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第5話 水色のあいつ

「えっ....何とかならないんですか!?」


「すみません....名前がない方に対するマニュアルがございませんので....」


マニュアルとか言われちゃうとなんか生々しいが、そんなこと思ってる場合じゃないほどこの状況はやばい。


前々からクエストの重要性は説いてきたが、本当に重要なものなのだ。きゅうりにおける水のように。寿司における醤油のように。睡眠におけるお布団のように....だめだ、どれもしっくりこない。


第一に、クエストをこなした時の報酬で、あるモンスターとの戦闘を有利にするものだったり、あるモンスターの弱点をつくための道具であったり、あるモンスターを出現させるための道具だったりが貰えるのだが、これがクエスト達成報酬以外では貰えないという仕様なのだ。このゲームを長い時間やっているからこそクエスト報酬のアイテムのありがたみをとても理解している。だからそれが貰えないとなるとモンスター蒐集がとても難しくなることも理解している。ゲームの世界だったら無理ゲー化しているだろう。


第二に、こちらもクエスト報酬にはなるのだが、お金の存在だ。何を買うにしてもお金は必要になってくる。武器、防具、アイテム、宿代などなど。もちろんモンスターを倒すことによってお金はもらえるが、クエスト報酬でもらえるお金よりも格段に少ない。例えば、先ほどのスライム討伐クエストの報酬は銅貨50枚だったが、普通にスライムを倒してもらえるのはおそらく銅貨1枚で固定だったはずだ。50体倒してようやくクエストと同程度。なかなか体力的にも精神的にも厳しいものがある。


第三に、名声による臨時報酬だ。このゲームにはボス級のキャラがいて、それを討伐したり仲間にしたりするクエストを達成すると臨時報酬がもらえる。この臨時報酬でもらえるお金やアイテムがとてもとても豪華で貰えないとなるとかなり手痛い。ボスを倒すモチベも落ちる。


報酬の話ばかりなら全部まとめられたんじゃないかって?それはちょっとカッコつけて3個ぐらいに分けたいじゃんよ。独白だからそれくらいいいじゃんよ。


兎にも角にも、普通にゲームとしてプレイしていれば名前は必ず1文字以上でなければいけないので問題はない。しかしこの世界では0文字の名前の登録が可能になってしまったのでこんなことが起こってしまったのだ。


全然問題あったじゃねえか!問題大有りだわ!ツンデレちゃんから名前呼ばれるシーンなんて霞むぐらい大きな問題があったわ!


「あんた今失礼なこと考えてなかったかしら」


なぜわかったし。


「というか、クエスト受けられないらしいけど大丈夫なの?」


なんて呑気なんだ。どう考えてもまずいに決まっているだろう。クエストが受けられないんだぞ。死活問題なんだぞ。


「だ、だだ、大丈夫ぶぶぶぶだよ???」


「それは大丈夫な人の声じゃないわよ....」


なぜこんなにも冷静沈着な返答をしたのに動揺を見て取られてしまったんだ、ツンデレちゃん何者だ...?


「正直、かなりきつい状況だ....もう無理かもしれない....」


「とりあえず落ち着いてよ、ひとまず家に戻りましょう?」


「そ、そうだな....ありがとう....」


「何よ水くさいわね、感謝される筋合いなんてないわよ」


『M蒐』の世界に来てからまだわずかなのに一体何度絶望しているのだろうか。でも本当に今回の一件は辛い。


「きついって言ってたけど、どれくらいきついのよ?」


「今の状況だとスライムと戦っても純粋な攻撃力で勝つのはほぼ不可能だと思う」


「そんなになの!?」


モンスターテイマーは当然のことながらモンスターを使役して戦うため、プレイヤー自体の能力が低い。そのためスライムと殴り合ったとしても勝ち目は薄いのだ。今は武器もないし、ことさらに厳しいだろう。


もしクエストを受けていたら、初回限定でモンスターを持っていないため、レンタルモンスターが使えるのでまず負けることはない。クエストは大事なのだ。


そんな話をしつつ、王都を出て村までの道を歩く。大丈夫。きっとモンスターは出てこない。ここまで運が悪いんだもの。うん、絶対に出てくるわけがない。、、お願いでてこないで...お願い...!


「あっ........」


フラグ回収というべきだろうか、心からの願い虚しく、村への道中に水色の物体が見えた。おまんじゅうのような体に二つのつぶらな目。まあつぶらと言っても「・」←こんな感じなのだが。しかしその目はどうやら閉じているようだ。口はなく、一体どうやって栄養を補給しているのか気になるところだ。どういう進化をしてきたのだろう。


そんなこと言ってる場合ではない。本当にまずい。今はどうやら眠っているように見えるが起きたら一巻の終わりだ。静かに行こう。静かに....静かに....



「あぁぁぁぁぁ!!!あそこにスライムがいるわよ!?大丈夫なの!?!?」



ツンデレちゃんが大声を出して驚いた。スライムはパチクリパチクリしながら目を開いた。


おいまじかよ。大丈夫なの?ってツンデレちゃんのせいで大丈夫じゃないわ。さっきスライムと戦っても勝てないって言ったのに。しかもそのまま静かに行けば何も起きずに帰れたかもしれないのに。っていうかスライムどこに耳のような器官があるのだろうか...


非情にも戦闘が始まってしまう。武器がないため俺はとりあえず近くに落ちていた木の枝を拾って武器にした。何かしら王都で買っておけばよかった....あの時はすごくへこんでいたからな....防具すらないし....


「ご、ごめん大声出しちゃって....」


謝られているが今はそれに反応している暇はない。叱るのは後だ。


スライムは体当り攻撃か水鉄砲攻撃の二択がある。水鉄砲攻撃をする際は体を震わせるモーションを行ってから水鉄砲を出すのだが、一体どこから出ているのだろうか。


またスライムはさほど素早さが早くないため、攻撃自体は通りやすいと思う。ただやはりステータス自体が低すぎるので不安しか残らない。


とりあえず俺はスライムの後ろに回り込み、背後から木の枝で叩いた。ちなみに後ろに回り込んだときにツンデレちゃんが怯えつつも茂みに隠れているのが見えた。可愛い。....よそ見をしている場合ではないのは重々承知だ。


ボコッ


音はいい。叩いた感触もいい。叩いたところを見ると、スライムの表皮が破れて中の水が見えている。正直ゼリー状なものかと思っていたが、水鉄砲も撃ってくるし中に水があるのは妥当だ。


これもしかしたらこのまま水があふれて倒せるんじゃないか...?


そんな淡い希望は、スライムがすぐに表皮を再生させたことで打ち砕かれてしまった。


「重い一撃を与えさせないとダメか....」


そんなことを考えていると、突然スライムがこちらを向いて体当たりしてきた。


俺は避ける間も無くその体当たりをくらってしまう。


「ぐっ....」


「ショウ...!!!」


致命傷にはならなかったがそれでもぶつかった衝撃で吹っ飛んだので、結構なダメージを負った気がする。ツンデレちゃんも泣きそうな表情をしているのが見えた。対して、スライムにはおそらくまだ1ダメージも与えられてないだろう。圧倒的に不利な状況だ。


「こんなにスライムの攻撃ってパワーあるんだな....」


傷がついた自分の体を見て思う。これはゲームの世界ではあるが今の自分にとっては現実の世界だ。ならばこんなところで死ぬわけにはいかない。この世界に来た以上は絶対にモンスター全員と仲間になってやるんだ...!


スライムの体が震えている。水鉄砲をする合図だ。どれくらいのスピードなのかわからないがとりあえず今は避けるしかない。


「はやっ...!?」


スライムから放たれた水鉄砲の速度は想像の何倍も速くショウの方へ向かってきた。なんとか間一髪で躱したショウは間合いを一気に詰めて木の棒でスライムを同じ箇所を何回も叩いた。が、全く効いていない。表皮が破れては再生され、破れては再生されの連続が起こっているだけだ。ダメージを与えられているのかどうかもわからない。


そしてまたこちらを振り向いて体当たりを繰り出してきた。今度はなんとか軽傷で済んだが、それでもある程度のダメージは受けてしまっただろう。



だがもう大丈夫だ。



「ツンデレちゃん....!そこに置いてあるバッグからポーション取って!」


「わかったわ....!」


バッグの中に入れてあった母親からもらったポーションをツンデレちゃんから受け取る。ポーションを開けて準備は万端だ。


そしてスライムに一気に近づいていって先ほどと同じように木の枝でスライムに穴を開けた。


「あんた...!?飲まなくていいの!?」


「ああ、飲まないよ。だってこれは......」


穴を開けた瞬間に木の枝を持ってない方の手でポーションをスライムの中に垂らした。


「こうやって使うために開けたんだからな!!!!」


少しずつスライムの動きが鈍くなり、そのままパタリと動きが止まった。その後消える....わけではなくその場に残存した。倒した後、消えた場合はお金やアイテムを落とすのだが、残存した場合はモンスターを仲間にできる印なのだ。


「おー!やった!スライムゲットだ!!」


俺はモンスターボックスの中にスライムを入れてまた帰り道に着くのであった....





「って終わらせようとしてんじゃないわよ!!一体どういうことか説明して!」


涙目のツンデレちゃんが言った。


「.....え?見ててわからなかったの?」


「わからないわよ!ほら早く!」


「はいはいわかったよ。まずこの丸型の容器に入っているのは人間用のポーションだろ?そんでもって今は持ってないけど三角形の容器に入っているのがモンスター用のポーションだろ?」


「それくらいは知ってるわよ!」


「そこまで知ってるならもうわかるでしょ、人間用のポーションはモンスターには毒になるんだよ。逆もまた然りなんだけどね」


これはゲームをやっていた時もそうだったが、仕様の一つだ。序盤では必要不可欠な回復ポーションも、終盤になってくると上位互換等も出てきて正直使いどころがなくなってしまう。それをなんとかするために『M蒐』の会社側が専用のものではない回復ポーションを飲むと毒になるように設定したのだ。おそらく母親もこの仕様は理解していたのだろう。


毒と言ってもあまり強力な毒ではなく、結局終盤になったら使われなくなってしまったのだが、スライム程度ならこの毒で倒せる。


もちろん飲ませなければいけないので普通の場合は大変だが、スライムは幸運にも表皮が簡単に破れてすぐに体内に入れられるのでこの方法をとったということだ。


正直戦い始めはノープランだったので、この方法を思いつかなければ本当に危ないところだったかもしれない。


「そうだったのね....でもなんであんたそんなこと知ってたのよ?」


うーん....どう言おうか....本当のこと言っても無駄だろうし....


「あーあれだよ、モンスターテイマーになるために勉強していた時に知ったんだ」


「あんた勉強なんてしてなかったじゃないの....まあいいわそういうことにしといてあげる」


うんなんか俺が隠し事をしているのがバレているような気がするが、なんとかごまかせたようなので俺たちは今度こそ本当に帰り道についた。



戦闘シーンの文章の稚拙さが浮き彫りに....次からは頑張ります....

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