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ツルギの剣【再編集版】  作者: 稲枝遊士
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第六十五話 和解




 授業の時間も、剣には新鮮に感じられた。


 二ヶ月の入院によるものもあるだろう。



 だがそれよりも、聖凰との戦いで全てにけじめがついたことが大きい。


 見るもの何もかも、新しく感じる。


 自分の感覚がどれだけ曇っていたのかを痛感する。



 そして、昼休み。


 剣は食堂に行かず、珍しく購買でパンを買った。


 そして立入禁止になっているはずの屋上に向かった。



 寝転がり、空を見上げる。


 弓の無念は晴れた。

 空の青に溶けて消えた。


 そして、その祈りを胸に宿して、剣は今を生きている。



「――弓、今はどう思ってるのかな」



 天国があるとすれば。


 剣は、そんな荒唐無稽な前提の上で呟く。



「あの時、確かにクリオジェニックショットには弓の闘気が宿ってた。


 でも、それは本当に死んだ瞬間の弓の思いじゃない。



 弓は、あの後苦しみ続けてから死んだんだよね。


 もしかしたら、その間は私のことを恨み続けたのかもしれない。


 結局、本当は私が自分の都合のいいように現実をねじ曲げて理解して……弓の生命の重みから、逃げているのかも」



「馬鹿なことを言いますのね」



 不意に、剣の耳に聞き慣れた声が飛び込む。


 驚いて声のする方へ顔を向ける。


 屋上の扉を開き立っているのは、日傘を差した金髪縦ロールの少女。



 間違いない、火群盾であった。


 ドレス姿ではなく、深水女子の制服を着ている。



「盾!? どうしてここに?


 それに、深水女子の制服なんか着て……」



「あら、聞いていませんでしたの?


 わたくし深水女子に転校してきました。


 アバドンにステラも一緒です。


 今のわたくしたちは聖凰ではなく、深水女子の野球部の一員ですのよ」



 盾に言われ、気づく。


 なるほど、真希や日佳留の言っていたことはこれか。



 サプライズ、あるいはおもろいこと。


 盾が聖凰から深水に来たとなれば驚くのも当然だ。



「でも、いいの?

 盾には盾の野球がある。


 聖凰の仲間を置いて、深水女子にきて大丈夫だったの?」



「侮らないで欲しいですわね。


 わたくしの野球は絶対防御、絶対勝利の野球。

 仲間に距離は関係ありませんわ。


 わたくしが背負い続ける限り、例え今後あの子達と戦うことになろうとも。


 変わらずわたくしの野球は覚悟無き人々を守り続けるのです」



 言いながら、盾は剣の傍らに寄ってくる。


 そして続けて語る。



「それに――もう聖凰にわたくしの居場所はありません。


 邪魔なだけですもの。

 危険なだけの異分子は去るのみです。


 そしてわたくしは、決闘に負けた。


 剣、貴女の野球はわたくしの野球の上を行ったのです」



「でも、試合は深水女子の負けで終わったんでしょ?」



「わたくしの戦いは四対三で終わりました。


 それに、点数など関係ありません。


 貴女の魔球にわたくしは負けた。

 先に倒れた。


 これを負けと呼ばぬのは恥ですわ」



 なるほど。

 剣は納得した。


 真希が剣に野球を続けられるといった理由。


 それは盾が認めたからだ。


 あの決闘で、負けたのは自分だと。

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