有魔市中央戦線
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有魔市中央大通り。普段はスーツを着た会社員や学生、買い物客や観光客といった多種多様な人で賑わう大通りが、今は全身をドロドロに溶かしたハニワのような顔の泥人間が跳梁跋扈する怪物大行進が敢行されていた。
「なんなんだこいつらは」
強化異人モドキたちが進行する先では蟻命の人知を超えた力で有魔署から追い出されていた刑事たちがパトカーを並べてバリケードを形成、対異人用の防護服を着て街中を闊歩する強化異人モドキたちを迎え撃とうとしていた。
「異人、ですかね」
目の前では強化異人モドキたちが各々それぞれの歩幅、進行スピードで刑事たちに迫ってきていた。
「人ではないのは確かだな」
この場にいる刑事全員、有魔市議会襲撃事件の現場に居合わせていない。居合わせた刑事は全員バイソンに殺されてしまった。バイソンの存在を知らない彼らには目の前の異形が異人であるのか、それ以前に本当にこの世の者であるのか、夢でも見ているのではないのか半信半疑の状態だった。
ただ一つ分かっているのはここで異形の者たちの行進を止めなければこの街が跡形もなく壊滅させられるということだ。それこそ二十三年前、某国で起こったあの大事件を超える甚大な被害が……
「近隣住民の避難、完了しました」
「ここ一帯にあるすべての道も封鎖しました」
刑事たちの迅速な対応でこの場の構図がわかりやすくなった。
強化異人モドキをここで止めれば街の安全は守られ、この防衛ラインが突破されれば街は崩壊の一途をたどる。
「古株さんはこんなときにどこいったんだろ」
一人を除きここには有魔署の全刑事が集合していた。
「おい、来るぞ」
ここが有魔市の正念場である。
「あーあー」
今までふらふらとした足取りで刑事たちとの距離を少しずつ縮めていた強化異人モドキたちだが唐突に一番先頭を歩いていた強化異人モドキが刑事たちに向けて突貫してきた。
「化け物が一体突撃して来たぞ。狙撃班、銃構え」
現場指揮を任された刑事の号令に合わせ、バリケード近くで待機していた狙撃担当の刑事たちは対異人用の狙撃ライフルを構えた。
「「「「あーあああああ」」」」
先陣を切った強化異人モドキに一拍遅れて、他の強化異人モドキたちも刑事たちに向けて走り出した。
「他の奴も来たぞ。総員、全員盾構え」
刑事たちの陣形はわかりやすく二つ、狙撃に自信のある刑事は陣形奥で対異人用のライフルを使い敵の狙撃。それ以外は全員対異人用の盾を構えての防衛。
刑事たちは突撃してくる強化異人モドキたちに向け盾を構えた。
「絶対にここを通すな。なにがなんでも死守するんだ」
強化異人モドキと有魔署の刑事たちが衝突する直前――
一台の白バイがバリケードを乗り越え、強化異人モドキたちがいる方へ突撃していった。
「どっけええええええええええええええ」
「た、探偵っ」
マロンを後ろに乗せ、守偵は強化異人モドキたちの間を上手くすりぬけ強化異人モドキたちが来た方向、今回の一件の首謀者、強化異人モドキたちのリーダーがいるであろう方向へ向けバイクを全力疾走させた。
「「「「「…………」」」」」
守偵の乱入により一瞬、時が止まったように止まる現場。しかし、数秒の後、強化異人モドキたちの進軍が再開。刑事たちの篭城戦が始まった。




