桃香のくまさん。
その後,桃香は元気になった。
あの時の事忘れたような顔してるけど,
時々夢にうなされてる。
母さんには正直に話したさ。
そう・・・としか言わなかった母さん・・・。
きっと,俺に気を使ってくれた。
なぁ,あんた等はどう思う?
やっぱり・・・俺の所為かな・・・。
そうだよな・・・どうせ俺に・・・
その時思い出した声。
“お前に子育てなんかできるわけねーだろ!!!”
胸がいてぇ・・・。
でも,桃香の胸の痛みの方がもっといてぇんだろうな・・・。
俺は心の行き場所を見失った。
俺は何処に行けばいい?
俺は何処に居ればいい?
俺は此処にいても・・・いいのか・・・?
そんな事ばかりが俺の頭の上を駆け巡る・・・。
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俺は次の日,もっともっと強くなろうと心に決めた。
桃香に傷一つ負わさないような強い兄になろうと・・・。
「桃香,くまさんは元気か?」
「くまたん・・・まんま。」
俺は軽く微笑んで,
「じゃぁ,桃香がお料理つくってあげたらどう?」
と,言ってあげた。
桃香は」「そっか!」という顔をして
急いでおままごとセットを取り出して,
くまの所に走っていった。
「くーまたん。」
え?さっきから桃香の言ってるの解読すんの面倒くせぇって??
・・・まぁ,がんばれや。(笑)
それから桃香はおもちゃの包丁で,野菜を切ったりした。
「はい,くまたん。」
桃香は熊野ぬいぐるみにお皿を渡した。
・・・と思ったら桃香がもう一つお皿を持って
俺の方にむかってくる。
「?」
「はい、パパ。」
「・・・・・・。」
「・・パパ?」
「あ,あぁ,ありがとー,美味しそうだなー。」
俺はそう言って桃香からお皿を受け取り,
桃香の頭をなでた。
桃香はくすぐったいような顔をして笑った。
その姿が愛らしくてしょうがなかった。
え?俺がさっき黙った理由?
いやさ,いつか桃香が俺以外の野郎に
飯作ってやんのかなー。なんて,思っただけ・・・。