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ツルギの剣【再編集版】  作者: 稲枝遊士
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第四十九話 出塁




 ベンチでの長い話を終え、打席に立つ日佳留。



「何を話してらっしゃったのかしら。


 わたくしの炎城は無敵。

 小細工など無意味ですわよ」



 盾は不敵に宣言してみせる。


 だが、日佳留はもうその手には乗らない。



「無意味かどうか、試してみたほうがいいんじゃない?」


 ぴくり、と眉を動かす盾。



(まさか――魔球『炎城』の正体がバレたのかしら。


 いいえ、そう簡単にバレるものではありませんわ。


 まだ二回表。

 わずか五球しか投げていませんもの)



 リスクを計算する盾。


 それに、バレたとしても容易く攻略出来るものではない。

 炎城は一筋縄ではいかないのだ。



 自分の力を信頼し、盾の投球。

 炎城が日佳留へと迫る。


 日佳留はテイクバックし、ごく普通のスイングに入る。



(ふん、やはりハッタリでしたわね)


 盾は安堵した。


 だが、これが油断、隙となった。



 日佳留はそのまま、バットを振り切らなかった。


 なんとバットの柄頭の部分で白球を叩きつけたのだ。



「なっ……!?」


 慌てる盾。

 だが、もう遅い。


 普通にスイングするより早く、それも下方向に強く打ち付けられた球はホームベース正面でワンバウンド。


 慌てて盾は爆発を引き起こし、白球を自分の手元に飛ばす。



 しかし日佳留の縮地は送球よりも速い。


 盾が捕球した頃には、すでに一塁を走り抜けていた。

 内野安打である。



「くッ!

 まさかこんな方法で来るとは……」


「へへ~ん、どうだ!


 これがアタシたちの力だよ!」



 自慢気に言ってみせる日佳留。


 だが、この打ち方を思いついたのは剣の魔球解析のお陰だった。


 剣の語った言葉を思い返す。



『――まず、炎城はピッチャーにノーバウンドで打球を飛ばすことが前提の魔球だよ。


 そのためには爆発による運動量を、打球のパワーに合わせて繊細にコントロールする必要があるんだ。


 だから炎城を打った時の打球は同じ軌道にはならない。


 アドリブで、盾の判断でコントロールしてるんだ。


 しかも打球が実際に飛ぶ前の段階で判断しなきゃいけない。



 だから真希が打った時は、想像以上に真希の打球が強かったから、打球の浮き上がりを抑えるので精一杯だった。


 結果として弾丸ライナーになったんだ。



 そして私の時は、私の体勢が崩れて打球の威力が想像以上に弱くなった。


 だから、盾は初めて捕球の為に動いた。

 前進しなきゃノーバウンドに出来なかった』



 剣の解析は正しかった。


 故に、日佳留の不意を突く打法に判断が遅れ、爆発がワンバウンド後となった。



 こうして二死、ランナー一塁。


 打席には二番、ナイル。

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