第3話『チュートリアルその③3体目の仲間と下位互換』
再び祭壇の前に手を伸ばし、召喚を開始する。ノエルとガマ吉は、その様子を祭壇の上に座りながら眺めていた。
ガマ吉は初めて見るその不思議な光景に、興味津々といった具合で、その光景を凝視していた。そのため、横でそのガマ吉の様子を眺めながら、愉悦に満ちた表情で口角を吊り上げるノエルの存在に気付くことは無かった。
そして、周囲に渦巻く風と光が最高潮に達した瞬間、ノエルが声を上げる。
「マスター‼来ます、備えてください‼」
「わかった‼」
「ゲゴ?」
そのノエルの合図に合わせ、ノエルと彼は目を閉じる。その様子を見、何事だとガマ吉が首を傾げた瞬間、強烈な光が辺りを包み、唯一目を閉じていたなかったガマ吉の目を焼いた。
「ゲゴォォォォォ‼」
「が、ガマ吉いぃぃぃぃい!!!!」
「ざまぁみろクソガエル」(申し訳ございません、召喚時の発光のことを貴方には伝え忘れていました)
「ゲゴォ?!?!」
「すいません。つい本音が・・・って叩こうとするな死ぬ‼」
ノエルとつぶやくに、眩んだ眼のままでたらめに腕を振り回しノエルに対して抗議するガマ吉。未だ丸吞みにされた際に受けたダメージを回復できていないノエルは、瞬時に飛び上がり、その一撃を避け、主の頭の上へとよじ登る。
「ふ、二人とも落ち着いて。ほら、新しい子を迎えに行くよ」
頭に飛び込んできたノエルを優しく押さえながら、彼はそっと魔方陣の中心へと近づいていく。そこに居たのは、20cm程の丸い体に巨大な蝙蝠のような翼、後ろからは先端がとがった細く長い尻尾が生えており、正面には自身の体程もある大きな一つ目を持った、異形が浮遊していた。
「・・・イビルアイですか」
「知ってるのノエル?」
「・・・」
(・・・少し、まずいな。)
何が何だかわからないといった様子で、周囲をきょろきょろと見渡す目玉は、彼を見つけると何かを察したように、パタパタと羽を動かし、そちらへと向かってくる。そして、彼の前で止まり、数秒見つめた後、お辞儀をするかのように目を閉じた。
「あ、挨拶してなかったね。初めまして僕が君を呼んだ召喚師だよ」
その言葉に合わせるように、彼の頭の上にいたノエルも降り、近くに這ってきてたガマ吉の上へと飛び乗り、その異形に対し、小さくお辞儀をしながら自身らの紹介の為に口を開く。
「・・・私はノエルといいます。そこに居るカエルはガマ吉です。皆、マスターに呼ばれた仲間です。これからよろしくお願いしますね?」
「ゲゴ‼」
[パタパタ]
彼ら言葉に、返事をするようにそれは羽を素早く動かす。そして、ノエルたちの周りをクルクルと飛び回り始めた。
「え、えっと」
[パタッパタッ‼]
(どういう意図なんだこれ?)
何かを伝えようとしているのか、ノエルの周囲を回りながら、激しく羽を振っているそれに、困惑しながらも、どうにか意図を探る。
「・・・一緒に飛びたいってことですか?」
[パタ‼パタ‼]
(・・・まるでわからん)
とりあえず、自身の出した答えが真実であると信じ、ノエルはガマ吉を蹴り、飛び上がる。するとそれに追随するように、それも大きな羽を羽ばたかせながら飛び上がった。
そして、二体はガマ吉と彼の上を、弧を描くように八の字に飛び回った。それが心地よかったのか、眼玉の怪物は、その目を細めながら大きな羽を目一杯動かした。
(あってたのかこれで・・・)
[パタパタ~♪]
「今度は仲良くなれたみたいでよかったねノエル!」
「ゲゴォ」
(その周りに馴染めない子供に友達ができた時の親のような目はやめろ‼)
微笑ましそうにその様子を見ていた彼は、何か思い出したように、腕を叩き二人の視線を自身へと向けた。
「そうだ、君にも名前を付けてあげなくちゃね。・・・そうだなぁ『アイン』なんてのはどうかな?」
[パタ‼]
その名前に、アインは嬉しそうに羽を揺らし、主の周りを飛び回る。その様子を見て、楽しそうに笑う彼を窘める様にノエルが口を開いた。
「というかマスター、早くこの子のステータスも確認してしまいましょ?時間無くなりますよ?」
「そうだったね。じゃ君のステータスを見てもいいかな?」
[パタッ‼]
アインは大きく羽を動かすと主の前に立ち、ステータス画面を出現させた。ちょうど彼とノエルの目線の先にステータス画面が表示されたのを確認し、ノエルは下で画面が見えないかとつま先立ちでプルプルと震えるガマ吉の方を向く。
「流石、何処かのカエルと違って、飛べるだけあって見やすい位置に表示できますね。何処かのカエルと違って」
「ゲゴォ・・・」
「”もう勘弁して”って誰もあなたの事だなんて言っていないですよ」
「ゲゴォ‼」
「”あからさまだっただろ‼”ですか、はて?何のことやら・・・」
「ほら二人とも喧嘩しないで、ガマ吉も抱えてあげるから、これで見えるでしょ?」
彼は優しくガマ吉を抱きかかえ、皆と共と共にそのステータスを確認していく。
名前:アイン
種族:レッサープチイビルアイ
LV:1
RANK:1
属性:▼邪悪(悪)
〈迫害対象:LV——〉〈善属性特攻:LV——〉
HP:3/3
MP:7/7
筋力:1
耐久:1
器用:2
敏捷:4(+1)
魔力:6
精神:2
魅力:2
知力:2
【スキル】
〈飛翔:LV1〉〈魔瞳:LV1〉〈〉
「筋力は1、要件は満たせていないね。それとなんとなくステータスがノエルと似てるね」
「・・・イビルアイは、〈飛翔〉による敏捷性の高さと視線さえ通れば相手を状態異常にできる〈魔眼〉により相手を攪乱するのが主な仕事です。また、空きスキルから取得できる〈視界共有〉などで、味方に敵の位置を知らせたりと、斥候や監視としても非情に優秀です。
イビルフェアリーとは〈魔眼〉や自身や同陣営の視界に影響するスキルなどで差別化はされてますが、ステータス並びにその戦闘スタイル等が似ているのは確かです」
(実際は、差別化というよりも、イビルフェアリーはイビルアイの下位互換って言った方が正しいんだよなぁ。)
フェアリー種は、成長での魅力と知力の伸びが良く、その上取得できる交渉系のスキルが優秀であるため、戦闘ではなく、他の村や国との取引などで真価を発揮する。しかし、イビルフェアリーは、フェアリー種でありながら、属性が邪悪であり、その属性スキル〈迫害対象〉により、同じ属性分類が異なる相手との交渉が難しく、交渉役としては不適切であった。
そのため、ノエルは当初、このイビルアイを参考に、戦闘での妨害役としての役割を持とうとしていた。
(イビルフェアリーは唯一、妨害特化の〈妖精魔法〉と〈闇魔術〉を両方覚える種族だからな。妨害役という一点においては、イビルアイより優秀。だが、逆に言えばそれ以外は全てにおいて劣っている。それに、妨害役としても敏捷性が高くヒット&アウェイで戦えるイビルアイの方が優秀って言う人もゲーム時代では珍しくなかった。
今の解説役という役割が飽きられた時の為に、それ以外の役が欲しかったんだが、)
ノエルはちらりと、アインを見、心の中で深いため息をつく。
(本物が来てしまった以上、戦闘での活躍は向こうに譲ることは確定だろう。・・・スキルの取得を遅らせておいてよかった)
ノエルが自身の考えをまとめ、顔を上げると、不安そうな目つきでそのステータス画面を見つめる主の顔が目に留まった。
「でも、どうしよう。MPはもう2しかない。MPはさっき回復したばかりだから、次の召喚まではまだ時間がかかる・・・、ってあ、アインが悪い訳じゃないんだただ‼」
彼のその言葉に目に涙を浮かべ、俯くアインに対し、必死でなだめる。それを見て、クスリと小さく笑い、ノエルは彼の腕の中で抱きかかえられているガマ吉の頭の上に立ち、彼へと話しかけた。
「では、先にできることをやってしまいましょうか。」
「できること?」
[パタ?]
「ゲゴ?」
「はい、それぞれのメンバーのスキルの取得です」
ノエルはそう言い、アインのスキルの空欄を指差した。
まず初めに、投稿遅れてすんませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
いや、本当に申し訳ないです。
次回はもう少し早めに投稿できればなと思っています。というよりか、この話と次回の、スキルの取得と探索の話は、同じ話にするつもりで書いていたのですが、途中で、「あ、これ今日中に投稿できねぇ」となってしまい、二つに分けた形になります。
ですので、もう次回は半分ほど書けてはいます。ので、まぁ、明日には、投稿、したいなぁ・・・
いや、するんだよぉ‼
とまぁできうる限り毎日投稿して良ければとは思っていますが、今後、大きく投稿感覚が空く際は活動報告でご連絡するかもしれません。その際はご了承を。
最後に、今回仲間になったアインのステータスとスキルを紹介して終わりにします。ではまた。
名前:アイン
種族:レッサープチイビルアイ
LV:1
RANK:1
属性:▼邪悪(悪)
〈迫害対象:LV——〉〈善属性特攻:LV——〉
HP:3/3
MP:7/7
筋力:1
耐久:1
器用:2
敏捷:4(+1)
魔力:6
精神:2
魅力:2
知力:2
【スキル】
〈飛翔:LV1〉〈魔瞳:LV1〉〈〉
スキル解説
〈迫害対象〉…自身と属性の分類が異なる相手との交渉難易度の上昇。
〈●●属性特攻〉…その属性を持つ対象に与えるあらゆるダメージに+(RANK)
〈飛翔〉…飛行状態となり高さ1以下の障害物の影響を受けない。敏捷の値を特技LV×10%上昇させる。(下限1)
〈魔眼〉…MPを消費し、対象にランダムな状態異常を与える。
LV1:麻痺・混乱