第8話 多勢に無勢
並行して何か新しいの書こうかなと思ってます。
家に帰って母親がめちゃくちゃ心配していたが気にせずに風呂場に直行し、べっとりとついた唾液をよーく洗って落とした。頑固な汚れのように取りづらかった。
ゲームの世界での風呂はただの見せかけであって、入ることができなかったが、こっちの『M蒐』の世界では、体力回復の効果などはないものの、現実世界の風呂と同様にリラックス効果があるように感じられる。
またこの家は、一階に玄関、リビング、応接室、お風呂、トイレが1つあり、二階の玄関の上の場所に俺の部屋、お風呂やトイレの上のあたりに母親の部屋、そしてリビングや応接室の上のスペースが廊下やゲストルームがいくつか、そしてトイレが1つあるという設計になっている。
家の紹介も終わったところで、リビングに戻るとそこには母親以外の姿が見えた。ツンデレちゃんだ。
「え....どうしたの?」
一体何の用だろうか。母親がいる際に女が男の家に上がるなんて、いろいろ問題がありそうなものだが....
「どうしたもこうしたも、ナメナメクジをどうやって倒したのよ!!」
ああ、その話か。てっきりわかってるもんかと思っていた。
「いや別に教えるけど、なんでうちに....?」
わざわざ家に上がる必要性はあったのだろうか。お菓子まで頂いちゃって図々しい。
「べ、別に意味はないわよ。小さい頃なんてよく上がってたじゃない」
そうか一応幼馴染キャラだった。いやだからと言って上がる理由にはなってないだろうに。まぁ深く追求しなくていいか....
「マドリンちゃん、ショウが怪我してないか心配でわざわざ家の前まで来てくれてたのよ?だから私が入れてあげたの」
「ちょ、ちょっと!そ、それは言わない約束...!」
「あら?そうだったかしら?」
母親が不敵な笑みを浮かべている。ツンデレちゃんは頬を赤らめて恥ずかしそうに俯いている。ツンデレちゃん、やっぱりツンデレじゃん。でも怪我してないか心配なんだったら帰り道で距離を取らないで欲しかった。
「....そ、そんなことより早く話しなさいよ!」
「わかったわかった....まあ、これでわかると思うけど、塩をふりかけたんだよ」
「塩?」
これは知らないんかい。マドレーヌとか色々知ってたのにこれは知らないんかい。
「スライムもそうだけどさ、ナメクジも体の90%ぐらいが水でできているらしいんだ。だから、吸水性を持っている塩をかければ体内の水分が吸い取られて小さくなるってわけだよ」
「そういうことだったのね、なんかよくわからなかったけどわかった気がするわ」
いやどっちなんだよ。まあもしわかってなくてもこれ以上解説することもないし。あとそうだ。
「今日もう一回草原に行こうと思うんだけど、ツンデレちゃんも一緒にどう?」
「行くわよ、でもツンデレちゃんじゃないから!!それ定着させないでよね!!」
なんかもう癖で普通にツンデレちゃん呼びし始めちゃってる。まぁ...定着させちゃえばいいか。
まあ行く前にナメナメクジと(やられた)スライムを庭に置いてこなきゃだな、スライムはポーションないとダメだけど、ナメナメクジは回復させないと。
そう思って母親を方を見ると顔を紅潮させていた。え、、なんで照れてるの....?
「そういえば昨日買ってきてもらったお塩がもう半分ぐらいなくなってるんだけど???一体どういうことか説明してもらえる????」
大激怒していた。
庭にモンスターたちを置いて、長い長〜いお説教が終わった。なぜかは知らないがツンデレちゃんも一緒に俺にお説教してきた。関係ないだろ。そんなこんなあって、ナメナメクジが全回復していたので連れて行くことにした。ツンデレちゃんは猛反対してるけど、連れて行った方が危険は少なくなる。
そして塩の残量が十分あることを確認して、またメリー草原へと向かっていった。
「今回の目的は、言わずもがなお金集めだ、スライム復活のためのポーション代くらいは稼ぐぞ!銅貨50枚もあれば十分だから、ナメナメクジ中心に倒して行くぞ!」
ナメナメクジは確か銅貨3-5枚のうちでランダムだった気がするので、スライムよりも圧倒的にコスパがいい。
「わかったわ、回復は任せなさい!」
ナメナメクジもいつもと変わらず凛とした表情だ。うんおそらくわかっているだろう。わかっていると信じたい。下手にスライムにちょっかい出さないでくれよ。
◯
「うーん....あんまりモンスターが出てこなくなったな...でももっと奥行くと危ないし....」
先程からそこそこ時間が経ったが、入り口周辺のナメナメクジの出現率が低く、なかなか戦えてない。出てきたら塩をかけて倒すだけなので簡単なのだが...
「ねぇ!全然出てこないじゃないの!ナメクジさんもレベルが上がったみたいだし、もうちょっと奥に行きましょうよ!」
「うーん....でも奥に行くとなぁ....今スライムもいないし....」
「もう焦れったいわね!私行くからね!」
「ちょ、ちょっと待てって!」
俺の制止を無視して、奥へ奥へと進んでいくツンデレちゃん。俺はその後を追いかける。その時....
「だ、誰かぁ....!た、助けてください....!」
「やっぱりこうなるか....」
駆けつけてみると、ツンデレちゃんと同い年くらいの女の子がモンスターに囲まれているのが見えた。
これは確か「少女を助けろ!」みたいな感じのクエストで起こるイベントだ。だがなぜクエストを受けてもいないのにこうなっているのだろうか?
おそらくは、イベントの効力によるものだろう。たとえクエストが受けられなくても、回復薬を母親から渡されるなどのイベントは前々から起こっていたから、今回も草原の奥に進んでしまったが故にこのイベントが起きてしまったのだ。
しかしこれは良くない状況だ。スライムとナメナメクジが揃ってからここに来ようと思っていたのに、ツンデレちゃんが先走っちゃうから慌てて追いかけてイベント発生のトリガーを引いてしまった。
「ショウ!あの子....!助けてあげないと....!」
そうしたい気分はやまやまなのだが、いかんせん状況が悪い。そして確かこのイベントはどれだけ長い時間放置しても囲まれて嘆いている子がモンスターによってやられることはないので、一度引いてまた来ることも可能なのだ。それに夜にもう一度来れば寝首をかくこともできるかもしれない。やっぱりここは一旦引くべきだ。
「うっ...ぐすっ....たす、けて....!」
「ショウ....!早く行かないと....!」
少女の慟哭が聞こえる。声も掠れている。ここは仕方ない。この判断があっているかどうかはわからない。でもダメだとわかっているような決断をしなければいけない時があるんだ....!
「よしっ!一旦ここは引こう!」
バチン!
プルプルプルプル
ペッ
強烈な一撃をツンデレちゃんからもらい、ナメナメクジから痺れる粘液をもらった。なんでだよ!少なくともナメナメクジは関係ないだろ!!また汚いのがついたし....はぁ...
「あんたがこんなに外道だとは思ってなかった....!」
プルプル。
賢い選択をしているはずなのに外道とは解せない....そして肯定しているのかナメナメクジが震えているのがもっと解せない。
俺は結局このモンスターたちと戦うことになってしまった。
次回の戦闘シーンは今までよりは頑張れた....はず




