「桃香」
俺は赤ん坊を見た瞬間目を丸くした。
か・・・・
か・・・・・・
か・・・・・・・・
可愛い!!!!
やべぇ、今まで告られたどんな奴よりも可愛い・・・・。
くりくりの大きな目に、
形の整った綺麗な鼻と口。
それから小さい耳と手足。
あぁ、もう言い出せばきりが無い。
それほど可愛かったんだ。
桃香は俺を見てニコッと笑・・・・・わずに大泣きした。
あ、お前今、笑っただろ?
俺はどうしたらいいのか分からずに桃香を抱き上げた。
「ど、どうしたんだよ。桃香!桃香ちゃん!!ほら、泣くなって!な?兄ちゃんが傍にいるから・・・」
その言葉を言った時俺は怖くなった。
俺が俺でなくなる感じがしたから。
不良少年からいいお兄ちゃんになってしまうんじゃないかって・・・・。
今までの俺がどっかにいっちまうような気がしてならなかった。
プライドが、消える気がした・・・。
俺は桃香をベビーベットに置いて自分の部屋へと向かった。
バタン・・・・・。
「んぎゃぁ!!っぎゃぁー!!」
俺は自分の部屋で耳を塞いだ。
何も聞いてない!何も見てない!!何も感じてなんか無かった!!!
桃香が泣いているのに俺は桃香を無視した。
自分のプライドの為に・・・!!
泣いてる赤ん坊を無視したんだ。
・・・・・・・・畜生!!!!
心の中で俺は呟いた。
なんで、なんで・・・・!!
なんで、あんな赤ん坊を連れてきたんだ!!
――――そのまま一晩が過ぎた―――――――
桃香がどうなったか知らない。
桃香を見るのが怖くて怖くて朝飯も食わずに朝練に向かってしまったから。
朝練に出るのは久しぶりだった。
さっきも言ったしょ?
俺荒れてんだって。
だから、部員は皆目を丸くした。
「・・・小林、お前が朝練に来るなんてめずらしいな。」
キャプテンも驚いてた。
「まぁ〜、俺だってたまには来ますって。」
嘘だ、ホンとは逃げてきたんだ。
胸がズキンと痛くなった。
「・・・・・・・ちっ。」
俺は皆に気付かれないように舌打ちをした。
ッカキーン
カキ―ン!!!
景気のいい音が俺のバットから発される。
「もっと、いい球投げてくださいよ〜。先輩。」
俺は簡単に打てる球しか投げない先輩になだらかな口調で言った。
「・・・クソッ!!おい、小林。調子のんじゃねーぞ。」
そう言って先輩はバッターボックスにザッザッと音を立てて歩いてきた。
「お前なんか、野球以外じゃ何の能力も無いくせに!!」
先輩は俺の胸倉を掴んできた。
「お〜、怖い怖い。ヤルんスか?俺強いっスよ?」
こんな事ぐらい何回も経験してきた俺はそんな事ぐらいじゃビビらない。
「おい、そこ!!何やってる!!!」
キャプテンがそれを発見した。
「・・・・・ちっ。」
先輩は舌打ちをすると俺から手を離した。
「なんでもねぇよ。」
そう言ってマウンドに戻っていった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
“お前なんか、野球以外じゃなんの能力も無いくせに!!”
俺の脳裏にその言葉を残したまま・・・・。
今回は桃香を出しました。
桃香は、カッコいいお兄ちゃんがいる=妹も可愛い。の考え方で想像お願いします。