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縛りプレイはほどほどに  作者: not two die
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#2 目覚め

頬に雫が垂れる。


目を開くと、そこにはこちらを覗き込む一人の女性。


「周、ごめんね」


母さん…?



頬に雫が垂れる。


今度こそ目を覚ます。

目の前には岩肌の露呈した天井が広がる。その岩の一端から水が滴っていた。

目が覚めたのは薄暗い洞窟の中央。


ズキズキと痛む頭を押さえながら上体を起こすと、目の前に見知らぬ女性が佇んでいた。


白く透き通った美しい肌に、腰辺りまで伸びた艶やかなブロンドの髪。町ですれ違ったなら思わず二度見してしまうようなその容貌は、こんな異様な薄暗い洞窟でもやはりひと際目を引いた。十代にしては大人びすぎているし、二十代にしては若々しく感じる。

女性はこちらの視線に気付いたのか、おもむろにこちらを振り返り、その口を開いた。


「あ!やっと起きた~ いや~変なタイミングで呼んじゃってマジごめんね~?」


ギャップがすごいな……


「よ、呼んだ?え、えっと…ここってどこですか?さっきまで俺学校に向かってたはずなんですけど。ってあれ、一緒にいた二人は…」

「君と一緒にいた2人も別のとこで君と同じように説明を受けてるとこだよん。そんで君の説明係は私ってわけ!あ、ちなみに私の名前はルネリアって言います!気軽にルネリアちゃんって呼んでね~♪」


ちょっと頭イッちゃってる美女に誘拐されたという現状を理解したが、ここで動揺を表に出すのは三流のやることだ。あ、どうも。と会釈をしておく。


「ところで君めちゃくちゃ落ち着いてるね? 大抵の人は警察呼ぶぞ!って怒りだしたり、泣き出しちゃって会話どころじゃなくなっちゃったりするんだけどね~」


ルネリアと名乗った女性は怒っている人と泣いている人のジェスチャーをした後、キャッキャと笑った。


この女が誘拐常習犯である事実に戦慄し、震え始めそうな自分をごまかすべく、頭と口を回す。


「結局ここはどこなんですか?聞きたいことだらけなんですけど。」

「そうだよね~ごめんごめん! ここはね、端的に言うなら、君達の住む世界から見ると、異世界ってやつになるのかな♪君達にはこの世界を救うためにこの世界に来てもらったってわけ!どう?テンション上がった??」


あほか。信じるとか信じないとかそういうラインにすら達しないような話だ。

…しかし、否定しても話が何も進展しない。それに、いちゲーマー、いちオタクとしての自分がこの非日常を少し楽しみ始めていた。とにかく信じている体で話を進めてもらおう。


「俺は何をしたらいいんですか?」

「およ?やけに素直に信じるねぇ。そういう子お姉さんは嫌いじゃないぞ♡ んじゃまぁ早速説明していきますのでこちらをご覧くださ~い」


そういって指をパチンと鳴らすと、天井から映写機とスクリーンが降りてきた。

異世界だと思わせる気ないだろ。と思いつつ映し出された映像を眺める。


そこにはどうみても某資料製作ソフトで作られたであろう資料が映し出された。

…なんか急激に現実に引き戻される感じがしてイヤだ。


「この世界は過去5000年間ず~っと平和だったの。それは、私たちの住むサンパディーオ王国と先代の魔帝が不戦の契りを結んでいたから。でも新しく魔帝になった、ケイ・ウルカニルって言うやつが不戦の契りを破ってサンパディーオの陣地に攻め入ってきたの!ケイ率いる凶悪な魔帝軍に対抗するために、召喚術を得意とする私たちは、特別な力を持つあなたたち地球人を召喚したってわけ!」


設定もなんかよくある感じだし、やっぱり頭イッちゃってる美女による誘拐事件で間違いなさそうだ。


「あ~! なんか信じてない目してる~!さっきまではめっちゃ素直だったくせに~… むぅ~じゃあこれで完璧に信じさせちゃうんだから!ほら、左胸を押してみて!」


ルネリアは頬をぷくぅと膨らませながら、自らの左胸に手を当てて見せた。


「左胸?」


言われた通り左胸に手を当て、グッと押してみる。

ポポン♪という軽快な効果音と共に、押し込んだ胸の辺りから半透明の黒い板状の物体が飛び出し、目の前で停止した。


「うわぁ!な、なんか出てきた…」

「ふふ、ビックリした??それはいわゆるステータス画面ってやつだよ。 ほら、左上にステータス画面って書いてあるでしょ? どう?さすがにこれで信じたでしょ~」


限界まで下がりきっていた俺の信用ゲージは一気に振り切れた。



どうやら俺は本当に異世界に来てしまったようだ。



RPGでよく見るようなシンプルなステータス画面はだったし、ルネリアによるステータス画面の説明はほぼほぼ聞き流し、自分で色々いじってみた。

レベルやHPに攻撃力など、見慣れたステータス画面に自分の情報が書き込まれているだけでもう口角が上がったまま固まってしまう。

しかし一つだけ気になる項目が。


「この、制約っていう項目は? ここだけ何も書かれていないんですけど」

「あ、そこの説明をするためにはひとつ話さないといけないことがあるの。さっき、君達には特別な力があるって言ったよね?」


あぁ、あの胡散臭い説明の時か。そういえば言っていた気もする。


「地球人。その中でも日本に暮らす人には、制約を課すことで一部の能力を向上させたり、ギフトと呼ばれる特殊な能力を得ることができる特性があることが数年前に判明したの。そこでその特性を僅かながら操作できるよう、国中の学者達が叡智を集結してあるものを開発したの」


急に話がややこしくなり、混乱気味の俺を尻目に、ルネリアはおもむろに自らの胸の隙間に手を突っ込み、タブレット型の端末を取り出した。


四次元ポケット…?


こちらに向けられたタブレット端末の画面には、難易度と書かれた項目が1から9まで並んでおり、その下にはそれを選択するためのものと思われる◀と▶、そして「決定」の文字があった。


「これを選んでもらったら私からの説明は終了~ 難易度ごとに制約内容、それに対応するギフトが書かれてるから! ゆっくり選んでねん」


そういってルネリアはタブレットをこちらに差し出した。興奮を悟られないようにすまし顔で受け取ろうとするが、ルネリアはこちらの内心に気付いているのか、終始にやけ面だ。

半ば奪うようにタブレットを手にする。


しかし手にした途端、端末からビーッビーッと不快なエラー音が鳴り響く。


ブツンッ


次の瞬間、先ほどまでの選択画面は突如として暗闇へと姿を変えた。


「え?!! ちょっとなにしたのよ~⁉」


ルネリアが焦り気味にタブレットを自らの手中に戻そうと手を伸ばす。


しかし、


「え…? なに、これ…」


背景は先ほどまでの暗闇のまま、そこに新たに白の文字が浮かび上がった。


難易度:?



制約:??????



ギフト:?????


誘拐常習犯のルネリアですら困惑するイレギュラー。

本来であれば俺はただ茫然と眺めるだけが正解。

別にゲーマーとしての血が騒いだ訳ではない。今思えばただの好奇心の延長だったのかもしれない。

気が付くと俺の指は決定ボタンの上に置かれていた。


「ちょ、ちょっと!何考えてるの⁉ハテナだよ?何が起こるか分からないの!ってあれ?普通確認画面が出るはずなのに…!」

「す、すみません…」


自分のしたことの重大さに気付けずいる俺に、ルネリアはやれやれと首を振る。


「全くもう~ 君みたいな子は初めてだよ! ひとまず今の画面が何なのかは上の人に聞いておくから。 またいろいろ分かったら連絡させてもらうね? とりあえず君は先に進んでいいよ♪ 2人ももう出てる頃だと思うから!」


「あ、ありがとうおございます…?」


分からないことだらけだが今はとにかく前に進むしかないようだ。


俺は二人の安否を確認すべく足早に光の差し込む方へと向かった


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