第33話 それぞれの休暇3
お久しぶりです。
「誰か....助けて、、!」
わたしの名前はメリッサです。今、わたしは訳あってゴミ山の中に逆さで埋まってます。そう、それは遡ること18年前....
「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」
「アラアラ、可愛いわねぇ」
2100gと少々低体重でわたしは産まれました。産んでくれた母親はわたしが小さい頃にどこか遠くへと行ってしまったようで、顔もぼんやりとしか覚えていません。
それから2週間もしないうちに名前がつけられ....
って、違います!そんなに前から遡ってたらゴミ山の中で窒息してしまいます!遡るのは2時間前です!
◯
メリッサの過ごし方
「とりあえずこれで大丈夫かな....」
ツンデレちゃんとショウさんが出かけていったのを聞いてる最中、わたしは持ち物の準備をしていました。王都は危険でいっぱいです。何があるかわからないので色々準備しておかないと....
「よし、じゃあいってきます」
準備も終わり、ショウさんの母親さんに挨拶して家を出ます。
「一人で出歩くなんて久しぶり....」
ヘビさんに襲われた時以来かもしれません。あの時は怖くて、もう2度と一人で外に出ないと決めていたつもりでしたが....
でも今は怖くありません。何かあったらあの時みたいにきっとショウさんが助けてくれます。
そんな懐かしさに思いを馳せながら、てこてこと歩いて王都へ辿り着きました。
カランコロンカラン
まずわたしが来たのは気分屋さんです。名前を聞いた時からずっと気になっていました。
「お、いらっしゃい」
店主さんはなんだかチャラついてそうな男の人です。ちょっと怖いです。
「え、えっと、ここって、何売ってるんですか....?」
「んだよクソ、冷やかしかよ....ま、冷やかし大歓迎だけどな」
あまり初対面の人にクソとか言わない方がいいと思います。
「ここは気分屋だ。つっても、売ってるものは気分ってわけじゃなくてエモートだ」
「エモート....?」
「そ。例えば泣かなければいけない状況。そん時とかはこの『哀』のエモートを買っときゃ悲しくなってすぐ泣けるってわけ」
「はぁ....えっと、はぁ....」
泣かなければいけない状況って何ですか。もうそれほど差し迫ってるなら泣いても無駄じゃないですか。
「ま、そんな感じだ。今なら喜怒哀楽セット安く売るぜ?」
いらない。
「えっと、ごめんなさい、いらな....」
「買えよ」
急に口調も表情も怖くなりました。これがもしかしてエモートの力なんでしょうか。
「ひっ....」
「こんだけ説明したんだから買えよ」
「いや、あの....」
「そもそも店に入ったのに買わねえのはおかしいだろ」
冷やかし大歓迎はどこへいってしまったのでしょうか。
「えぇ....でもでも、」
「あぁん?なんか文句あるか?」
もうこんなの脅しです。何かしら法を犯してると思います。
「えっと、いや....」
「俺が聞きたいのはさぁ、そんな言葉じゃないんだよなぁ?」
エモートじゃなくて素な気がしてきました。こんなセリフ、演劇の中でしか聴いたことありません。
「あの....か、買います」
「毎度ありぃ!ちょっとおまけしといてやるよ!ははは!」
「....」
カランコロンカラン
ただ単純に怖いです。わたしは泣きそうになりながら気分屋を出ました。もう早速『喜』や『楽』を使ってしまいそうです。
気を取り直して、次にやってきたのはこちらです。骨董屋さん。
ここは今まで何度も足繁く通っているお店なので、安心です。さっきみたいな怖いお兄さんはいません。
「いらっしゃい、あぁ、紫髪の」
いるのは、白髭を生やした仙人みたいな人です。わたしは心の中で勝手に仙人って呼んでます。
「お世話になってます」
「ふぉっふぉっふぉ、そんなに畏まらなくてもいい。お前はここの常連なんじゃから」
やっぱり仙人は優しいです。この店は居心地が良くて好きです。ちょっと埃っぽいところは難点ですが。
「お気遣いありがとうございます。何か新しいものありますか?」
「んー、あー骨董の方だったらこれなんてどうじゃ?」
そう言ってガサゴソと探しています。
「あぁ、あったあった」
その間わたしは店内を物色しようと思いましたが、案外早く見つかったようです。何やらアンティーク調のメガネが仙人の手に握られています。
「これはの、ふかしかしメガネじゃ」
「....ふかしかしめがね?」
あまりに聞き馴染みのない単語で聞き返してしまう。
「そう、ふかしかしメガネ」
「ふかしかしめがね....えっと、眼鏡はいいんですけど、ふかしかしって?」
「見えないものが見える、不可視が可視になるって意味じゃ」
「また名付けたんですか?」
仙人は売り物に勝手に名前をつけがちです。センスは、お察ししてほしいです。
「うむ、そうじゃ。いい名前じゃろ」
「そ、そう、ですね....というよりも目に見えないものが見えるってすごくないですか?」
正直いつも売ってる骨董品とは比べ物にならないぐらいすごい機能な気がします。前買った壺なんかはデザインが良いから買ったのに、近くのモンスターを呼び寄せるというとんでもない曰く付きでした。
勘弁してほしいと思ったのですが、インテリアとして飾る分には悪くなかったので、今度お邪魔じゃなければショウさんの家に置いてもいいかもしれません。
「そうじゃろ、すごい眼鏡なんじゃよ」
「かけてみてもいいですか?」
「買ってからならいいぞ」
「またそれですか....」
「今なら少し割り引いてやるぞ」
仙人は商売上手です。先ほど押し売りされたせいでお金は心許ないのですが....
「....わかりました。いくらですか?」
目に見えないものを見たいという欲望には勝てませんでした。
「毎度あり!」
購入と同時に早速つけてみます。と、さらに同時に仙人が言ってきました。
「あー言い忘れてたんじゃが、それ普段見えてるものは見えなくなるんじゃよ」
「え?」
つけるや否や視界が真っ暗になります。何だかよくわからない空気の流れみたいなのは見えますがそれ以外一切何も見えません。今自分がどこにいるのかすらわかりません。
というか普通に騙されました。今までも騙されてきましたけど、今回も騙されました。仙人は優しいと思ってきましたが、考えを改めた方が良さそうです。
「あの、返品します」
「無理じゃ」
当然返品なんてしてくれるはずもありません。さっきの店もひどかったですが、仙人は最初に優しくしてくる分もっとひどいのかもしれません。
もうこうなったからには割り切ってインテリアとして使っていこうと思います。
「あぁ忘れておった、ほい、おまけ」
「....毎回毎回いらないです」
今わたしは骨をもらいました。意味がわからないと思いますが、どうやら骨董屋に「骨」の文字が入ってるせいなのか骨を欲しがるお客さんがたびたびここを訪れるようで、商売上手な仙人は骨を商品と抱き合わせ的に販売しているのです。
正直これは骨董屋に骨を求める人が悪いと思いますが。
「次はもっとマシなものください....失礼します」
そう言って店を出ようと扉を開けました。
ガッッシャーーーン
次の瞬間、売り物のお皿が台座から落ちて割れてしまいました。何事だろうとあたふたしていると仙人が鋭い眼差しでこちらを向いています。
「お主、割ったな?」
冤罪をふっかけられてます!
「ち、違います!わたし割ってないです!わ、わたしはドア開けようとしてただけで!」
「じゃあ、誰が割ったというんじゃ?」
「えっと、それは....」
確かに、わたしが犯人として指名できる人物がいません。
「ガラクタ押し付けられた報復でもしたつもりか?」
ガラクタを人に売らないで欲しいですが、今はそんなこと気にしている場合ではありません。
「いえ、ほ、本当に違うんです!勝手に落ちただけで!」
「ほう?台座に乗ってた皿がか?地鳴りもないのに勝手に落ちたと?」
「....それは、、」
自分で言ってても無理がある気がします。それなら一体誰が....
はっ!閃きました!
「と、透明人間のせいかもしれません!」
何かで透明人間の話を読んだことがあります!透明人間はいたずら好きで、人間に気づいてもらおうとしてるらしいです!
「ほう?」
当然、仙人は呆れたような顔でわたしを睨んでます。
「い、今からそれを証明します!」
そう言ってわたしはさっき買ったメガネをかける。すると、透明人間が見え....
「....?」
ませんでした。
「どうじゃ、透明人間はいたのか?」
「も、もうちょっと探します....」
もしかしたらどこかに隠れているのかもしれません....そう信じてそこら辺を歩き回ります。
「....」
ダメです。見当たりません。もっと違う場所なのでしょうか。そう思って何かがありそうな方向へ歩き出しました。
そして、ついにその瞬間が訪れます。
「おい、そっちは....!」
その言葉が聞こえた瞬間、わたしはド派手に転んでしまいました。転んだ先にあるのはゴミ捨て場。わたしは、芸術的な弧を描きゴミの山へと逆さに埋まりました。
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