第8話 思ったより儲かった件
先に進んでいくと、またスライムを発見した。
俺はまたスライムゼリーを狙う。
「スチール!」
防御外皮1をスチールしました。
失敗か!
「スチール!」
知力1をスチールしました。
「スチール!」
速さ1をスチールしました。
「くそ! スチール!」
HP1をスチールしました。
なかなか上手くいかないな。
「スチール!」
スライムの胃袋をスチールしました。
「スチール!」
MP1をスチールしました。
「スチール!」
HP1をスチールしました。
スライムがどろりと広がり、水たまりになった。
あれ! 死んじゃった?
見れば、煙が晴れると魔核だけが残っている。
クッソー! スライムゼリーとれなかったかー!
…………でも、スチールを繰り返して当てているとスライムって死んじゃうのね?
竹槍いらねーじゃん。
よし! 死ぬまでスチール当ててれば、そのうち習熟度が増して狙った物が盗めるようになるかも。
次のスライムを探す。
「スチール!」
防御外皮1をスチールしました。
失敗か!
「スチール!」
スライムゼリーをスチールしました。
やった。今度は二回目でゲットしたぜ!
じゃあ死んでくれ。
「スチール!」
速さ1をスチールしました。
「くそ! スチール!」
HP1をスチールしました。
なかなか上手くいかないな。
「スチール!」
スライムの胃袋をスチールしました。
なかなか死なねーなあ?
「スチール!」
MP1をスチールしました。
「スチール!」
HP1をスチールしました。
あ! HPをスチールすると死ぬんだな。
こいつらHP2なんだ。
……てことはスチールで攻撃してるってことにもなるんだな。
ふーん。
その後も俺は、スライムにスチールし続けた。そしてスライムゼリー10個を手に入れるまで13匹のスライムを倒していた。
「よし、これで6千3百円。ちょっと持ちきれなくなるので一回買い取りしてもらおう」
俺はスライムゼリーを抱えてクロークに戻った。
「すみませーん! これ買い取りお願いしまーす」
「はーい! あらー。こんなにスライムゼリーを手に入れるなんて、あなた、すごく運が良いのね」
けっこうフレンドリーなお姉さんだな。
「ありがとうございます。ビギナーズラックってやつですかね」
俺は苦笑いをして返す。
クロークのお姉さんがスライムゼリー10個とスライムの魔石13個を預かり、預かり証を書いて渡す。
俺はそれを受け取りもう一度ダンジョンに戻っていった。
俺は、初めてということもあって、夢中でスチールを繰り返した。
「スチール!」
HP1をスチールしました。
レベルが2に上がりました。
スライムを15匹倒したところでレベルアップしたようだ。俺はステータスを確認する。
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル2
職業 怪盗紳士
HP 9(+30)
MP 0(+10)
力 9
防御外皮 9(+11)
知力 8(+7)
速さ 9(+8)
器用さ 13
スキル スチール(ユニーク)レベル2
スライムの胃袋(9)レベル1
消化液(5)レベル1
魔法 なし
装備 竹槍
アイテム スライムゼリー(2個)
……あれ?
スキルが増えてるな。
スライムの胃袋ってなんか収納みたいだな。
俺は竹槍をスライムの胃袋に入れてみた。
右の掌に穴が開き竹槍を吸い込む。
入っちゃったよ? どこに入ったのかな?
出そうと思うと掌に穴が開き、竹槍が飛び出した。
おっとっと! あわてて掴む。
消化液は?
右手をかざして「消化液」と念じると消化液がピュッと飛び出しかかった岩の表面がじゅるりと溶けた。
ひえー! 泡立ってる。
俺化け物になっちゃったよ。
こんなスキル、人前では見せられねーな。
封印だな! 封印。
気を取り直してまたスライムを狩り始めた。
またスライムゼリーが10個になったので守衛さんのところに向かう。
この間スライムは14匹倒している。
クロークのお姉さんに魔石14個とゼリー10個を渡して預かり証をもらう。
竹槍も返した。
一階の受付に行き、二枚の預かり証を換金してもらう。
1万2千7百円になった。
「へー。結構いい金になったな。腹も減ったし二階のレストランスペースで、何か食べて帰ろうかな」
俺は、朝も昼も食っていない。
いつものことだけどな。
もう時計は午後5時を指している。
腹も減るっていうものだ。
俺は、ほくほく顔で二階に上がった。
一万円も持ってたら、外食したっていいよね。
帰りはバスを使おーっと。
メニューを見る。
うーん。やっぱり肉だな。
和風ハンバーグ定食を注文する。
大根おろしにポン酢はかかったあっさりテイストのハンバーグだ。
付け合わせはポテトフライと人参の甘煮。
ポテトフライは大きめだ。
すきっ腹には何でも美味いぜ!
今日は家で寝れるかなあ…………なんて考える。
昨日来てたんだから、今日は来ていないだろう。
これを食ったら急いで帰ろーっと。
でも探索者って儲かるもんだなあ。
半日働いて1万2千円?
俺のスキルって当たりじゃね?
俺は、ハンバーグを食い終えると席を立つ。
そして階段を降りて池袋西探索者ビルを後にした。
近くのバス停に行きバスの運行表を確認する。
路線図を確認すると石神公園に停まるルートのバスがあった。
よかった、バスが使えるじゃん。
走れば15分だけどね。
10分ほど待つとバスが来た。俺は携帯を持たされていないし、交通系のカードなどにも入っていない。
払いは、現金一択だ。
乗り込んですぐ料金を確かめると二百十円だ。
小銭を確かめる。
大丈夫、ピッタリある。
後で、Suicaを作ろうかな……なんて思いながら吊り革を握った。
石神公園まで10分ほどでついた。
バスから降りると西の空が赤かった。
俺は急いで家に帰った。
今日の出来事をかーちゃんに報告したい。
ダンジョンに入って、一万二千円も稼いだと自慢したい。
俺には、自慢をできる友達もいないし、自慢なんかできるのはかーちゃんくらいだ。
あ! 道造さん……には自慢できないよな。
でも報告くらいはした方がいいかも。
わざわざ報告に行くほどの仲ではないが、偶然あったら報告と感謝の気持ちを伝えるのはした方が良いと思った。
家の玄関を開けると、かーちゃんは、テレビを見ていた。
訳のわからないドラマだ。
男はいないのかな?
「かーちゃん、今日は男来ないの?」
「今日は家にいても良いよ」
どうやら男は来ないらしい。
かーちゃんととーちゃんは、離婚してはいない。
だが、とーちゃんは、務所から出てもすぐまた入っちまうので家で見たことなんて数回しかない。
多分、もう家に帰ってくることなんか無いんじゃないかな。
かーちゃんが新しい男を作っても仕方がない……と俺は思っている。
というか、深く考えないようにしている。
良いも悪いもない。
俺がどうこう言ってどうにかなるものじゃないし、かーちゃんがそれで幸せならそれで良いんだ。
「かーちゃん。俺、探索者になってきた」
「へーそうかい? あれ、危ないんじゃないのかい?」
「ううん。十五歳になるまで第一階層にしか入れないんだって。だから弱いスライムしか出会わないんだよ。それでも、今日一日で一万二千円も稼げたんだ」
「そいつはすごいね。じゃあ、あんた、受験しなくて大丈夫だね?」
かーちゃんは、テレビから目を離さず気のない言葉をかけてくる。
「うん。俺、高校には行きたくないから受験はしないよ。そもそも勉強できないし」
「すまないねえ。高校に上げてやるお金がなくて。でも探索者で稼いだ金で、高校行っても良いんだよ」
「別に、俺、友達いらねーし、高校行ってもなんも良いことねーんだよ。せっかく稼いだ金は無駄に使いたくねーわ」
「そりゃそーだね」
かーちゃんはテレビを見ながら煎餅をかじった。
この時点でのステータス
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル2
職業 怪盗紳士
HP 9(+58)
MP 0(+19)
力 9
防御外皮 9(+23)
知力 8(+15)
速さ 9(+16)
器用さ 13
スキル スチール(ユニーク)レベル2
スライムの胃袋(15)レベル1
消化液(13)レベル1
魔法 なし
装備 なし
アイテム なし




