋に戻った。
しかし、母さんはドアの音を聞きながさなかったらしい。
「唐御、あんた昨日ご飯食べなかったのね?」
「・・・・それが何だよ。何か文句でもあるのかよ?」
「それはいいんだけど・・・桃香が昨日一晩中泣いてたらしくて目が真っ赤なのよ・・。」
「!!」
俺は目を見開いた。
(・・・・一晩中・・・・!?)
「あんた、桃香の泣き声聞こえなかったの!?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
俺は黙り込んでしまった。
・・・聞こえてた。
それでも、聞こえないふりをした。
「唐御、どうなの?それとも昨日は遊んできたの?」
(!!そうだ、その手があった。)
「そーだよ、昨日は遊んでたんだよ。あんなガキが泣いてたなんて知らねーよ。」
また、嘘を吐いた。
「そう・・・、じゃあ仕方ないけど・・・。唐御、今日は家にいるの?」
「・・・・・それが、なんだよ。」
「母さん仕事に行くから桃香を泣き止ませといてくれない?」
「!?はぁ!??何言ってんだよ、そんな事俺がするわけねぇだろ!!?」
俺は思いのままに言葉を発した。
「大丈夫よ、それに桃香今日だって一日中泣いてたのよ?もしかしたら、唐御と桃香昨日接触したんじゃないかって母さん思って・・・。」
そこまで言うと母さんは「あ!そうだわ!」と言って部屋から出て行った。
(俺が桃香をあやす・・・・・?)
本当はやってあげたかったのに・・・俺には出来るわけがないと心の中で決め付けた。
すると、泣き声が近づいてきた。
まさか・・・・
「ほーら、桃香。お兄ちゃんよー。」
マジで連れてきやがったぁ!!!!
「な・・・な・・・・・」
俺はどうにか言葉を出そうとした。
「!!!」
俺の部屋に桃香が来た瞬間、桃香は泣き止んだ。
「ほ、ほら、母さんの思った通りだわ。昨日桃香に何かしたでしょう、唐御!」
「し、して・・・・・「たぁ〜。」
俺が“してねぇ”という言葉を遮るように桃香がでしゃばる。
そして、俺のほうに小さな手を伸ばして俺を求めた。
「唐御、桃香はねもう色々なことがわかるのよ?
あっ、母さんもう行かなくっちゃ!!
唐御、桃香と遊んであげて!」
そう言うと母さんは俺の腕に桃香を無理やり抱かせて仕事へ行ってしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は呆然とした。
「んー。んー。」
桃香は俺のほうを見ながら小さい手を伸ばした。
「・・・・・・・・・桃香。」
「うー?」
「・・・昨日は、ゴメンな?」
俺は桃香に謝罪の言葉を告げた。
「・・・・。」
桃香は黙り込んだ。
「兄ちゃん、なんか怖くなって・・・桃香のこと無視しちまったんだ・・・。」
「・・・・・。」
「ごめんな。桃香・・・。」
そう言って俺は桃香の額にキスをした。
これ、俺の癖。
こうすると女は皆黙るから、いつの間にか癖になってた。
「うー・・。」
桃香は少し照れくさそうに俺から目線を反らした。
「・・・・・・・・・・ははっ。」
“桃香はね、もう色々なことがわかるのよ?”
そっか・・・・。
分かってたんだな、俺のこと・・・。
「桃香、」
「う?」
「桃香」
「た。」
「もーもーか。」
「たぁぃ。」
何度でも名前を呼んであげるよ、桃香。小林 桃香。
俺の可愛い妹。
昨日はゴメンな。
俺の所為でお前は一晩中泣いちまったんだよな?
桃香、次はお前をちゃんと泣き止ませるから。
「桃香、約束だからな。
もう、兄ちゃん見てみぬふりなんかしねぇよ?」
すると、桃香が笑った。
・・・・・・可愛い(笑)。
桃香と唐御がやっと本当の兄弟になってくれました。
これで話が進みます〜。
あ、この後も唐御の性格は変わらん予定です。
ただ、部活とかにはちゃんと出るいい子ちゃんにしてみようかな―なんて思ってます。