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63:強化学習の恐怖

 レイレイを守るように、ヴァリアは彼女を抱きしめる。


 レイレイとヴァリアを挟むように、同じ笑顔を携えた二人のアイミーが立っていた。

 二人のアイミーは同じ構えで拳銃を向け、同じタイミングで引き金を引く。

 アイミーの照準はレイレイとヴァリアの額に合わせている。

 狙いが正確な弾丸が、ヴァリアとレイレイを襲う。


(――ここまでか!)


 レイレイを抱きしめて守っているが、ここで自分が倒れてしまえばレイレイが殺されるのも時間の問題。

 ヴァリアは覚悟して目を閉じる。せめて、マオとエナだけは無事であることを祈って。

 しかし、ヴァリアの意識は途切れることが無かった。


 恐る恐る目を開けるヴァリア。

 すると、ヴァリアとレイレイの周りが風の壁に守られていた。


「これは、レイレイがやったのか?」


「いいえ。私もよく分からなくて……」


 その時、レイレイの脳内に声が響く。


『君を失うわけにはいかないからね。少し手助けさせてもらったよ』


「精霊さん……!ありがとう!」


 ヴァリアは、レイレイの言葉で現象を引き起こした存在を理解する。


 風は弾丸を跳ね返し、その弾丸は二人のアイミーを撃ち抜いた。

 額に開く大穴。銃弾を受けたアイミーは意識を失い、そのまま倒れた。


「銃使える個体が居なくなっちゃった……」


「アイミー、これでお前も終わりだ。魔導人形について詳しく聞かせてもらうぞ」


「――でも、ナイフ使える個体はまだまだいるんだよねぇ!」


「何だと?」


 物陰から再び出現するアイミーたち。

 五体のアイミーが、全て同じ表情をしている。


 人間であれば、『笑い』でも一人一人違うはずだ。

 しかし、目の前のアイミーは全て同じ挙動をしている。

 魔導人形。新しい概念がこの世界に出現した。


「レイレイ。アイミーは人間じゃない。魔導人形という新しい存在なんだ」


「――はい。分かってます、ヴァリア先輩」


 ヴァリアが言いたいこと。

 それをレイレイは理解している。

 人間を殺めるという行為で手が鈍ってしまうのは想像に難くない。

 だから、ヴァリアはレイレイに対して、目の前の脅威は人間ではないことを理解させたかった。

 もちろんレイレイも聡明であるため、魔導人形を人間と認識していない。


 レイレイとヴァリアは頷き合い、そして駆け出す。

 それぞれの力で、アイミーを倒すため。


 アイミーはヴァリアを襲う。

 鋭利なナイフがヴァリアの心臓目掛けて接近してくる。

 ヴァリアはそのナイフを剣撃で受け流し、アイミーの手から弾き飛ばした。

 丸腰になったアイミー。

 ためらいなく、ヴァリアはアイミーの体を切り捨てた。

 間髪入れず、背後に忍び寄っていたアイミーへ振り返る。

 驚くアイミー。ヴァリアは勢いを乗せて、剣を薙ぐ。

 胴体が真っ二つに割れ、アイミーは絶命する。


 一方、レイレイの方には三体のアイミーが襲いかかってきていた。

 大勢で組み伏せば、先に殺せるはず。

 アイミーの判断により、レイレイの方が数が多くなっていた。


「爆発するなら……空に打ち上げないと危ないよね……」


 ヴァリアから聞いていた出来事。

 死体に触れた瞬間、爆発したという情報。

 しっかり覚えていたレイレイは、有効な呪文を精霊に乞う。

 精霊の言葉が脳内に刻まれる。新たな呪文がレイレイの力を強化する。


「土よ、大地の砂塵を巻き上げろ! 風よ、旋嵐となりて敵を薙ぎ払え!」


「アハハッ!古臭い呪文だねぇそれ!」


「――でも、強力だよ。あなた達を倒すから」


「やってみなよ!」


「ツィクロンド・バウジトゥン!!」


 三体のアイミーがそれぞれ地面を踏み込んだ刹那、土や砂が舞い上がる。

 足を絡め取られ、その場に立ち尽くす彼女たち。

 土や砂は旋風に乗って、体を切り裂いていく。

 そして、風はやがて嵐となり、彼女たちの体を空高く吹き飛ばした。


 直後、空で鳴り響く爆発音が三つ。

 アイミーの体が破壊された証明だった。


「やった!」


 レイレイの体が小さなく跳ね上がった。

 まるで重力から解放されたかのように、彼女は両手を大きく広げる。

 彼女の瞳には、勝利の喜びが満ち溢れていた。


「やるねーレイレイちゃん。三体の私を一気に殺しちゃった」


「アイミーちゃん。ヴァリア先輩と私なら、これくらい大丈夫なんだよ。さあ、エナちゃんを元に戻してよ!」


「それは嫌だね。だってさ――」


「――私たちはまだまだいるんだよ?」


 次々と出現するアイミー。

 手にはナイフが握られている。


「少しずつ『学習』してきたよ。レイレイちゃんは大規模な攻撃が可能だから、分散して戦う必要あり。ヴァリアちゃんは私たちの弱点が見えるから、逆に人数勝負かな?」


 レイレイの側に移動したヴァリア。

 アイミーは絶えず学習している事実。

 今はこちらが圧勝しても、いずれ自分たちを超える存在となる。


「くっ!今は戦えても、このままではいずれ!」


「でも、魔導人形にも限界があるはずです!それまでに私たちが頑張れば!」


「今はそれを願うしかないか……!」


 ヴァリアとレイレイ。

 二人は絶え間なく出現するアイミーと戦うことを改めて決意する。

 お互いが無事であることを祈り、ヴァリアとレイレイは分かれてアイミーと戦うのだった。

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