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ツルギの剣【再編集版】  作者: 稲枝遊士
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第七十話 買食い




 練習も終わり、八人は揃って帰路につく。


 学校を出てすぐの場所にあるコンビニで買い食い。



「せっかくだ。


 今日は剣君の退院祝いとして、私が何でも一つ好きなものを買ってやろう」



 気前のいいことを言ってみせるラブ将軍。


「そらホンマか!?」



「ああ、無論だ。

 だが、あんまり高すぎるものは駄目だぞ?」



 これに喜び、一同コンビニの中へ。


 それぞれが菓子パンやアイス、飲み物などを好きに手に取っていく。



「ほら、全部この買い物カゴに入れておけ。

 私がまとめてレジに通す」



 言いながら、ラブ将軍は買い物カゴを差し出す。


 そそくさ、と真希が最初に物を入れて、全員が続く。



「先に出ているといい。


 大人数で店内に居座ると邪魔だからな」



 その言葉にも全員従った。


 コンビニの外でラブ将軍を待つ七人組。



「……よし、みんな見てみて~!

 面白いものが見れるよ~」



 不意に、ステラが声を上げる。


 ガラス越しに店内のラブ将軍を指差していた。

 向こうはステラの様子に気付いていない。



「一体何が始まるの?」



 剣が問いかけると、ステラは心底面白そうにしながら答える。



「ショーグンのカゴの中に、ミーがお酒を入れといたんだよ」


「お酒!?

 未成年は買っちゃ駄目だよ!」


「そうそう。


 そんなものを制服姿の女子がレジに持って行ったら、どうなるかな~って思って」



「なんや、おもろそうやないか!」



 真希がステラのいたずらに興味を示す。


 他の者達も同様だった。

 ラブ将軍がどんな目に遭うのか興味津々。


 ガラスに張り付くように集まり、ラブ将軍の様子を見守る。



「あ、店員さん気付いた!」



 日佳留がいち早く言う。


 レジの店員が、ビールの缶を手に取っていた。


 そしてラブ将軍とビールの缶を交互に見比べる。


 ラブ将軍はこれにまだ気付いていない。

 バッグの中の財布を探しているようだった。



 そして、店員がラブ将軍に声を掛ける。


 そこでようやく顔を上げ、ビールの缶に気づくラブ将軍。


 何が起こったのか分からず硬直。



「そりゃそうやろな。

 普通缶ビールがカゴに入っとるとは思わんわ」


「というか、ラブ将軍は僕達が何をカゴに入れたか確認しなかったのか」


「きっとわたくしたちを信頼して下さっているのですわ。

 素敵な方です」


「でもそこでミーに裏切られてるからね。

 ちょーうける~」



 悪いのはお前だ、と誰もがステラに向けて思った。


 が、悪びれもしない様子から考えると、言うだけ無駄だろう。


 ラブ将軍の観察を続行する。



「将軍殿、顔を真赤にして謝っているのである」


「むっちゃ恥ずかしいんやろな……見たことないぐらい慌てとるで」


「でもなんか、普段と雰囲気違って可愛いね、ラブ将軍」



 剣が言うと、一同が頷く。


 狼狽するラブ将軍を見るのは、誰もが初めてのことだった。



 やがてラブ将軍が出てくる。


 缶ビールはもちろん買わず、他のものだけをレジ袋で持っている。


 顔は依然恥ずかしさに赤く染まり、口は真一文字に結ばれている。



 口を開いての第一声は、犯人を探す怒りの言葉。



「……誰だ、缶ビールをカゴに入れた馬鹿者は!

 どこのどのステラだ!」


「さぁ、どこの誰でしょう~」



 分かりきった問い掛けをするラブ将軍と、わざとらしくとぼけるステラ。



「正直に言わんとしばき倒す。

 怪しいと思うステラから順にしばく。


 私が犯人でしたと名乗り上げるまでしばき続けてやる!」



「そんな、ミーは本当に無実だよショーグン!

 ちょっと手が滑っただけ!」


「やはり犯人はお前じゃないか!」


「え~、でもショーグンが何でもいいって言ったし」


「だからって缶ビールをカゴに入れるやつがあるか!


 尋常ではない辱めを受けたのだ。

 この罪は償ってもらおうぞ……」



「あの、ラブ将軍。


 ちなみにどんなこと言われたんですか?」



 剣は尋ねる。

 完全に興味本位の一言。


 だがラブ将軍は恥ずかしさを笑い話にして誤魔化したいのか、すぐに答える。



「高校生であることを確認された後、留年をしていないかを聞かれた。


 後は私がお前たちのパシリか、あるいはイジメを受けている可能性を暗に心配されてしまった……恥ずかしい……」



 目を閉じて思い返し、耳たぶまで真っ赤に染めるラブ将軍。



「とにかく、ステラには相応の罰を与える。


 明日の練習、覚悟しておけ」



「うっ」


 後先考えずに行動するとこうなる。

 いい例だ。


 ステラはため息を吐き、肩を落とした。



「もうこの話は終わりだ。

 お前達、自分の選んだものを手に取れ」



 ラブ将軍は言って、レジ袋を開いて構える。


 各々が中に手を突っ込み、商品は順に行き渡る。



 最後にステラも手を突っ込むが、何も入っていない。


「あの、ショーグン。

 ミーの分は?」


「缶ビールが入っているように見えるか?」


「いえ~、全く」


「だったら諦めろ。

 それか自分で買ってきたらどうだ」


「ぐぅ……くやしい」



 ラブ将軍の反撃は効果的だった。


 ステラは思わず声を漏らす。

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