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サポート妖精の保身術  作者: 鮭茶丸
第1章【チュートリアルは簡潔に】
9/14

第6話『チュートリアルその⑥潮時』

 召喚時の光が消え、後に残ったそれに彼は近づき手を伸ばす。それは、白く細い手で彼の手を握ると、そのまま跪き彼を見上げた。


 眩んだ眼を擦りながら、彼の握られていない方の手の上から、ノエルはその存在を見た。それは、くすんだ白く軋む体に眼孔に赤い光を灯す、動く人骨であった。


「カラン」


名前:未設定

種族:レッサースケルトン

属性:▼不死 (悪)

  〈善属性脆弱:LV——〉〈日光脆弱:LV——〉〈状態異常無効:LV——〉

LV:1

RANK:1


HP:11

MP:5


筋力:6

耐久:6

器用:4

敏捷:1

魔力:2

精神:2

魅力:0

知力:1

【スキル】

〈〉〈〉〈〉



(レッサースケルトンか。日中の行動が制限されるが、RANK1の中でも破格のHPと耐久を持つ不死属性の先兵。悪くは無いんだが・・・)


 その様な事を考えながらノエルはスケルトンの方へと微笑みかける。


「私はノエルと言います。そっちにいる緑色はガマ吉。皆あなたと同じ、この方に召喚されたもの達です。あと、もう一人アインというイビルアイがいるのですが、今は出かけているので帰ってきたら改めて紹介しますね」


「ゲゴ‼」


「カラン」


 ノエルの言葉を聞いたそれは、小さくうなずくと、立ち上がり自身の胸に手を当てる。そして何か口を動かそうとし、その動きを止めた。


(ん?こいつもしかして・・・)


 その様子に心当たりがあったノエルは、その白い頭蓋骨の横まで飛んでいく。それはいきなり飛んできて肩の上でホバリングする彼女に、少し驚きながらも、落ちないようにと手を添え、耳孔に手を置き囁くノエルの声に耳を傾ける。


「・・・あなたも名前が思い出せないので?」


「カラッ!?」


「うわぁ‼」


 その言葉に驚き、彼女のほうへと首を回す。軽く話しかけたつもりが、いきなり視界一杯に骸骨が飛び込んできたノエルは、思い切り体をのけぞらせ、添えられていた骨の指によりかかった。


 その様子に申し訳なさそうに頭を下げる彼に対し、ノエルは大丈夫だというように手を上げ、態勢を整えると、改めて彼のほうを見ると、真剣な面持ちで話し始めた。


「自分の名前がわからないのは私も同じなのですよ。まぁ私は思い出す前に新しい名前をもらってしまいましたが」


「カラン、カラン?」


「そこの彼にですね。ノエルという名を与えられました。まぁ無いよりか良いですからね」


(いや、よくはないが・・・、でもあの時の不安感が今は無いってのは確かだからな)

 

 そんな自身の元の名前の所在に感じた恐怖を思い出しながら、ふとある事を思い出した。


(・・・なんでマスターには名前が無いんだ?)


 ノエルは眼を細め、口元に手を当て、これまでの事を思い出す。彼は一度でも名乗ったことは無い、そしてノエル自身それに違和感を一切覚えていなかった。


(ステータスにもそもそも名前の欄すらなかった。俺らとあいつの違いは一体何なんだ?)


 ノエルは自身の主の存在を不思議に思いながらも、決して不信感を抱くことができない。どれだけ考えを巡らせても、彼はそういう人物なのだという結論にたどり着く。しかし、自身の事であるのならそれは別、


(俺が明確に自身の変化を感じたのは、奴に名前をもらった瞬間だ。つまりは、名前そのものに何か意味があるんじゃないのか?少し試してみるか・・・)


「あなたはどうしますか?」


「カラン?」


「名前、思い出すまで待ちますか?それとも新しい名前を得ますか?私には選択権はありませんでしたが、今ならマスターと話して名づけを保留にしてあげるのに協力してあげてもいいですよ?」


 名前が無いことで感じる生理的恐怖を、それを探ることへの本能的な忌避感をノエルは理解している。そして何より、目の前の骸骨がこの問いに、自身の名を取り戻すまで待つ以外の回答をできないことも理解していた。それはノエル自身その選択肢さえあればそうしていたという経験からだった。


(悪いな、名無しの権兵衛。お前がこれから味わい続ける恐怖がどれほどのもんかは知らんが、同情はしてやる。ただ俺も知りたいんだよ。名前の有無による変化がどういったものなのか。だから実験台になってくれ)


「・・・カラン」


 彼はノエルのその提案を話を聞き、静かにうなずく。彼の意志を感じ取ったノエルは、彼女の行動を不思議そうに観察していた主のほうへと向き直った。


「ノエルどうしたの?急にその子のところへ飛んで行ったけど」


「マスター、どうやら彼自身の名前が思い出せないらしいのです。それで、思い出せるまで保留にしてほしいと・・・」


「え、そうなんだ。わかったよ、忘れてるだけなのに勝手につけたりしたら失礼だもんね」


「・・・そうですね」


 少し驚いたようにそう言う彼に、ノエルはなんとも言えない表情でそう返す。


「でも、それじゃなんて呼ぼうか」


「仮名でスケさん(仮)とかでいいじゃないですか」


「カラン‼」


 彼は驚いたように、ノエルのほうを見る。「仮でもその名前はちょっと・・・」という雰囲気を感じながら、ノエルは笑顔で彼を指差した。


「ほら彼も気に入ってるようですし」


「カラン!?」


 全力で首を横に振る彼を笑いをこらえながら観察するノエル。それに気が付かない様子で、主は少し考る素振りを見せたのち納得したようにうなずいた。


「うん、僕にはわからないけど。ノエルが言うならそうなんだろうね」


「カラン!?!?」


「それじゃこれからよろしくね、スケさん」


「・・・カラン」


「ゲゴ・・・」


 力なく肩を落とした、スケさんの足を可哀そうなものを見るようにポンと叩くガマ吉。ノエルはそんな二人のところへ飛んでいくと、小さな手を叩き注目を向ける。


「はいはい二人とも。項垂れている場合ではありませんよ。これからが大変なのですから、マスターも」


「そうだね、とりあえずスケさんのステータスを確認しないと」


 彼は自身のステータス画面から、スケさんのステータスを確認し始める。それを覗き込むように、3人は彼の周りへと集まっていく。


「筋力6もあるよ‼これで労働力には困らない、だったよねノエル?」


「・・・いえ、彼は日光脆弱という、日差しのある場所ではHPが減り続けるスキルを所持しています。少なくとも、日中は外での活動はできません。ですので伐採は引き続き、ガマ吉にやってもらいます」


「ゲゴォ」


「・・・じゃ別の子が来てくれるのまで粘る?」


 今後も肉体労働に駆り出されるというノエルの宣言に、鳴き声を上げながら天を仰いだガマ吉をなでながら、彼はノエルへとそう尋ね、その表情がとても険しいことに気が付いた。ノエルは、一呼吸置き口を開く。


「いえ、潮時です」


「え?」


「ゲゴ!」


「・・・アインが、上空から崖の端を走る敵部隊を補足しています。アインが把握している迂回ルートを通るなら、5から6時間ほどでこちらに来ると考えられます。」


「もうそんなに時間は無いのか・・・」


 外に積まれた未加工の丸太を思い出す。切り倒すのにも、木材として使用できるようにするにも時間はかかる。ノエルの考える防衛のビジョンは彼らにはわからないが、堅固な守りを有する要塞を作り上げることは不可能だと彼らは感じていた。


「ですので、新しい奴を呼んで賭けにでるよりか、耐久の高いレッサースケルトンを量産して迎え撃った方が賢明です」


「それで、勝てるの?」


「まぁこのままだと無理ですね」


「ゲゴォ‼」


「カラッ!」


 淡々とそう言ったノエルに対し怒ったように吠えるガマ吉を、状況の理解できていないスケさんが抑える。その様子を冷たい目で見下していたノエルに対し、主はいつもの優しい笑みを崩すことなく、ノエルへと問いかけた。


「・・・このままだと、ってことは何か策があるってことかな?」


 そのノエルの考えなど見通しているかのような瞳に、ばつの悪そうに眼をそらした彼女は、ごまかすように彼らの周りをふらふらと飛び回る。その様子にさらに笑みを深める彼を周囲の2人は怪しそうに見つめている。


 そして彼らの姿に次第に苛立ってきたノエルは一つ溜息をつくと、むすっとした顔で口を開いた。


「・・・策って程のモノじゃないですよ。ただ、奴らを撃退できる最低限の防衛陣地ぐらいはこのメンバーでも十分間に合いそうだなって思ってるだけです」 


「ふふ、そうかい。それは良かったよ。じゃあ教えて欲しいな、何をすればいいかを」


 期待に満ちた瞳、ノエルがこれから話すことに一切の疑いを持つことないという信頼の目線が彼女をたじろがせる。しかし、直ぐに覚悟を決めたように目を見開くと、彼らの前に飛び不敵な笑みを浮かべた。


「・・・わかりました。っとその前に帰ってきましたね」


[パタパタ‼]


「あ、帰ってきたんだねアイン‼」


「ゲゴ‼」


「カラン?」


[パタパタ‼]


 突然現れたその目玉に小首をかしげ、その様子をうかがっていたスケさんに対しアインは、尻尾に持っていた木の棒を置き、握手を求めるように、その尾を差し出す。そのアインの意図を理解したのか、スケさんはアインの尻尾を握り軽く上下に振る。


[パタパタ‼]


 自身の尻尾を上下に揺らす振動で、上下に浮き沈みする感覚を楽しむアインを、見つめながらノエルは先ほどアインの落とした木の棒を拾い上げた。地面に何かを書き始める。


「ノエル、それは?」


「これから話すのに必要なこと、敵戦力の情報ですよ」


 そう言いながら、ノエルはフォレストウルフとウルフのステータスを丁寧に書いていく。そして相手の情報が追加されていく毎にそれを見るガマ吉と彼の表情は次第に青く染まっていく。


「ノエル、君の口ぶりから勝手にこの世界はステータスの1差がとてもでかいものみたいに思ってたけど・・・」


「いえ、マスターの考えはあっています。能力値は5違えば超人、10違えば怪獣、20も違えば神だと思って相手したほうがいいですね」


「・・・怪獣が見えるんだけど」


「たった一体だけです、問題ありません」


「ゲゴ・・・」


「”これ本当に勝てるのか?”ってアホですか。勝つために策を考えるんですよ」


「・・・ゲゴオゥェ」


「なんて声出してんですかっと、よし‼書けましたね、二人とも遊んでないでこっち来てください‼」


 ノエルは項垂れるガマ吉をしり目に、困惑気にアインの尻尾を振り回すスケさんと、楽し気に笛を鳴らしたような独特の声を上げるアインを呼んだ。


「それじゃ、メンバーも揃ったことです。作戦会議と行きましょうか」


 ノエルはそういうと、地面に書いたその情報を改めてみていくのだった。



名前:未設定

種族:フェレストウルフ  ×1

LV:4

RANK:2


HP:20

MP:8


筋力:8(+3)

耐久:8(+2)

器用:7(+2)

敏捷:10(+3)

魔力:5(+2)

精神:3(+2)

魅力:5(+2)

知力:3(+2)

【特技】

〈爪牙:LV2〉〈疾駆:LV1〉

〈環境適応:森林LV2〉〈筋力強化LV1〉

〈号令:LV2〉〈咆哮:LV1〉〈〉





名前:未設定 

種族:レッサーウルフ  ×3

LV:2~3

RANK:1

属性:▼獣(中立)

  〈武器装備不可:LV——〉〈獣の勘:LV——〉


HP:5~6

MP:5~5


筋力:4~6

耐久:3~5

器用:3~4

敏捷:4~5(+1)

魔力:3~3

精神:2~2

魅力:3~3

知力:2~2

【スキル】

〈爪牙:LV1〉〈疾駆:LV1〉

〈〉



 新しい仲間と敵の情報開示回でした。

 スケさんの詳しいスキル情報は下に書いておきます。と言っても、スケさん含め属性が不死のものたちは初期スキルを持っていない為、重要なスキルはこれから増えていくのですが・・・。


名前:未設定

種族:レッサースケルトン

属性:▼不死 (悪)

  〈善属性脆弱:LV——〉〈日光脆弱:LV——〉〈状態異常無効:LV——〉

LV:1

RANK:1


HP:11

MP:5


筋力:6

耐久:6

器用:4

敏捷:1

魔力:2

精神:2

魅力:0

知力:1

【スキル】

〈〉〈〉〈〉


スキル解説

〈●●属性脆弱〉…その属性を持つ対象に与えるあらゆるダメージに+(RANK)

〈日光脆弱〉…日光の当たる場所にいる場合、全ステータスが50%減少し、さらに毎ターン(RANK)点のHPが減少する。

〈状態異常無効:LV——〉状態異常を受けない。


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