魔女と弟子
いったいどれほど歩いただろう、そろそろ寒さと疲労で足の感覚が無くなってきた。
何故こんなことになっているのかは、自身の手の甲に描かれた「魔女の印」を見ればいつでも思い出せる。
それは大体半年ほど前の出来事。その日僕は誕生日だった。沢山の人に祝われ、沢山の美味しいものを食べ、幸せの骨頂にいた。けれどもその翌日に僕の手にはこの印が浮かび上がっていた。
僕のことを祝ってくれた人達の態度は一変、僕のことを恐れ非難するようになり、そのまま村を追い出された。
走馬灯の様に流れてくる思い出したくもない記憶から抜け出し、また歩み始める。もう既に身体の限界が来ている、歩いているのかすら分からないほどに。
ザザッと後ろから微かに音が聞こえた。ゆっくりと振り向けば、黒いゲル状の何かに食われる寸前であった。
突如全身を謎の衝撃が襲い、霞みゆく視界はついに見えなくなる。
雪山を散歩していると謎の魔物が人を襲っていた。魔法を放ち消し飛ばしたが、その魔物は再生していく。
「見たことのない魔物だね。持って帰って研究しておきたい。」
ニヤリと笑みを見せるとその魔物は魔法を使い容赦無くこちらを攻撃してくる。
だがこの私に当たることはない。全てバリアで防いでいるから。
私に攻撃が通らないと悟ったのだろうかその魔物はいきなり逃走を始めた。
「逃がさないよ。」と急いで追いかけるが、曲がり角を曲がった瞬間にその魔物はいきなり姿を消した。
(透明化とかでは無いね、完全に居なくなっている。ますます気になってきた。)
一旦魔物のことは無視し、さっきの人間の元に行く。
「だいじょーぶかーい?」と声を掛けても返事は無い。身体に異常が無いかよく観察すると、手の甲に印を見つける。
「先生ー、どこに行っていたんですか?なんか音がしましたけど。」
すると生徒が私に寄ってきた。私はすかさず
「ん?いや、何もないよ。グレイナ、この子を運ぶのを手伝ってくれない?」
グレイナは倒れている人を見ると少し驚いた後、魔法で浮かせて連れて行った。
「ん、じゃあ先に戻っているね。」
「あぁ、気を付けるんだよ。」
暖かな風の中で目が覚める。どこかの建物の一室のような場所におり、靡くカーテンからは優しい日差しが差し込む。
「おーい、調子はどうだーい?」
勢い良くドアが開き、そこから女の子が顔を出して覗いてくる。。
「お!起きてる。おはよう。」
「あ、おはようございます。」
ぼんやりする頭でとりあえず返事をする。すると少女は部屋から出て誰かを呼び出した。
「先生ー、起きましたよー!」
先生と呼ばれる人物を呼んだその子はすぐに戻って来て言う。
「ロビーに来いってさ。とりあえず付いてきて。」
言われるがままその子に付いていき、広々としたロビーに着く。
そこには同じ様な服を着た八人の人物がおり、その奥には如何にも雰囲気と圧を放った女性が一人いた。
「やぁやぁおはよう、新しい生徒よ。よく眠れたかい?」
奥にいた女性が口を開く。思ったよりもラフに喋ってきて少し困惑する。だかそれよりも気になるのは生徒という言葉だ、一体どういうことだ?
「んーまだ脳が完全には働いてないか、まそんなことは置いといてと、コホン、魔女学園アストラへようこそ新たなる魔女よ。ここで君はあらゆることを学び、あらゆる人を助けるだろう。」