第6話 凄い凄い
三階に上ると、そこはまるでホームセンターか、地方物産展のように商品が陳列されていた。
防具を扱う一画、武器を扱う一画、薬品などを扱う一画、書籍類を扱う一画、キャンプ用具のようなものを扱う一画、その他小物を扱う一画などなど。
「うわー。すげーなここ」
初めて見る光景に俺は思わず声を漏らす。
特に目を引くのは、武器を扱った一画だ。
様々な形のナイフや刀、剣、槍、薙刀、斧、槌、弓矢、銃、そのほか訳の分からない形の武器が並んでいる。
その値段を見て目玉が飛び出した。
数十万、数百万の武器がずらりと並んでいた。
「たた、たっけー! マジかよ」
銃も様々で、拳銃からライフル、マシンガン、その弾倉だけでも滅茶苦茶高い。
「弾代出るのかな? あ、そっか。弾代出る魔物以外には使えないってことか……」
スライムなんかに拳銃を使ったら玉代も出ないだろう。
「しゅ、手榴弾まで売ってるのかよ!」
......何でもありだな?
銃刀法はどうなってるんだ?
まあたぶん、この建物から持ち出すことは、禁じられてるんだろうな。
それにしても、使う所を考えないと、天井が崩れたりしたら大変だな。
そんなことを考えながら、ふらふらと見て回る。
金のない俺には、絶対買うことができないものばかりだ。
そもそも電車代すら節約しているのに、最低ランクの武器、防具だって買える訳がない。
何か掘り出し物でもないだろうか?
手持ちの金は3千円少々。
昨日道造さんに釣銭をもらっておけばよかったなと後悔する。
武器ゾーンの片隅に処分品と銘をうった一画を発見した。
期待はせずに品物をチェックする。
ゴブリンの棍棒千円?
……ちょっと太い木の枝じゃん?
石神公園で探せば落ちてるんじゃね?
錆びた包丁?
……千円だけどホームセンターで千5百円出せば錆びてないのが買えそうじゃん。
竹の槍、千円?
……これで何か倒せるのかな? 単なる竹の棒じゃん。
処分品だけあって、ろくなものがない。
「ダンジョンでドロップした品物みたいだけど、何か特別な力が宿ってたり? ……しないよね」
よくあるラノベなんかだと、ぼろぼろの剣がしゃべったり、見かけによらずメッチャ凄い性能だったり、成長して変形したり……なんてことがあるけれど。
……そんなことはなさそうだな。
俺は、ホームセンターで、適当な武器を手に入れようと思いながら先に進んだ。
次は衣料品コーナーだ。男性用と女性用のスペースは分かれており、俺は当然男性用の方に進む。
男性用と女性用のスペースは女性用の方が広い。
……探索者の数は、男の方が多いんじゃないのかな?
でも最近の女性はこういう危険な分野にもかなりの数が進出しているのかも?
ファッションの関係で、女性用の方が種類が多くなるというのは仕方がないのかもしれないが、それにしても倍近いスペースが女性物ゾーンなのは差別されている様な気になってしまう。
一通り見て回ったので、二階に降りる。
二階はレストランスペースだ。
昼間から酒を飲んでる探索者がちらほら。
あまり柄の良い連中ではなさそうだ。
ここはとっととスルーだな。
先輩探索者に絡まれる、お決まりの展開は避けたいものだ。
俺は一階に戻って受付を見る。
まだ昼頃だし、学校はどうしたのって怪しまれちゃうかな?
受付に行こうか、何処かで時間を潰そうか考える。
「まあ、いいか! 学校はどうしたのかと聞かれたら、テストで早終わりだったとでも言っておこう」
俺は意を決して受付に向かった。
一番左端の受付窓口を覗くととても綺麗なお姉さんがいた。
俺は、この人なら怒られても怖くないかなと思った。
「あの……俺探索者になりたくて来たんですけど?」
「あら! 新規登録の方ですね? 年齢はおいくつですか?」
「十五歳になるところです」
なるところってことは、まだなっていないってこと。
「十四歳の中学3年生ですね?」
「はい。そうなりますね」
そうなりますねってなんだよ。自分で言ってて変だと思う。
「探索者になるための年齢制限はありませんが、低年齢の方には活動制限が設けられています。十五歳未満の方は第一階層のみ、十五歳以上は探索者ランクにより活動できる階層が制限されます」
「じゃ、じゃあ、探索者になるのはOKなんですね?」
やったぜ!
「そうですね。若くから探索者になられる方は、学校に通うのが嫌いな方が多いですから、そこは問題ありません。ただ、学校は卒業しておいた方が良いですよ」
「そ、そ、それは勿論分かっています」
……クッ! 学校に通うのが嫌いって分かってる。
しかも、学校をサボって来ているのは、バレバレのようだな。
……それでもここでは、そんなこと、気にされないようだね。
よかったわー。
「それでは探索者登録を致しますので、こちらをご記入下さい」
俺は申込書を受け取り記入する。名前、住所、電話番号、年齢、生年月日、血液型、誓約書に同意して記入は終わりっと……。
「はい! これでいいですか?」
「はい。それでは今から簡単なレクチャーを受けてもらいますので、呼ばれるまでその辺でお待ち下さい」
壁際の長椅子を指さされる。
「ありがとうございます」
踵を返して壁際の長椅子に腰掛けた。
へへへ。ここまで順調じゃないか? もっと変な目で見られると思っていたけど、俺みたいなやつ、結構いるみたいだな。
気が抜けたようにだらりと長椅子の背に寄りかかり、自分の名前が呼ばれるのを待った。
少しすると右側から声をかけられた。
「赤嶺天心は、君かな?」
顔をあげるとガッチリとした体つきのいかにも探索者という感じの男がニヤリと笑いかけていた。
「はい。赤嶺天心十四歳です!」
思わず背筋を伸ばして答えた。
顔は笑っているのに、なんか身体から出る威圧感がすごいんですけど。
「へー、十四歳じゃあまだ君、中学生? それじゃあまだ第一階層しか入れないけどそれでいい?」
「はい。さっき受付のお姉さんに聞きました」
「じゃあ、これから第一階層に行って、レクチャーするね。ついて来て」
いきなりダンジョンに入るのかよ! 最初に何か講義とか聞くのかと思ってたぜ。
恐る恐るガタイの良い職員さんについていく。
この人強そうだし、危険はないよね。
ダンジョン入り口という表示の下の開け放たれた鋼鉄の扉を抜けると、守衛さんのいるゲートが有り、そこを抜けると男子用女子用のロッカールーム兼着替え場と道具を預かるクロークがある。
ガタイの良い職員さんがクロークの女性に声をかけると、竹槍が2本手渡された。
「今日は初めてだから、この道具を貸し出してやる。以後、武器や防具は自分で用意するように。第一階層はスライムしか出ないのでこの竹槍があれば充分だぞ。逆に、金属の剣とかだと、溶かされて壊れてしまうから使わない方が良い。3階で売ってるから後で見てみろ。これが、探索者カードだ。ダンジョンに入ると、君のステータスが記入されるぞ。無くさないように大事にしろよ」
探索者カードと竹槍を渡され、ついてくるように指示された。




