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『救世主』に名前はいらない

作者:猫宮ちか
 これは世界を救うために結成された『救世主』パーティーから追放されてからの「僕」の旅の記録だ。

 何度も繰り返し復活する『魔王』の侵略から世界を救うために、『勇者』『聖女』『賢者』など様々な『役職持ち』が生まれる世界。代によって現れる『役職』は違いその時々で犠牲を出しながら魔王を封印し世界の平穏を守ってきた。しかも今代では最も多くの『役職持ち』が生まれ、さらには観測史上初の異世界からの『救世主』様までもが召喚された。

 ――この代で、この不毛な戦いを終わらせる。

 彼らはそんな想いを胸に抱き、世界が一段となって一致団結していた。

 ところがどっこい。残念ながらこれはそんな彼らの英雄奇譚などでは決して無いのである。
 そんな全盛期一番の期待を背負った『救世主』パーティーの一員でありながらひどいやらかしをしてしまい追放された「僕」が『クールな黒髪長身美人な剣士』と『自由気ままな銀髪美少女』と一緒に旅をしながらなんやかんやと『魔王』を倒し世界を救う英雄になってしまう話なのである。
 ……非常に悲しいことに、断じて嘘は言っていないのである。嘘は。
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