第3節:船長室のティータイム(という名のデート)
本日も2本投稿いたします。まずは1本目。
その頃、船長室。
質素だが清潔に整えられた部屋には、海図や航海日誌が積まれている。
光圀は毎日のようにここに入り浸っていた。
名目は「スペイン語の上達」と「世界情勢のレクチャー」。
実態は……まあ、デートである。
「……飲むか? 『カフェ』だ」
マリアが湯気の立つカップを差し出した。
中には泥のように黒い液体が入っている。
「新大陸の秘薬だ。眠気が飛ぶぞ」
光圀は興味津々でカップを受け取り、豪快に煽った。
「うぐっ……!? ぶっ!?」
噴き出しそうになるのを、気合で飲み込む。
「……にっが!! なんだこれ、泥水か!?」
「ふふっ、あははは!」
マリアが珍しく声を上げて笑った。
年相応の少女の笑顔だ。
「最初は皆そう言う。……ほら、砂糖とミルクを入れろ。こうすると化ける」
言われた通りに甘くして飲むと、濃厚な香りと苦味が絶妙に調和していた。
「……ほう。悪くねぇな。香りがいい」
「だろう? 私も最初は苦手だったが、今ではこれがないと落ち着かない」
二人はコーヒーを飲みながら、机に広げられた世界地図を覗き込んだ。
マリアが指差す先には、欧州の国々が複雑に絡み合っている。
「今の欧州は、宗教と交易の利権で火薬庫のようだ。……ただの陣取り合戦ではない。信仰と金が人の心を狂わせる」
「なるほどな……」
光圀は真剣な眼差しで地図を見つめた。
扶桑国では知ることのできない、世界のリアルな姿。
それを驚異的な吸収力で理解していく。
「信仰を守るための戦いが、いつの間にか金を奪うための戦いになる……か。人間ってのは、どこに行っても業が深いな」
マリアは、横顔で語る光圀をじっと見つめていた。
(この男は……やはり違う。ただの暴れん坊ではない。物事の本質を見抜く目を持っている)
その知性と器の大きさに、彼女はさらに惹かれていくのを感じていた。
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