表情筋
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リニアカーに約10分ほど揺られ(本当に揺れるわけではない)、2区の繁華街北駅に着く。
改札を出ると、既にそこは夜の街だった。
ここ地下都市コペルニクスは、地上の季節をある程度再現している。
日照時間もその一つで、今は3月末なので、もう暗くなっている。
しかし、まだ1900にもなってないのに、結構賑わっているもんだな。
今日何かのイベントがあったっけ。
少し考えてみると、そういえば今日は金曜日だった。
ずっと任務続きだったからすっかり忘れていた。
Na’s Appleはメインの通りから一本入ったところにある。
落ち着いた雰囲気の小洒落たお店で、リンゴスイーツ専門店だ。
価格帯は少し高めだが、その分とても美味しい。
「いらっしゃいませー何名さまですか?」
「3人です」
「ではテーブル席へどうぞー」
4人がけのテーブル席へと案内され、自分と玲那、しずくで分かれて座る。
店内には既に4、5人の先客がいた。
カウンター席に2人とテーブル席に男女が2組。
……6人だな。
まあ間違いなくデートだろう。とても良いことだ。
俺たち戦闘員は、まさしくこういう世界を守るために闘っているのだから。
「お兄ちゃんどうする?今日金曜日だけどお酒呑む?」
しずくを見ると、まだ悩んでいるようだ。
久しぶりだし呑もうかな。
テーブル天板になっているディスプレイのお酒のタブを開く。
ここのカフェは夜はバーになるので、結構おいしいお酒が揃っている。
店長のなーがさんは優秀なパティシエであるとともに、腕の立つバーテンダーでもあるのだ。
「じゃあモスコゥミュール。」
玲那が注文を入力していく。ちらっとこちらを見て確認する。
「まるごと焼きリンゴプリンだよね。」
「ん。」
お酒と注文のタブを閉じてしずくを見ると、なんとまだ悩んでいた。
そんなにキングキュリアスリンゴパフェが食べたかったのか。
んーーーーしょうがない。2540メルの出費くらい我慢するか。
「しずく、そんなに悩むならキングパフェでいいよ?」
ぱっとしずくがキラキラした目でこっちを見る。
「いいの?」
「まあ、いいよ。偶にはね。」
「やったー」
満面の笑みで万歳するしずくをみながら、あんな笑顔は滅多に見れないから良いかと思った。
玲那が注文を送信すると、ホロウィンドウで玲那と自分に支払い確認メッセージが出る。
値段を確認しOKボタンを押すと、ポーンという簡素な電子音と、猫の悲鳴と共にウィンドウが消えた。
「……今の、何?」
「え?私の支払い音だけど。」
玲那がさもありなん、といった感じで答える。
「……あの猫の悲鳴が?」
「悲鳴じゃないよ!鳴き声だよ!」
えぇ。間違いなく悲鳴だったような……
「なんか、夫婦みたいだね。いいなぁ」
突如空気が凍った。
目の前を見ると、しずくがあまり見たことのない、完璧なアルカイックスマイルを浮かべていた。
右を見ると玲那の顔が引き攣っている。
多分自分の表情も同じようなものだろう。
「……どういう、意味ですか?」
しずくはアルカイックスマイルのままかぶりを振る。
「そのまんまの意味だよ?」
「ひっ」
玲那が固まった。
しずくこわい。
いつもの死んだような目で顔だけ笑ってるのがこんなに怖いのか。
「あ、あの。しずくさん?」
「なに?」
「いえ、何でもありません。すみませんでした。」
怖すぎる。
「なんであやまるの?」
「い"っ」
こえええええ
てかなんで怒ってるのかほんとにわからん。
「おまたせしました。ショートショートアップルパイとキングキュリアスリンゴパフェになりますー」
危機一髪。スイーツ様のおかげでカタストロフィは回避された。たぶん。
と思っていると、玲那もしずくも折角きたスイーツ様に手を付けようとしない。
あー。自分のが来てないからか。
「先に食べていいよ。どうぞおかまいなく。」
「うん。」「わかった」
食べ始めるとあら不思議。スイーツの霊験あらたか、しずくの顔が幸せそうになっていくではありませんか。玲那もおいしそうに食べる。
「おまたせしましたー、モスコゥミュールとまるごと焼きりんごプリンです。ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「ああ。ありがとう。」
「ではごゆっくり」
店員は華麗に一礼し、下がっていった。
唐突につづく、とさせていただきます。
いや。切りどころがなかったんです。
グダグダになりそうかもって思って.....
って言い訳になりませんよね。
いやすみません。
以後気をつけます。
これだけ謝っておきながら次の更新はもげたのほうです。
すみません。




