第三十三話 合流
「剣君、遅いぞッ!
このような遅刻、次はあると思うなよ!」
「はい。
ありがとうございます、ラブ将軍!」
叱咤しながらも、ラブ将軍の顔には笑みが浮かんでいた。
そして、真希も自信満々の表情で笑っている。
「まあ、任せときや将軍。
ウチら秘密の特訓してきたんや。
あんなへなちょこ二軍共なんざ相手にもならへんで!」
「ふん、それは楽しみだ。
虚言癖を疑われぬよう精々頑張るんだな!」
言い合い、ハイタッチを交わすラブ将軍と真希。
一方で、剣はナイルと向かい合っていた。
両者ともに真剣な表情。
「――剣サン。
僕は詳しいことを知らない。
君が誰かを殺したと言うのなら、それを擁護するつもりは全く無い。
けれどね、この勝負は君と一緒に戦うよ」
「私は人殺しです。
それでも、戦ってくれますか?」
「人殺しでも、どんな犯罪者でも同じさ。
同じ戦いに身を投じる人同士なら、誰でもチームメイトだと思う。
少なくとも、この野球場の中では」
ナイルの言葉に癒される剣。
これでいいのだ。
この決闘の中だけでも十分すぎる。
仲間として戦ってくれるだけでも、今は有り難い。
二人の会話を、不安げに眺める日佳留。
剣の方を見ようともしない。
妙に思った剣から日佳留へ声を掛ける。
「日佳留、どうしたの?」
「うん……」
ばつが悪そうに頷く日佳留。
「正直、アタシはショックで剣のことが信じられない」
日佳留の言葉を受けても、剣は嫌な顔一つしない。
どころか、笑って応える。
「それが普通だからね。
人殺しと一緒なんて、友達だなんて最悪。
楽しかった思い出にも全部影が差す。
平気でいてくれ、なんて言えないよ。
大丈夫。日佳留は私のことなんて、見下していい。
私なんか、人殺しの外道でいいんだよ」
剣に言われ、日佳留は迷う。
良いと言われれば疑ってしまう。
本当だろうか。
剣は無理をしていないだろうか。
本当に、外道扱いを望んでいるのだろうか。
気付いてしまった。
日佳留は、自分に迷う余地など無かったと。
剣は我慢しているのだ。
日佳留の心が少しでも楽になるように。
人殺しを受け入れる、なんて道を選ばせないために。
自ら外道を名乗ったのだ。
それに気付いて、剣を外道と呼ぶ気は毛頭なかった。
日佳留は剣を愛しているのだから。
剣の道に沿い生きると決めたのだから。
「……ううん、アタシは、そんな呼び方しない。
剣は剣だよ。
アタシたちのやることが正しいかどうか分からない。
でも、この戦いの後に決まるんだと思う。
道を間違えていそうで怖いけど。
自分で決めたんだから、貫き通すよ。
この勝負は、剣のチームメイトとして戦う」
「そっか。
ありがと、日佳留」
剣は言って、日佳留に微笑みかけた。
大切な親友。
本心を言えば、絶対に外道と呼ばれたくない相手。
深水女子へ転校してきて以来の友人だからこそ、離し難い気持ちもあった。
二人は互いを抱きしめあい、友情を確認する。
抱擁も終わると、剣は全員に視線を向けていった。
真希、ラブ将軍、ナイル、日佳留。
そして最後に――三塁側ベンチへと。
はっきりと見えない盾は、何を思ってそこに立つのだろうか。
どんな顔で決闘に臨むのだろうか。
「――さあ、試合開始だね!」
自分のチームメイトへと向き直り、呼び掛けた。




