第4話 呼び名決めとクエスト
サブタイトル決めるのにいつも迷ってます...
名前無し....響きはかっこいいし、おそらくなんの問題もないだろうと思う。もしかしたら役立つ時すらあるかもしれない。ただ、緊張して声が出なかっただけで名無しになったというこの状況が非常にダサいし、みんなから「 さん」とか「 」とか呼ばれるのは嫌だ。これは呼ばれてるに入るのかどうかも怪しいが。
....多分呼び名を決める質問がモンスターテイマーギルドであるはずだからそこで「ショウ」にすればいいか、、名前は一度決めたら変えられないはずなので諦めて職業ギルドを後にした。
「あんた一人で大丈夫だったかしら?」
「あ、ああ...なんとかな...でもモンスターテイマーギルドでしなければいけないことができちゃったよ...」
いや全く何とかなってねぇ!一人でも大丈夫なところを見せたかったのが裏目に出てしまったかもしれない...ただツンデレちゃんはどうやら俺のことをあんた呼びしているので、問題はないだろう...
「さ、早くモンスターテイマーギルドに行くわよ。........『 』」
....問題あったわ。
ツンデレちゃんが初めて名前呼びしてくれるところなのだが、ツンデレちゃんだけ頬を赤らめるだけで俺にはなーんにも得がない。なんなのこれ。こっちに来てから都合の悪いことばっかり。もういいもん、モンスターに癒してもらうもん。
ツンデレちゃんがNPCのような行動をしたことに謎の怒りを覚え、おかしなテンションになりながらも何とかモンスタテイマーギルドにたどり着いた。
モンスタテイマーギルドとは、モンスターテイマーに関するあれこれを教えてくれる場所だ。ここでモンスターボックスを貰えるし、クエストも受けられるし、そして何と言っても呼び方を変えられる!!....これで喜んでいるのは俺くらいだろうが。
一応『M蒐』はオンラインマルチプレイ対応のMMORPGらしく、ほかのオンラインプレイヤーに見せるための名前をここで変えられる。俺はオフラインで一人ほのぼのとやっていたのでほぼ気にしていなかったが、本当にこの機能があってよかった。助かった。
「こっちは超空いてるわね」
失礼かもしれないが実際にすごく空いている。この世界のNPCでモンスターテイマーになる人は希少で殆どが他の剣士や魔法使いや僧侶等の職業に就く。理由はよくわからないが、魔物を収容するための大規模な庭が必要なことやそもそもモンスターと仲良くすること自体をいやに思う人がいることなどが主な原因だろうか。古くから伝わる伝説の内容にモンスターテイマーがいないことも関係している可能性はある。だからモンスターテイマーギルドは閑古鳥が鳴いていることが多々ある。
だからと言っては何だが、扉を開いた瞬間はみんな他の従業員との雑談に耽っていた。しかし客が来たとわかった時にはもう真面目に働いている。切り替えが良すぎるだろう。その才能をもっと活かせる場所があるのではないだろうか。
とりあえず受付の人と話そう。また女性だが、先ほどの人よりかは年老いている雰囲気があるので、この人なら大丈夫そうだ。しかも今回はツンデレちゃんにも同伴してもらっている。
「あ、あの...モンスターテイマーになったのでモンスターボックスが欲しいのですが...」
「新米モンスターテイマーさんですね!かしこまりました、少々お待ちください.........はい、こちらモンスターボックスです!」
営業スマイルなのか心からのスマイルなのかはわからないが、快活な女性だ。心からのスマイルであってほしい。
ともかく、モンスターボックスを無事手に入れた。これがないと正直モンスターテイマーである意味がないほどに貴重な代物だ。この中にモンスターを3体まで収容できて、普段は庭にいるモンスターをダンジョンなどに持ち出せる。これがないとそもそもモンスターが観賞用になってしまう。まぁそれでも触れ合えれば俺としてはいいんだけどね!
どういう原理で小さなモンスターは当然のこと、大きなモンスターまで収容しているのかはよく分からないが、なんか凄みが深い力がある気がする。まじバイブスぶち上げ。やばみざわ。
....うん、もう二度とこんな言葉は使わないようにしよう。自分で言っててよく意味がわからない。
「そういえばあんたモンスタテイマーギルドでやりたいことがあるんじゃないの?」
「あ、そうだった」
危ない危ない。忘れるところだった。まあここで忘れたとしても、呼び名の変更ぐらいはここに来ればいつでもできるだろうけど、せっかくだから早めに変えておきたい。
「呼び名を変えたいんですけど...」
「かしこまりました!どんな呼び名をご所望ですか?」
うーんどうしようか、ここは無難にショウでいいだろうか....っていやいいに決まってるだろ、二度もナイトスターとか地獄の業火とか漆黒を切り裂く虚空とかは考えないわ。
「ショウでお願いします...」
一瞬最後のやつとかいいなと思いかけたが何とか踏みとどまってショウにしてもらった。
問題はこれがNPCにも適応されるかどうかなのだが...
「ツンデレちゃん、ちょっと俺の名前呼んでみてよ」
「ふえっ...?い、いきなり何言い出すのよ!?」
「いいから、早く」
「な、何で今日はそんなに積極的なのよ!」
「積極的?何の話かわからないが、早くしてくれ、頼むよ」
「い、いやよ!」
質問にはしっかりと答えてくれたのに行動を要求する場合は普通に拒否られた....まあそれなら仕方ない、ツンデレちゃんじゃなくてもNPCは他にもいるし....さっきの受付さんに呼んでもらおう。
「あのー、すみません、名前呼んでもらえませんか?」
「それはもっといや!!言うから他の人にそんなの頼まないで!!」
受付の人に話しかけたつもりがなんかツンデレちゃんが割り込んできたぞ。なんなんださっきから...
「今から言うわよ、よく聞いてなさい。、、、、『ショウ』.......」
「や、やったーーー!!」
どうにか名無しから脱却できた。これで名前を呼ばれているのかどうか分からなくなる心配もなくなるだろう。
「そんなに露骨に嬉しがられるともっと恥ずかしいからやめて!!!もう二度と呼ばないわよ!!!」
ツンデレちゃんの方を振り返ると耳が真っ赤になりながらそっぽを向いていた。
あ....やってしまった...今になって振り返ってみると俺は「他人の前だというのに名前を呼ぶことを強制している人」になってしまっていた。うん、そりゃ拒むわな。だってツンデレちゃんからしたらさっき言ったことになってるんだからね、俺は聞いてないけど。謝って許してもらえるとは思わないけど謝ろう。
「ごめん.....『まりもん』....」
ボコボコに殴られた。こっちとしても名前を呼ぶのは恥ずかしかったのに...
茶番(にしては大きな痛みを受けたが)も終わり、残るはクエストの受注だけだ。確か最初はスライム討伐のクエストがあったはずだ。
【クエスト】はじめての戦闘
メリー草原のスライムを1体討伐してください。
報酬:銅貨50枚
おっ、あったあったこれだ。主人公が最初に強制的に受けさせられるもののため「はじめての戦闘」なんて名前が付いているけど、他の人から見たらおかしなクエスト名だよな、なんて思いながらクエストを受けるためクエスト受付に行った。
「かしこまりました!ではこの契約書にサインをお願いします!」
契約書なんてあるのか。あ、確かにゲームでもクエスト受けるときにそんな風な演出があった気がしないでもない。ざっと見た感じ大したことは書かれてないから大丈夫だろう。よし契約書にサイn....待てよ?俺名前ないぞ?呼び名でいいのかな?
「あのー、これって呼び名で大丈夫ですか?」
「いえ!お名前でお願いします!」
困ったな。まあ無記名で出せばいいか。
「じゃあ、これで」
「あら?ショウ様、お名前の欄にサインをお願いしたはずなのですが?」
「えーっと、名前がないんで、無記名でいいのかなーと思っちゃって....ダメですかね?」
「....そうなりますとこのクエストは受けられませんね、、申し訳ございません」
「えっと...どうすれば受けられますかね?」
「非常に言いにくいのですが....ショウ様はクエストを受ける資格を持っていないことになるので受けることができませんね....こちらとしても規則がございますので....」
とてつもなく重要な役目を担っているクエストが受けられなくなってしまった。
タイトル通りとりあえずクエストは受けられなくなりました。