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「水価 桃香」

次の日,母さんから電話が来た。


「もしもし?唐御?母さんねぇ,今ワシントンでパートしながら父さん探してるわ。え?何処に住んでるのかって?個人が経営してる喫茶店だから,そこに住み込みで働いてるの。フフ。」


母さんはそう言って笑った。元気?とか桃香はどう?とか本当に俺達の心配ばっかりで…。


「あ,そうだ!!唐御。あのね,貴方の名義で作った通帳があるからそれ,生活費に使って頂戴ね。えーとね,カラフルな引き出しの二段目にあるわ。」


俺は、母さんにサンキュと言って通帳を手に取った。

確かに俺の名義…。

俺は,子供を思う母親の気持ちに感動した。


そして,電話は切れた。


「……母さん。ありがとう」


俺は,もう聞こえない声をボソリと呟いた。


「さってと,買い物行くかな。桃香?桃香〜?」


俺は,桃香の名前を呼んだ。さぁさぁ,皆さん此処からがお立ち合い。



「う〜〜。」


桃香が返事をした。

そぅ,桃香は自分の名前が解るように&返事が出来るようになった。


すごくね!?

この子天才じゃね!!??

なんて言ったらまた水価にばっかじゃないのなんて言われちまうな,…チッ。  

 

そだ,通帳にはいくら・・・・。 

・・・え?何これ??マジ??? 

 

いっ・・・1千5百万円ーーーー!!!??? 

 

す,すげー,母さんってこんなに稼いでたんだ・・・。  

キャバ嬢って儲かんだな・・・。 

 

俺はその額に一瞬目を疑ったが,母さんの話術ならここまで稼ぐのも可能だと納得した。 

 

そんでもってお金下ろして買い物中。 

まだまだ,皆の視線は痛いけど・・・桃香が居ればへっちゃらへっちゃら♪ 


ばばあどもは「なんで,あの子が??」とか 

「変な光景。」とかってヒソヒソ話してる。

 

さっき,へっちゃらなんて言ったけど本当は心痛い。 

あの言葉だって・・・。 

 

“お前に子育てなんて出来る訳ねーだろ!!!” 

 

ズキン・・・・・・・・・・。 

 

いてぇなぁ・・・・畜生・・・。

 

「う〜?」 

 

俺はハッとした。 

 

「桃香?どした?」 

 

俺は桃香をベビーカーから抱え上げて背中を軽くポンポンと叩いてあげた。 

 

「う〜〜。」 


桃香の顔を見ると眉をハの字にしてじっと俺の方を見ている。 

 

(・・・心配してくれてんのかな・・・?) 

 

俺はまぁ、そんなもんだろと思い桃香に大丈夫だよと言ってあげた。 

すると,桃香は笑顔になった。 

 

俺は買い物をしにデパートへ向かった。 

そこで自分の夕食を買い,次に桃香のミルクとオムツを買いに薬局に行った。 

 

「えーと・・・のびのびミルクは・・「小林!?」 

 

「はい?」 

 

俺は急に名前を呼ばれ敬語で返事をして後ろを振り向いた。 

 

「・・・げ。水価・・・。」 

 

俺ははぁ・・・と大きなため息を吐いた。

 

「なに,そのため息(怒)」 

 

「・・こんな所に何しに来てんだよ?」

 

「私は、化粧水切れたから買いに・・・あんたは?」 

 

「桃香のミルクとオムツ・・・。」 


「あぁ,そう。おっかしいと思ったのよ。あんたがここに来る理由って言ったら 

ピアスの穴あけるやつ買いに来たしか考えられなかったわ(笑)」 

 

「・・・・・・・(怒)(怒)(怒)。」 

 

俺はムカついた。いや,マジで。 

確かに前まではここに来るのはそれを買いに来るだけだったが・・・。 

 

・・・今は・・・・。 

 

俺は桃香をチラッと見た。 

 

「つか,あんた耳にいくつ穴あけてんのよ?」 

 

由来が聞いてくる。 

 

「右に3つ。左に2つ。それがなんだよ?」 

 

「え?うそ。ちょっと見せて見せて!!」 

 

水価がおれの耳に掛かっている髪を指ですくった。 

 

「・・・・ぅわ,ほんとだ。1・2・3…3つ。」 

 

俺の耳にはしっかりと3つのピアスがつけてある。 

だって,やらねーと穴塞がるし。 

 

「・・・っ,もういいだろ!」 

 

俺は水価の指を自分の指でどけた。 

 

「あ,何よ。いいじゃない。ちょっとぐらい。 

 ね〜,桃香ちゃん。」 

 

水価が桃香に話し掛ける。 

 

すると,周りの奴らが「何あれ?若い夫婦?」とか言い出してきた。 

 

「・・・・。」 

 

なんっで俺がこいつと夫婦呼ばわりされなくちゃいけねぇんだ? 

・・・・・・うぜぇ。 

 

俺はそいつらを睨み付けてやった。 

 

そいつらは体をビクッと震わせてコソコソと逃げていった。 

 

(へん,ざまみろ。) 

 

「じゃ,桃香も腹空いてるだろうし、俺もう行くわ。」 

 

俺は水価にさよならを告げた。 

 

「あっ,待ってよ。私も行く!」 

 

「あ、そ。」 

 

俺は冷たく返事を返した。 

 

二人とも会計が済むと後は関係シャットダウン、と思いきや。 

 

「あんたの家,連れてってよ。」 

 

「はぁ??」 

 

「何が悲しくてお前を俺んちに連れてかなくちゃんならないんだよ。」 

 

俺はそう答えた。けれど水価は怯まない。 

 

「いいじゃなぃ。桃香ちゃんがどんな家に住んでるのか知りたいだけよ。」 

 

「マンションに住んでマース。じゃ。」 

 

俺はその場を立ち去ろうとした。・・・が、 

服の裾を引っ張られた。 

 

「・・・連れてってくれるわよね??」 

 

後ろを振り向くと水価は黒い笑みを浮かべていた。 

 

「は・・・・はい・・・・・。」 

 

俺はそう言わざるを得なかった。 

 

 

そして,水価を連れて俺ん家到着・・・・。 

のり気じゃねぇけど仕方ない。俺は負けた。・・・・迫力に。 

 

「うわっ,広〜いマンション!!」 

 

水価はそう言って驚いた。  

 

「まぁな。」 

 

「あんたのお父さんなにやってんの??」

 

「父さんは消息不明で,母さんがキャバ嬢やってる。」 

 

それを聞くと水価は 

 

「あんたもお父さんいないの・・・。」 

 

と,意味深な台詞を吐いた。 

まぁ,俺の知ったこっちゃーねぇけど。 

 

「へぇ〜,桃香ちゃんはこんな所に住んでるんでしゅね〜。」 

 

「う〜〜vv。」 

 

あ,桃香が可愛い。写真撮ろ。 

俺はカメラを取りに行った。

・・この時此処を離れなければ良かった。 

 

「桃香〜,写真撮るぞ〜。って,水価お前何やってんだよ!?」 

 

水価は俺の家にあるカラフルな引き出しの中身から紙を取り出しそれをじっと見つめていた。 

「人ん家のもん勝手に・・・水価?」

 

俺は水価がいつもと違う感じという事が解った。 

 

「なに見て・・・・。!!!!!」 

 

桃香の縁組届け・・・・!! 

 

「返せっ!!!!」 

 

俺は誰にも見られたくなかった紙を水価から取り戻した。 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・。」」 

 

二人とも沈黙が続いた。 

すると由来が口を静かに開けた。 

 

「・・・・その子の名前桃香よね・・・?」 

 

「?」

 

「桃香よね・・・?」 

 

俺は只ならぬ雰囲気に俺は答えるしかなかった。 

 

「そ、そうだよ。桃香だよ。何を今更・・・。」 

 

「桃香ちゃん・・・養女だったんだ・・・。」 

 

俺はその言葉に目線を下に落とす。 

 

「・・・・・・・・・・・。」 

 

「・・・あのさ、」 

 

「あ?な、何だよ。」 

 

「桃香ちゃんの此処に来るまでの苗字、知ってた?」 

 

「し、知らねぇけど・・・。」 

 

「・・・・・・・・・・・。」 

 

水価はしばらく黙ると俺に縁組届けを見せた。

俺は前の苗字が載っている所を見た。 

 

そこには・・・ 

 

「!!!!!!!!!!」 


俺は驚きを隠せずに目を丸くした。 

 

「・・・・水価・・・・・桃香・・・・・!?」 

 

そう,そこに書かれていた苗字は“水価”。 

 

「うちのお姉ちゃん。ちょうど6ヶ月前に子供産んだの。 

でも…お姉ちゃん大学生で…彼氏は子供産んだら逃げちゃって・・・。」 

 

「・・・・・・・・・・・。」 

 

桃香は・・・今・・・6ヶ月・・・。  

 

次々と重なっていく事実に俺は目を丸くしたまま・・・。 

 

「それで,親は反対でお姉ちゃんを殴って無理やり孤児院に入れさせたの・・・。」 

 

「・・・・・・・・・・・・・・。」 

 

桃香は,母さんが孤児院から・・・・・。

 

「ねぇ,桃香ちゃんもしかしたら私のお姉ちゃんの・・・「黙れ!!!!」 

 

俺は認めたくない事実を否定した。 

 

「ちょっと・・・今の話聞いてたでしょ!?桃香ちゃんは私の「うるさい!!!帰れ!!!」 

俺は叫んだ。怒鳴った。怒った。 

 

桃香は俺の妹だ!!お前の姉ちゃんの子供なわけない!!! 

 

そう叫んで俺は水価をドアの外へ押し出した。 

 

「ちょっと、ねぇ!ちょ・・バタン!!!! 

 

「はぁはぁはぁ・・・・。」 

 

俺は鍵を掛けると自分の部屋に急いで戻った。 

 

そして・・・事の整理をしようとした。 

でも頭がこんがらがってまともに物を考えることが出来ない。 

 

 

一体・・・・・・桃香は・・・・・・・・・・。

 


 

 




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