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ツルギの剣【再編集版】  作者: 稲枝遊士
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第四十三話 怒気




「――お姉様はすぐに病院へ運び込まれましたが、まもなく亡くなりました。


 剣の放った魔球が肋骨を砕き、破片がいくつも心臓へ突き刺さっていたそうです。


 衝撃で周辺の太い血管も破裂していて、それでも超野球少女の生命力がすぐに死ぬことを許さず、その後一言も話さないまま、苦しみながら天に還りました」



 盾の話に、誰もが聞き入った。


 事実であった。

 剣は確かに弓を殺した。


 事故であっても、きっかけは剣の投げた魔球だった。


 勝利を求める剣の真っ直ぐな思いが、一人の少女の未来を奪ったのだ。



「わたくしは、あの日以来変わりました。


 あの日まで、わたくしは剣と同じく、戦いに生きる者だと自分を自負していましたわ。


 ですが、今は違う。


 戦うのは覚悟のある者だけでいい。

 自分と、自分の為に死ぬ覚悟をした者だけ。


 例え事故でも、自分の力が覚悟なき犠牲者を出さないように、わたくしは例え一人きりでも野球に勝つ。


 死に物狂いで己を鍛え、絶対防御、絶対勝利の孤立孤高野球を完成させたのです。



 剣、覚悟しなさい!」


 言って、盾は剣を指差す。


「貴女の野球、勝利を愛するだけの野球は要らぬ犠牲を生むのです!


 わたくしは貴女とは違う。


 あの頃の、幸せだった日々と同じ思いを、人々は感じなければならない。

 奪われてはならない。


 その為に、わたくしは孤独な勝利のみを愛するのですわ。


 わたくしの孤独孤高で勝利を追求する野球は、貴女の怠惰で強欲な野球を必ず打ち滅ぼしますッ!」



 宣言して、盾はベンチから離れ、バッターボックスへと帰っていく。



 深水女子の五人全員が暗い表情を浮かべていた。


 それぞれが、様々な思いを抱いていた。



「……こんなの、ひどいよ」


 声を漏らしたのは日佳留だった。


「こんなの、誰も悪くない。


 悲しいだけだよ……剣も、盾さんも。


 弓さんだって。


 ただ酷い思いをしただけじゃん」



 だが、剣はこの言葉に首を横へ振る。


「二つ、悪いことがあるよ。


 私だけが、人を殺した人間。

 それと、私は罪も償えずに野球をやろうとする身勝手な人間。


 これだけは絶対悪だよ。


 不幸でも事故でも関係ない。


 言い訳なんかしたって、他人からすれば覆らない事実なんだ」



「でも、剣サンは殺したかったわけじゃないだろう!?」


 ナイルが声を上げる。



「僕のママが生まれた国は、マフィアで溢れる社会だ。


 自分の為に人を殺す人が沢山いた。


 けれど、剣サンはあれとは全然違う。


 弓サンを殺したいなんて思ってなかったはずだ!」



「しかし、剣君は罪を背負うことを望むさ。


 自分の右手が奪い亡くしたものを忘れた時、それこそ剣君は本当の邪悪となる」



 ラブ将軍が、剣の心境を代弁するかのように言う。


 正に言うとおりだった。


 剣は頷き、ラブ将軍の発現に同意する。




「……ふざけんなよ」



 真希の声。


 肩を震わせ、怒りに満ちた形相。


 拳は見て痛いほどに強く握られている。


 何事か、と慌てた剣が問う。



「どうしたの、真希?」



「ウチは怒っとる。


 ホンマにこれほど、生まれてこの方怒り狂ったことは無いぐらいに怒っとるんや」



「誰のこと?

 やっぱり私に怒ってる?


 私の魔球が真希と同じポジション、キャッチャーを殺した汚い魔球だから……」



「ちゃうわアホ!


 冗談でも二度とそんなこと言うなッ!」



 怒声を上げる真希。


 感情のあまり、だぁん、とベンチを殴りつける。

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