表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/33

第6話 装備を求めて

お買い物回です。

スライムと矛を交えた(どっちも矛なんて持ってないけど)後、ツンデレちゃんをきちんと叱りつつ、ほどなくして村へ戻ってこられたのだが、傷が多くついたのにも関わらずポーションをスライム討伐に使ってしまったため傷を癒す手段がなく、結局その日はスライムを庭に放すだけ放して、可愛がることもできず布団に入った。


このゲームでの人間は体力が回復するという仕様があり、それと同じようにモンスターも庭にいる間は体力が回復する。種族に関わらずやっぱり休息は大切だ。


翌朝、朝食を食べながら母親にある話を持ちかけた。


「あのさ....武器と防具を買うためのお金が欲しいんだけど」


すねかじり作戦である。とてつもなく恥ずかしいが、こんなことでもして金策に走らないとまともに戦えない。


「職業についたのにまだお小遣いをねだるのかい、あんたもまだ子供だねぇ」


すごく恥ずかしい。本当に恥ずかしい。まだ出会って2日目の母親だからもっと恥ずかしい。


「銅貨500枚だけね?あとお塩を買ってきてくれるかしら?」


「....わかった、ありがとう」


今すぐ立ち去りたい気分だったが、このお金をもらわないわけにはいかない。それにおつかいも頼まれたし。


とりあえず朝食を食べ、母親から銅貨500枚をもらい、諸々のことを済ませて玄関のドアを開けた。


「おはよっ、ショウ!」


「ああ、おはよう」


名前呼びを普通にしようと頑張っている、凄まじい向上心だ。俺としてもめちゃくちゃ恥ずかしいが、母親からお金をもらうほど恥ずかしくはないので全然大丈夫だ。


そういえば、昨日のツンデレちゃんは完全なお荷物だったが、今日からはおそらく違うだろう。確か物語?イベント?通りに進むならばおそらく....


「それでね....私、昨日ショウが傷ついていた時に何もしてあげられなくて悔しかったのよ。だから私は僧侶になることに決めたの」


ゲームとは言い方は違うものの、結果は同じだった。ツンデレちゃんはここで僧侶になることを決意するのだ。


そんな簡単に僧侶になれるの!?と思うが、確かツンデレちゃんのところは僧侶一家だったな。地味なのを嫌ったツンデレちゃんは頑固に僧侶になることを拒むのだが、プレイを始めてゲーム内時間で2日目に僧侶になるのだ。


僧侶になる時の言い方のパターンは様々あるのだが、1日目の帰りに戦闘を行った場合は今のような文言になる。もし戦闘を行わなかった場合は「買い物をしてる時にふとあんたとまたこうやって一緒にしたいなと思った」というような感じで王都で起こした行動を元に文章が生成される。ちなみに王都で何も行わなかった場合は「何もなかったから僧侶になる」という低知能な文言になるらしく、ネット掲示板等で話題になった。


ずっと拒んでいたくせに、何もないから僧侶になりたいとかいう意味不明な理由をつけて、僧侶になりたがるツンデレちゃんはやはりツンデレの鑑だ。


おそらく『M蒐』製作者側が意図してやったのだろうが、このようなことが他にもあり、『M蒐』はほんの少しのバカゲーの側面を持っているというわけだ。


「そうなんだ、それは良かったよ」


「あれ、もうちょっと驚くかと思ったのだけれど....まぁいいわ、また冒険に行くんでしょう?だったら私も連れて行ってよ」



少し迷ったが....置いて行くことにした。



「なんで置いて行くのよ!待ちなさいよ!」


急いで走り出したのだが、モンスターテイマーのステータスの低さかはたまた引きこもっていて体の動かし方がなってないのか、すぐに追いつかれてしまった。おそらく前者が原因だと俺は信じている。


「....だって絶対無駄遣いとかしそうだし、、」


「しないわよ!?全く....どちらかというと倹約家なのよ私は」




「すごいわこのお洋服!!これで銅貨200枚!?買うっきゃないわね!」


「このヒールもすごいわ!ビューティフルだわ!」


「このお花も華麗で可愛いわぁ〜!」


「このお洋服....」


「ちょーっと待てーい!!」


俺は声を大にしてツンデレちゃんを制止した。これのどこが倹約家なの!?本当に倹約してる人に謝らなきゃダメなレベルだよ!?それに洋服は一度買ったでしょ!!なんでまた別のやつ欲しがってるの!....もしかして買ってる俺が悪い?いやそんなはずはない。


「うう....物欲が全然ないと言われている私でもこの王都の物品の数々には目が眩んでしまうわ....」


嘘ばっかり!!物欲の権化だろ!!絶対にツンデレちゃん一人でお金持たせて王都を歩かせてはいけないと確信した。


「本当にこんなに買いやがって....俺の装備代のことも考えてくれよ....」


ツンデレちゃんが買ったものの内訳は、ドレス(銅貨200)、手袋(銅貨50)、純白の帽子(銅貨50)、ハイヒール(銅貨50)、塩一袋(銅貨20)、お花(銅貨80)だ。お花高すぎでしょ....とも思ったが、これを庭に植えることによってモンスターの回復量が上がる効果があるらしい。まあ普通に何もない土地の見栄えも良くなるのでリラックス効果もあるにはあるだろう。ツンデレちゃんには悪いが、この花はうちの庭に植えさせてもらおう。


いや、そんなこと言ってる場合ではない。残り銅貨50枚しかないではないか。これは大事に大事に使わないと....!



「真っ白な眼帯、1個で銅貨50枚のところを今だけ2個で銅貨50枚だよ〜!さあ買った買った〜!」



買ってしまった。


「はぁ....あんたもあんたじゃない、私のこと怒る権利なくなったからね」


「うう....物欲が全然ないと言われている俺でもこの王都の物品の数々には目が眩んでしまう....」


「どの口が言ってんのよ、だいたい眼帯2個なんて両目見えなくなっちゃうじゃない。1個でもいらないものを2個も買ってんじゃないわよ」


「だって....1個銅貨50枚だったのが2個で銅貨50枚だったんだよ....!?しかも黒じゃなくて白いっていうのがこう、エキゾチックな感じで....」


「何言ってんのかわかんないけど、とりあえず帰るわよ」


結局自分の装備をなーんにも買えないまま村に帰ってきた。


「あのさ、ツンデレちゃん」


「誰のこと言ってんのよそれ!?まさか私のこと言ってんじゃないでしょうね....!?」


あっ間違えた。いつもの癖でツンデレちゃんとか普通に呼んじゃった。でも名前言うといつも怒られるしなぁ....


「まぁそんなことどうでもいいからさ、そのお花俺にくれない?」


「どうでも良くないわよ!!!そして嫌よ!!なんで私のことそんな風に言ってるやつにあげなくちゃいけないのよ!!!」


まずい....このままツンデレちゃんがこの花を渡さずにツンデレ家の庭に植えてしまったらお金が勿体無くなる...


「そ、そう言わずにさ?お願いだよ」


「嫌だわ!もうウチに帰るわね!」


「ちょ、ちょっと待って!」


ツンデレちゃんはお花を俺に渡すことなく家に帰ってしまった。


終わった....あのお花は水を与えなくても大丈夫だし、枯れもしないという素晴らしい花なのだが、一度植えてしまったらもう移動させることはできないのだ。もちろんツンデレちゃんの庭にモンスターはいないので、ただの支払い損になってしまった。


「金が本当にない....」


お金の問題が気にならなくなるのはいつになるのだろうか。



眼帯かっこいいから買っちゃうよね、あるある(ないない)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ