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第4章:太陽の帝国の涙 第1節:黄金の都の影、総督バルデスの圧政

本日2本投稿いたします。まずは1本目。

 南米大陸――インカ帝国。


 かつて「黄金の都」と謳われたその地は、今や見る影もなく荒廃していた。


「……ひでぇ有様だな」  


 町に潜入した光圀は、深く編みがさを被りながら低く呟いた。


 立ち並ぶ石造りの見事な建造物は崩れかけ、通りには活気がない。

 代わりに響いているのは、重い石を運ぶ原住民たちの呻き声と、彼らを打つスペイン兵の鞭の音だった。


「歩け! この怠け者どもめ!」  


 ピシィッ! と生々しい音が響く。


 黄金の採掘や遺跡の破壊作業に駆り出された人々は、骨と皮だけのように痩せ細り、絶望の目をしていた。


「ああっ、やめて! それは母の形見なんです!」


 広場の片隅で、幼い少女が泣き叫んでいた。


 バルデス提督の部下である甲冑姿の兵士が、少女の首から無理やり黄金の装飾品を引き千切ろうとしている。


「うるさいガキだ! 異端者の持ち物はすべて国王陛下――いや、バルデス提督のものだ!」


 兵士が少女を蹴り飛ばそうと足を上げた、その時。


 シュッ!


 風を切る音と共に、小さな石礫いしつぶてが兵士の膝裏に正確に命中した。


「痛っ!? なんだ!?」


 兵士が体勢を崩した隙に、すかさずもう一つの石が飛んできて、彼の兜をカーン! と小気味よく叩いた。


「……おっと、手が滑っちまった」


 光圀が、お手玉のように石を弄びながら冷たく笑っていた。


「胸糞の悪い光景だな。お前らの国じゃ、子供からおもちゃをふんだくるのが『騎士道』ってやつなのか?」


「き、貴様ら何者だ! 東洋のサルの分際で!」


 兵士がマスケット銃を構えようとするが、それより早く、助さんと格さんが左右から無言の圧を放ちながら一歩前に出る。


 そのただならぬ殺気に、兵士は「ヒッ」と短い悲鳴を上げ、装飾品を放り出して逃げていった。


「……ありがとう、お兄ちゃんたち」


 少女が装飾品を拾い集め、涙ぐみながら礼を言う。


 光圀はしゃがみ込み、ポンと少女の頭を撫でた。


「気にするな。……だが、早く隠れてな。これから少し、町が騒がしくなるからよ」


 立ち上がった光圀の目は、静かな、しかし確かな怒りに燃えていた。


「なあ、マリア」


「ああ」


 編みがさを取ったマリアは、蒼い瞳に深い悲しみと怒りを宿していた。


「バルデス……。噂以上だ。奴は騎士の風上にも置けない。総督という立場を悪用した、ただの強盗殺人鬼だ」


 マリアは私掠船船長としての、そして「監察官」としての正装――深紅の軍服の襟を正した。


「私は、奴の罪を暴く。……手伝ってくれるか、ミツ」


「愚問だな」


 光圀はニヤリと笑い、腰の刀を鯉口から少しだけ覗かせた。


「民を泣かす奴は許さねぇ。……派手に行くぞ、助、格!」

感想もお待ちしております! 「ここが良かった」「このキャラが好き」など、一言でもいただけると作者が小躍りして喜びます。

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