第11話 三人組の話はそれなりにためになるね
「そうだぜ。俺の親なんて殺人犯だからな。お前の親なんてかわいいもんさ。引いたか?」
金城は、冗談でも言うみたいな軽い口調でそう言った。
だが、その目だけは俺の反応を逃がすまいと、じっとこちらを見据えている。
「え! それ、言っちゃっていいんですか? 知らなかったのに」
思わず声が裏返った。
こんな場所で、こんな話題を、こんなあっさり口にするとは思わなかった。
「ふ! 俺の親が殺人犯でも、おまえは気にしないようだな。俺は――仲良くなったとき、後から知られて引かれると、その方がつらいんでな。仲良くしたいやつには初めに言っておくことにしてるんだ。お前なら俺たちと同じ思いをしてるだろう?」
その言葉に、胸の奥を軽く叩かれた気がした。
――同じ思い。
確かに、俺も「後から知られて距離を置かれる」側だよ。
でも…………。
「いえ。俺、友達いないんで、参考になります。確かにそういうのはつらいですよね」
「だろう。俺が殺人とか、してるわけじゃないのにな」
金城の唇が、わずかに歪む。
俺も泥棒なんてしたことないのに、泥棒扱いされてきたな。
田畑が、にやけながら聞いてくる。
「おめーは、俺たちと同類だから、仲良くできるかもしれねーからな」
同類ね――確かにそうかもしれないね。
「それで声をかけてきたってわけですか?」
「まあな」
「それにな」
梶谷猛が話を引き継ぐ。
「俺たちは、今年卒業してから探索者を始めたんだが、なかなか稼ぐのは大変でな。三人より四人のほうが稼げるかもしんねーってのも理由なんだ」
「三人より四人?」
「そ。要は、パーティのメンバー候補に丁度良かったのさ。お前なら、親のことで、俺たちを判断しないだろうし、年も近いしな。別にすぐ入ってくれって言ってるんじゃない。お前がどこかのパーティに入りたいと思った時に、俺たちのこと、思い出してくれればいいなと思ってさ」
へー。
「どこかのパーティに入りたいと思った時ですか?」
内心で首をかしげる。
俺は一人が好きなんだ。
いや、他人と付き合っていくのは苦手だ。
だから、パーティに入るなんてことにはならないと思う。
「そ。お前まだスライムしか相手にしていねーだろ。でも、スライム相手じゃ大した稼ぎにはなんねー。第二階層に行けばもっと危険な魔物が出てくる。第三階層ともなれば、なおさらだ。一人に限界を感じるのは、そう遠い話じゃないと思うぜ」
梶谷の口の端がニヤリと上がる。
俺は、スライムで結構稼げてますけどね。
だから当分一人で良いや。
「はー。そういうものですか?」
「そうさ。誰だって、先がどうなってるのか知りたくなる。そして、壁にぶつかるとパーティを組もうと思うのさ。おめーも絶対そういう時が来る」
正直、そこまで考えたことはなかったが、言われてみれば、ほとんどの探索者はパーティを組んでいる。
「どんどん深くを探索するのなら、パーティを組むのは当たり前だからな。大体四人、五人で組んでるところが多いみたいだぜ」
どうやら梶谷たち三人は、本気で深く潜るつもりらしい。
確かに一人で潜れる階層には、限界があるのかもしれないな。
梶谷たちのパーティも、まだメンバーを増やす余地や必要があるということか。
「稼ぎを分配するから、メンバーが多すぎてもいけねーんだわ」
田畑が、もっともらしい顔で口をはさんだ。
「皆さんは、今、どのあたりまで行ってるんです?」
「あー。それ、気になるよな」
梶谷が、金城と田畑に視線を送る。二人は、軽くうなずいた。
「四月から、潜り始めて、第四階層まで進んでる」
「第四階層ですか?」
思わず声が上がる。
俺、まだ第一階層でスライムを相手にしているんですけど。
俺、第四階層なんて行ったら死んじゃいますよ。パーティに入るなんてはなからむりじゃん。
「ぶっちゃけ、今日初めて第四階層を覗いたところさ。ただ魔物が強くて逃げてきたんだわ。もうしばらく地力をつけるか、メンバーを増やすかだな」
梶谷の視線が遠くを見つめ、そして静かにテーブルに落ちる。
「それに、荷物を持ってくれる奴がいるだけでも戦力はぐっと上がると思うんだよな」
確かに、荷物が増えると動きも悪くなるからな。
剣だの槍だの、近接戦闘をする奴からすれば、荷物なんて軽ければ軽いほどいいにきまってる。
だからって、俺はこいつらとパーティを組むのは、――ないよなあ。
少なくとも今はない。だって死んじゃうもん。
「すみません。俺、まだ探索者になってまだ二日目なんで、とても第四階層なんていけませんよ」
「ああ。分かってるさ。でも壁に当たるのも早いと思うぜ。一人で潜ってるんだろう。壁にぶち当たって、パーティを組む必要を感じたら、俺らがその階から付き合ってやるよ。俺らも壁にぶつかりそうだからな。それほどお前と差が広がるとも思えんし」
梶谷の言葉に田畑が被せる。
「まー、俺たちが第四階層を突破するより、お前が第三階層あたりで壁にぶつかる方が早いと思うしなー」
第三階層は、一人じゃ無理だと?
第三階層の魔物は、けっこう強いのかな?
「第三階層の魔物って強いんですか?」
「ゴブリンは単体だとたいしたことはないんだが、三匹一緒に出ることもあるからな。三対一は、かなり危険を感じると思うぜ」
第三階層はゴブリンか。
確か子供位の背丈の緑色の小鬼だったな。
弱い魔物だと思っていたけど、確かに三対一は厳しそうだな。
一対一でもどうかと思うけど。
「田畑の言う通りだ。俺もひとりじゃ第三階層は無理だと思うぜ。防具や武器をそろえる金だって必要だしな。竹槍一つじゃ第二階層だって厳しいし、武器や防具をそろえるんだって時間がかかるぜ」
「そうそう。俺達だって、防具はまだそろっていないんだぜ」
田畑が梶谷に続けた。
「おめーなんて、なーんにも防具をつけてないんだろう?」
「はい」
確かに武器も防具も何もない。自慢じゃないが、竹槍すら持ってないぜ。
「そういう道具をそろえるのにも金稼ぐのに時間がかかるのさ。だから、時間がかかる」
「なるほどー」
頷く俺。
こりゃ、一万円稼いで喜んでる場合じゃないな。
武器だの防具だのそろえるのに相当金がかかるじゃん。
確かにずーっとスライム倒してるってのもな。
一年もスライム取り続けたら、ミスター一階層とかスライムスレイヤーとか、悪口言わ言われそう
俺は、和風ハンバーグ定食を食べながら、しばらく考え込んでいた。
そして結論に達する。
考えてもしょうがないじゃん!
結局、武器や防具を買う金が貯まるまで、スライム狩り続けるしかないんだよね。
焦ってもすぐに金が貯まる訳じゃないし、そんなにシャカリキに働くつもりもない。
今まで通り楽しく適当にスライムを狩り続けよう。
そんで、盾かなんか買えたら第二階層に進めば良いや。
「それじゃあ、一人に限界を感じたら声かけさせてもらいます。その時はよろしくお願いします」
「おう。そん時、俺たちのパーティに空きがあったら考えてやるよ。たぶん、俺たちのパーティもメンバー増やすの難しそうだから、枠は空いてると思うがな」
全員が、定食を食べ終えたので俺たちはパーラーを出てから分かれた。
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