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第3話『ルールブックは手放せない』

 『AbyssGate』の召喚師にはいくつかの種類があり、それぞれの得意なことが決まっている。例えば不死属性の下僕を主力とする死霊術師は、スケルトンやゾンビといった不死の者しか召喚できないが、その代わり、不死属性の共通の弱点である陽光の克服などの研究を行うことができるのが特徴だ。


 他にも、機械生命体を生み出すメカニック、海洋でしか召喚を行えない海守など、様々なタイプの召喚師が存在しており、それぞれの特徴事に拠点の発展の仕方も変わってくる。


 故に、これからノエルがこの地で生きる為には、自身の主のタイプを判別し、自身が行える役割を正確に認識し、自身の有用性を示していく必要があるのだ。



「それで、ノエル。拠点をつくるって言ってたけども・・・」


 青年は自身の頭の上に座るノエルに対し、声をかける。


「あ、その前に忘れてたのですがマスターのタイプを教えてくださいませんか?あと現在いる下僕の数も」


(俺はイビルフェアリーとして召喚されている。

 そのことからこいつのタイプは妖精種の召喚に長けた森羅術師か、邪悪属性の召喚に長ける悪魔召喚師であるはず。怖いのは、どっちも序盤の立ち上がりが難しいタイプだってところだな。下級下僕として使い捨てられる前に、こいつ共々普通に死ぬかもしれねぇ。)


 ゲーム時代の知識からある程度のタイプを予想はできている。だが、わかるがゆえに彼女は不安をぬぐえなかった。


 自然から力を得る森羅術師は、召喚を行うのに触媒も術者のMPも消費しない代わりに時間がかかり、悪魔召喚師は召喚の為の触媒の入手が難しい。


 そのため、今のような祭壇も少なく魔方陣も小さい最序盤に呼び出すユニットには一層気を配る必要がある。


(それなのになぜ、レッサーイビルフェアリーなんてものを呼び出したのか、そこが謎だ。) 


 ノエルが不安の不安を増大させている理由の一つが、自身の種族だ。


 レッサーイビルフェアリーという種族は序盤に絶対に仲間にしたくないタイプのユニットである。


 フェアリー種であるせいで筋力が低く、採掘・伐採・物資運搬といった序盤に最も重要な肉体労働の効率が悪い。


 魅力が高いから交渉担当として役立つかと思えば、属性が邪悪なせいで、同属性以外から嫌われており交渉にならない。


 その上、厄介事を引き起こし周囲の心情を下げる、フェアリー種固有のイベント『いたずら』が、属性の邪悪のせいでさらに悪化しており、内部分裂の火種になりかねない。


 一応の使い道が無いわけではないが、いくら最低RANKのユニットが触媒を必要としないとはいえ、序盤の召喚師のMPが低い時期に呼び出す者ではないのは確かであった。


 そのようなことから自身を召喚した意図を探るため、このような質問をした。どのタイプで現在どのユニットを所有しているかが分かれば、自身の立ち位置がはっきりとする。 


「タイプ?下僕?えっとこれをそのまま見せればいいのかな?」


 ノエルの質問に少し困惑気味に返事をしながら、彼は目の前に半透明な板を出現させた。


種族:人族

LV:1

RANK:1

属性:▼人類 (中立)

   〈進化不可:LV——〉〈英雄の卵:LV——〉

タイプ:ダンジョンマスター


HP:5/5

MP:3/5


筋力:2

耐久:2

器用:3

敏捷:2

魔力:2

精神:3

魅力:2

知力:4

【スキル】

〈召喚魔法『ダンジョンマスター』:LV1〉〈ダンジョンクリエイト:LV1〉〈〉


▼メンバー

・総数:2

 ・人間×1

 ・フェアリー種×1


「ふむ、種族は見た目通り、でタイプは、ダンジョンマスター・・・か、ってダンジョンマスター!?」


「うわ、どうしたの急に大声出して」


 ノエルは絶句した。レッサーイビルフェアリーという種族としてここにいることに何か意味を求めたいがため、無意識にその存在を忘れていた。『AbyssGate』におけるダンジョンマスターというものを。


 ダンジョンマスターは他のタイプでゲームをクリアすると【newgame】から選択できるようになるある種の隠しタイプだった。


 その特徴は、全てのユニットを召喚可能になるというもの。他のタイプであれば、基本は一つの属性、一つの種族内のものしか召喚はできないが、ダンジョンマスターはその限りではない。


 さらに他のタイプであれば必要な触媒無しでの召喚も可能であり、MPさえあれば簡単に軍勢を用意することができる。


 その上、あらゆるアイテムをMPに変換したり、逆にMPからアイテムを作り出すことも可能であり、召喚者のMPの確保さえできていれば、他のタイプとは比べ物にならない速度での拠点の発展が可能である。


 しかし、ダンジョンマスターにはこれらを覆い隠す程のデメリットが存在する。


 それが、ダンジョンマスターの〈召喚魔法〉は召喚対象を選ぶことができないという点だ。


 それも、ダンジョンマスターのランダム召喚で出てくるユニットは全て最低であるRANK1。一応、魔方陣の研究を進めることで、出てくるRANKの最大値を上げることはできるが、研究には相当の時間がかかる。


 つまり、他のタイプであれば、その時々に必要な労働力を召喚で作り出すことができるが、ダンジョンマスターでは、簡単な作業でも、それに必要な労働力を確保するのに、ランダム要素のある召喚を行わなければならない。


(そうか、狙ってレッサーイビルフェアリーを呼んだわけじゃない。ランダム召喚の所為だったのか・・・ってなると本格的にまずいぞ‼)


「ノエル、どうしたの?大丈夫?」


「・・・ええ、大丈夫です」


 青ざめた顔で心の内を悟られないようにそう答える。呼び出された理由があればまだよかった。それが、繁殖用であろうと愛玩用であろうと、生きる残ることはできた。


 しかし、ダンジョンマスターでは話が違う。ただでさえ、他種族が入り乱れる環境になることが予想される中、最序盤から厄介者の代表格である彼女を残しておく理由が無い。


(でも、それなら。なんでさっさと消さないんだ?下僕は主に逆らえない。さっさと自害させてその死体をMPに変換すれば、アタリが出るまで召喚ガチャを回し続けられるはずだ。なのに、何故・・・)


「そ、それにしても、私がマスターの初めてのげ、従僕ですか。何とも感慨深いですね」


「そうだね、僕もいきなりこんなところに放り出されて、心細かったから。ノエルが来てくれて本当に良かった」


「・・・マスターも、気が付いたらここに居たのですか?」


「うん。急に目の前が真っ白になって気が付いたらここにいたんだ。何が起きたのか全くわからなかったけど、何となくこの召喚陣の使い方は、まるで当たり前のように理解できたんだ。」


 どこか恐ろし気に語る彼の様子、その内容にノエルは覚えがあった。それは初めてその羽で飛んだ時。その非現実的なはずの出来事をあまりにも違和感なく受け入れている自分がいた。


(そういう身体として転生したからだろうと、納得していたが確かに不思議だよな。)


「それで、ここが何なのか自分がどうなってしまったのかもっと知りたいって思ったら、あのRPGのステータス画面みたいなよくわからない板が出てきてね。

 そこでようやく、ああ自分は元の世界とは違うどこかの住人になったんだって思い至ったんだ。」


 彼は自身のステータスを指でなぞりながら震える声で話し出す。


「異世界転生とか面白そうなんて、ラノベとか読んで思ってたけど実際自分が遇ってみるとあまり喜べないものなんだね。

 洞窟の中は寒いし、外からはよくわからない動物の鳴き声も聞こえるし。何より、こんな所でどうやって生きていけばいいのかも分からない、この世界にきて数日、良いことなんてなにもなかったよ」


(・・・”良いことなんてなかった”、か。)


 目を伏せた彼は、頭に乗っていたノエルに手を伸ばしそこに乗るようにノエルを促す。そして、目の前に持ってくると、ノエルの目を真っすぐに見つめながら笑みをこぼす。


「だから、ノエルには本当に感謝してる。ありがとう。」


「マスター・・・。」


(勝手に下ろしてんじゃねぇよ、こっちには拒否権ねぇんだよ)


 言葉での命令でなくとも、彼の意志には逆らうことができないことを再確認したノエルは彼の語った言葉の中で何かに気が付いた。


(てかこいつ、あのステータス画面を”よくわからない板”って言ったか?もしかして)


「マスター、なんで数日間も召喚を使わずに過ごしていたのですか?それは貴方の最たる能力でしょうに?」


「・・・ちょっと怖くてね。これは明らかに元からあった自分の力じゃない。何が起こるか何もわからなかったから。」


「何もわからなかった・・・?」


「そうだね、でも今は使ったことに後悔はしてないよ。あのままだったら一人ぼっちでこのくらい洞窟の中で死んでいくことになってただろうし。」


 ノエルの中にあった仮説が真実味を帯びていく。先ほどまでこわばっていた頬が緩んでいくの感じ、まだその時ではないと必死に表情を取り繕う。


(まさか、そういう事なのか!?いや、まだわからない、最後の確認だ・・・)


「・・・マスターもう一つお聞きしたいことがあります。『AbyssGate』という名前に聞き覚えは有りますか?」


「いや、知らないけど」


(うおおおおおおおおお!!!!しゃおらあぁぁぁぁぁl!!!!!)


 その言葉を聞いた途端、ノエルの脳内に歓喜の雄叫びがこだました。


 それと同時に今後何が起ころとも盤石な自身の立ち位置の構想も高速で出来上がっていく。


「ふ、ふふふ」


「ノエル?」


 吊り上がった口角から笑みが漏れ出る。それを不気味に思ったのだろう、彼は心配そうにノエルに声をかける。


 それに対し、ノエルは不敵な笑みを浮かべながら彼の手の上に立ち、まるで舞台役者のように語り始めた。


「・・・いえ、今ようやく私が呼ばれた理由がわかったのですよ。

 マスター、私は、何も知らない貴方の為、この世界の案内役として、マスターの歩みの道しるべとなるために私は呼ばれたのですね?」


「・・・いや、わからないけど」


「いえ、きっとそうです!!!!」


 突然の変化に困惑気味な彼に対し、ノエルはきらきらと輝く瞳を見開き、顔を近づけ興奮気味に捲し立てる。


「ずっと疑問だったのです。私は知識しか取り柄の無い、ひ弱で何の役にも立たない妖精です。なのになぜ、マスターのような方が、このような巨大な魔方陣を使用できるあなたが、私を呼んだのか‼マスター‼私は貴方が欲する知識を有しています‼この世界のシステム、これから何をし、どう生きればいいのか‼あなたの望む世界に何が必要なのか‼」


「そう私は‼貴方の知識となり貴方を補佐するためにここにいるのです‼」


 そう言い、小さな体から限界まで空気を絞り出したノエルは肩で息をしながら、主の顔を見上げる。そこにはどこか複雑な顔でありながら、真剣な面持ちでノエルから聞いた内容を咀嚼する彼の姿があった。


(この世界がゲームとまんま同じだとは思っちゃいない。ただ、ゲームのルールが全く通用しない場所でもないように今のところは見える。であるなら、この知識によって説明役としての地位を確立させれば、そう殺されることない。ゲーム説明書は読まなくなることは有っても破り捨てる奴はそうはいないのだから)


 ゲーム時代を知っているという一点からなる優れた知恵者としての立ち位置。実際はこの世界の事なんて何も知らないが、ゲームのシステム面のことなら、基本は説明ができる。これがノエルの選んだ生存戦略であった。


「えっと、要するにノエルが色々教えてくれるってことかな?この世界の事とか、僕の力の事とかも」


「はい、マスターが望むのであればいくらでも。」


「・・・教えてくれるかな。僕が何なのか。これからどうすればいいのか。」


(さて、最初の難問だ、どう伝えるべきか。)


 『AbyssGate』のクリア条件は端的に言えば世界征服である。軍勢を指揮し、支配領域を広め、マップ全てを自陣営で埋め尽くせばクリアであった。


(だが、ゲームと同じことを勧めれば、必然的に他の村や国家に対して侵略を行うことになる。そうなれば、不要な争いが増え、俺が死ぬ可能性が大いに高まる。

 召喚師に縛られた下僕として生きていく羽目になった以上、贅沢は言わないから安全に生きる事が俺の最大の目標だ。

 戦争に明け暮れる毎日なんて論外。で、あるなら目指すべきは、外部と一切干渉しない鎖国モグラプレイだろう。)


 それは拠点運営に必要な全てを自陣営のエリアそれも、地下エリアだけで完結させるというゲーム時代のプレイングの一つであった。


 他との関わりを最低限に抑えることで、余計な襲撃を避け、なおかつ、地下に拠点を作り、入口を限定、その入り口へ続く道を水没させることで、一定のユニット以外立ち入れなくするというもの。


 内部で完結している為、外界への道を水没させても拠点運営に何ら問題もなく、MPさえあれば何でも生み出すことのできるダンジョンマスターとの相性も良いプレイングであった。


(現状と俺の目的に一番マッチしたのがこれだ。だが、これをこいつがどう思うかだな。

 せっかくファンタジーな世界に来たってのにやってることはただの引きこもりだ。俺なら断固拒否だが・・・)


 どうにかして納得を得ることはできないか、少し悩んだ末、ノエルは不安げにこちらを見つめる主に向けて口を開いた。


「マスターは召喚師です、それも大軍勢を率いることのできる大魔術師、その力があれば何でもできます。

 殺人や略奪を繰り返す悪魔にも、魔物を退ける英雄にも、貴方が望むのであれば、どのような使い方だってできます。」


「そして何をすべきかですが、これは私が答えるべきことでありません。貴方次第なのです。マスターは何がしたいですか?その力で、何を成したいですか?私は貴方の答えに従います。」


「・・・」


 ノエルの言葉に、顔を歪め俯く彼の姿はある意味では彼女の予想通りであった。


(よし!そりゃなんも知らん状態で放り出された状態で、いきなり目標決めろとか言われても何も言えんわなぁ!!!!)


 自身で判断のつかない質問を投げた後、こちらが望む事をあたかも相手の為のように提案することで、自身の望む答えへと誘導する。それがノエルが咄嗟に考えた作戦。


 そのためその反応も、予想していたものであり、それに何の感情も抱かないはずであった。


「マスター?」


 苦悩に歪むその様子に内心ほくそ笑みながら、ノエルは心配している風な声色で主を呼ぶ。そして何も答えないのを確認し、口を開こうとした時、彼は絞り出すように口を開いた。


「・・・何がしたいかなんてそんな急に聞かれても僕にはわからないよ。急に目の前が真っ白になったと思ったらこんなところにいて、ここがどこで何なのか知らないのに」


(こっちがしゃべろうとしてんのに話してんじゃ・・・)


「自分から望んでこんな所にいるわけじゃないのに・・・」


(・・・)


 ふと彼の口から洩れたその言葉がノエルの心に突き刺さる。それは、この世界に来たことに対する心の底からの絶望であり、ノエルのこの世界に対する感情とは真逆のもの。ノエル自身と彼の違いをまざまざと感じさせる一言であった。


(・・・俺は現実はクソだと考えてたし、何より知ってるゲームの世界だったからまだ、この現状にも喜びも感じられた。

 いや、そうでなくとも、超常の力を持って異世界に行ったなんてなったら小躍りして喜ぶだろうな。でも、そうだよな。真っ当な人間からしたら嫌だよな。普通に、生きたいよな。)


 彼はノエルとは違い、望んでもないのに知らない世界にいきなり連れてこられ、右も左もわからぬまま、何がしたいか、目標を決めろと理不尽な決定を迫られている。


 数秒前までどうにかして、誘導しようとしていた相手のはずであるのに、なぜかノエルには後悔の念が沸き上がっていた。


 それは、暗に自身が彼に比べて真っ当ではないのだと言われている気がしたからであり、それと同時に目の前の彼を自身を支配する『召喚術師』ではなく、一人の『人間』として見ることができたからだ。


「・・・マスター、申し訳ございません。そこまで悩ませるつもりはなかったのです。」


「あ、いや、ごめん。ノエルを責めてるわけじゃ・・・」


「いえ、責められても文句は言えませんよ。私は貴方の道しるべだなんて言いながら、曖昧な答えしか出せずマスターに決めてもらおうとしていたのですから。」

 

「それは違うよ。ノエルはしっかり教えてくれてたと思う。この力はとても強大で、使い方次第で善にも悪にもなる。だから、目指すべきものを明確に示しておかなきゃいけない。そういう事でしょ?」


「・・・。」


 今だ陰の消えない表情で笑うその姿に、柄にもなくやるせないさを感じる。それは同情や自身が追い詰めたという罪悪感もあったが、何よりノエルの心を抉っていたのは、この世界の事でそんな顔をさせてしまったという事であった。


(はぁ、仕方ねぇ・・・)


 ノエルは一つ小さく深呼吸すると、彼の顔から眼をそらしたくなるのを堪えながら、ノエルはある決意を固め口を開く。


「例えそうであったとして、この世界について全くの無知であるマスターに、このような問いをするべきではありませんでした。でも、そうですね。何も目標が浮かばないなら、『とりあえず生きてみる』、と言うのはどうでしょうか?」


「とりあえず生きてみる・・・」


「要するに自由に生きる為の土台作りです。ここは貴方の常識の埒外の世界。生きていれば、やってみたいことの一つや二つでてくるものです。まぁその”生きる”ことが難しい世界ですが、そこは私がサポートします。」


(俺はゲームの悪い部分だけ見て批判する奴が嫌いなんだよ。それが好きなゲームなら猶更だ、だから、)


「その過程で一つ一つ覚えていきましょう。その力の使い方も。この世界の事も。それで好きなこと、やりたいことを”一緒に”探していきましょう。」


(お前がこの世界を楽しめるよう少しは考えてやるよ。まぁ俺の命が最優先だがな。)


 彼女は転生したばかりであり、その考えはゲーム感覚が抜けていない考えではあることは彼女自身も理解している。だが、それでもノエルは彼にこの世界に絶望したままでいてほしくはなかった。


 ここは彼女の愛した『AbyssGate』に似た世界。酸いも甘いも知っている。知っているからこそ、楽しいこともあるのだと、彼に伝えたいというそれは紛れもない本心からの言葉であった。


(てか、なにより俺より上等な人生送ってたであろうやつが、不幸のどん底ですって顔してんのが腹立つんだよクソが‼)


 ・・・完全な善意からの言葉ではなかったが。


 そんな彼女の言葉に何かを感じたのか、彼はうつむいた顔を上げ、真っすぐな瞳をノエルへと向けると小さく笑った。


「・・・わかった。ありがとノエル。そうだね、悩んでいてもしょうがない。悲観的になるより、今のこの非現実を楽しまないと」


「では、私はマスターがこの世界を楽しめるよう微力ながらお手伝いさせていただきますね」


「期待してる」


「おまかせを‼」


 自然と両者から笑みがこぼれる。互いに本心から笑い合うのは出会ってから初めての事であった。 





「それで、拠点?を作るんだっけ?何をすればいいんだい?」


「ああ、そうですね、拠点作り。日が落ちるまでに終わればいいですが」


 ひとしきり笑い合った後、そう切り出した彼の手から飛び上がり、宙を舞い、不安げに外へ続く道へと視線を向ける。


「終わらないと何かあるの」


「ええ、死にます」


「え」


 青ざめ言葉を詰まらせる彼に、ノエルは心底楽しそうに、悪戯っぽい微笑みを浮かべた。


「言ったでしょ?この世界はその”生きる”事が難しい世界だって」

 一応序章はこれにて終了です。

 いや、ほんと随分と長くなってしまい申し訳ない・・・。

 最初の出会いは、ノエルの性格とか、彼女の持つゲーム知識とか、ちゃんと描写しなきゃなと、色々書きすぎた感が、いや全部言い訳なのですが。

 第1章からは本格的に召喚と防衛の話に入っていくので、今までよりもテンポよく話が進むと思い、おも、思いたいです‼

 はい、なるべく簡潔にまとめられるよう努力していきます。

 まだまだ拙い文章ですが、これからもどうぞよろしくお願いします。

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