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ツルギの剣【再編集版】  作者: 稲枝遊士
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第六十一話 嘘吐き




 剣は再び、クリオジェニックショットを解き放った。


 青の刃が剣の身体を引き裂きながらも白球へと集まっていく。



 一方で、盾も斬燿の構え。

 炎が身を焦がしても、まだ力を高めていく。


 ストライクゾーンよりも遥かに巨大な大鎚を形成する闘気。


 だが、それでもまだ足りない。


 盾の掌は、金属バットの持つ熱と自身の放つ炎でボロボロだった。


 しかし、まだなお闘気を込め続ける。



 勝負の時。


 クリオジェニックショットと斬燿が衝突。

 弾ける闘気。


 強烈な力のあまり、ホームベースは巻き込まれ、無残に焼け焦げ、引き裂かれて消滅する。


 小さなクレーターのようなものが出来上がる。


 それでもなお、二つの力は競り合い続ける。



 クリオジェニックショットの加速にも、まだ斬燿は耐えた。


 勝たねばならない。

 盾の勝利への執念は、すでに正義の為では無くなっていた。


 元々あった理由など、脳裏から消し飛んでいた。


 ただ、勝ちたい。

 この魔球を打ってやりたい。


 一つ眼前の戦いで勝利を収めたい。


 いつの間にか、剣の姿勢に惹き付けられ、盾までも真っ白な思いで勝利を求めていた。



 その思いの力は――とても強い。


 クリオジェニックショットと釣り合うこと二十秒超。


 全ての闘気を放出し終わった。



 そこでようやく、クリオジェニックショットが打ち勝つ。


 だが、斬燿も負けては居ない。


 バットは弾き返されず、白球を掠った。



 軌道が若干ずれるクリオジェニックショットを、真希はしっかりと捕球。


 だが、闘気の激流を身体に上手く流すのが難しかった。


 一球目の時よりはマシなものの、腕と身体が傷を負う。



 三者三様の有り様だった。


 剣は俯き、肩で息をしていた。


 ユニフォームをズタズタに引き裂かれ、皮膚には切り傷が絶えない。



 盾もユニフォームの殆どの部分を焼け落としており、露出した皮膚には焼け焦げ腫れた部分が目立つ。



 真希の怪我は腕に集中しており、血が滴り、小さな貯まりを作るほどになっていた。


 また、ミットは削れてボロボロ。

 掌まで切り傷に塗れており、白球も真希の血色で染まっていた。



「次こそ、打ってみせますわ。


 この一打の結果如何で、聖凰と深水女子、どちらに流れが向くか決まるのではないかしら」



 盾は痛みに耐え、つらそうな表情を押し込め、真希に顔だけを向けて言った。



「なるほど……次が、勝負どころちゅうわけやな」



 真希は言いながら、腕の痛みに耐えつつ立ち上がる。


 剣に向けて、白球を投げ返す。



 だが――剣の腕が、上がらない。


 白球は剣の身体にぶつかり、ぼとり、と落下する。



「どうしたんや、剣」



 問いかけられて、ようやく剣は顔を上げる。


 痛みと苦しみを、無理に笑って隠そうとしている顔だった。



「ごめんね。


 痛くて……腕が、上がらないんだ」



 剣の告げる言葉は、絶望的な話だった。


 腕が上がらない。

 それは選手生命にも関わるような怪我にさえなりうる。



「んな、今になって、急にそんなよぉ!


 クリオジェニックショットはそんな負担のでかい球なんか!?」




「ごめんね真希。私、ずっと嘘吐いてた」




 真希に微笑みながら、剣は真実を告げる。



「山篭りの時からね。


 ずーっと、腕は痛かったんだよ。


 右腕だけは、怪我が治ってなかったんだ」



 目の前が真っ暗になる。


 真希は生まれて初めて、そんな感覚に陥った。



 あの修行の間、ずっと剣は腕の痛みを堪えていたというのだ。


 それも、真希が投げた木の棒や石で断続的に負傷を負いながら。

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