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第4節:野望と、海賊王の孤独

本日の2本目の投稿です。

 夕暮れ時。


 窓の外には、黄金色に染まる水平線が広がっていた。


「……ミツ」


 マリアが不意に尋ねた。


「お前は、国に帰ったらどうするつもりだ? やはり、謹慎して大人しく一生を終えるのか?」


 光圀はカップを置き、窓枠にひらりと腰掛けた。

 逆光の中で、彼はニカっと笑った。


「まさか。俺の野望はな……『世界中のねーちゃんをすべて俺のものにする』ことだ!」


「……は?」


 マリアが呆気にとられて口を開ける。


「き、貴様……この期に及んで何を……バカなのか?」


「冗談じゃねぇぞ」


 光圀は真面目な顔に戻り、海を指差した。


「肌の色、言葉、文化……世界には俺の知らねぇ『美しさ』が溢れてる。俺はそれを全部見て、知って、愛でたいんだ」


 彼の瞳には、純粋な知的好奇心の炎が燃えていた。


「俺の国(扶桑)は島国だ。外の世界を知らねぇまま放っておけば、いつか井の中の蛙になっちまう。……だから俺が、世界中の『楽しいこと』や『すげぇこと』を国に持ち帰ってやるんだよ」


 女遊びという言葉に隠した、多様性への肯定。

 そして、未知への飽くなき探究心。

 それは、いずれ国の未来を背負う者としての、彼なりの覚悟でもあった。


 マリアは胸が高鳴るのを抑えられなかった。


 (この男は……器がデカすぎる。私掠船の船長なんて肩書きが、ちっぽけに見えるほどに)


 彼女はフンと鼻を鳴らし、少し顔を赤らめてそっぽを向いた。


「……口だけは達者だな。なら、まずは目の前の『ねーちゃん』を落としてみることだな」


 光圀が目を見開く。

 そして、悪戯っぽく笑い返した。


「お? それは挑戦状か? 海賊王さんよ」


 視線が絡み合う。


 言葉はいらない。甘く、くすぐったい空気が部屋を満たす。


 二人の顔が近づき――


 ドンッ!!


 船が大きく揺れ、甲板から見張りの叫び声が響き渡った。


「総員配置ッ!! 前方に陸地! ……インカ帝国が見えたぞー!!」


 甘い時間は、唐突に終わりを告げた。


 光圀とマリアは弾かれたように顔を見合わせ、同時に立ち上がった。

 マリアの瞳から、先ほどまでの少女の色が消え、海賊船長の鋭い光が戻っていた。


「……着いたか。ここからが本番だ、ミツ」


「ああ。どんな悪党が待ってるか、楽しみだぜ」


 二人は前を見据える。


 水平線の向こう、巨大な大陸の影が、魔物のように口を開けて待っていた。


 太陽の帝国。

 そこは黄金と血の匂いが渦巻く、欲望の都。


 光圀はニヤリと笑い、腰の刀をポンと叩いた。 「さあ、上陸といくか!」

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